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» 2015年01月13日 19時00分 UPDATE

虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第37回:今年もいくよー! 「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい! 2015 (2/3)

[虚構新聞・社主UK,ねとらぼ]

第3位「夏の前日」(吉田基已)

 さて次からの3作は全て昨年最終回を迎えた完結作です。長年にわたって楽しませてもらった感謝の気持ちを込めつつ、続けてご紹介します。

 1作目は「good!アフタヌーン」(講談社)にて2009年から連載、吉田基已(もとい)先生の「夏の前日」(全5巻)。本作は現代を舞台に一人の芸術青年の心の動きを中心に据えた文学薫る大人向けドラマで、20代半ばあたりの男性読者なら、多かれ少なかれ古傷をえぐられて「おごごご……」とその場にうずくまってしまいそうな地雷的場面がそこかしこに埋められた大変罪深いマンガです。


画像 (C)吉田基已/講談社

 芸大4年生の主人公・青木哲生は人付き合いが不器用。芸術家としての才能を周囲から認められながらも、まだ自分の将来に確信が持てない彼は、ある日画廊に勤める年上の和服美人・藍沢晶と出会います。自分の絵を好意的に見てくれる晶を意識しはじめる一方、口では「いらねえよ、女なんか。メンドい」と語る一方、酒がまわると「気が強い……、年上の女に……、やさしく叱られたい」とつぶやきだす青木君。すごくめんどくさい奴なんです。

 ただ、この時期独特の孤高の志と自己嫌悪、自信喪失の絡み合った青木君の感情は、俗世から離れ、ずっと自室に引きこもって本ばかり読んでいた学生時代の自分と重なり合うところが多く、連載中は彼の一挙一動に妙な共感を覚えていました。それは女性(特に年上)と付き合うことで、自分の中にいた「知らない自分」が発見できる経験もまた然り。

 当時を思い出すと頭を抱えて「あああああ!」と叫びたくもなりますが、こういう時期があってこそ今の自分があるというのも事実なので、男性諸氏も本作を読んで一緒に頭を抱えて「あああああ!」と叫んでください。女性諸氏にはこういう男の幼さを上から目線で眺めてやっていただきたいと思います。





第4位「まんがの作り方」(平尾アウリ)

 2作目は「月刊コミックリュウ」(徳間書店)にて2009年から連載、平尾アウリ先生の「まんがの作り方」(全8巻)です。


画像 (C)平尾アウリ/徳間書店

 13歳でマンガ家デビューしたものの、その後うまくいかず不退転の決意で再デビューを目指す川口さん19歳。バイトを辞めて退路を断った彼女は今流行りのジャンル「ガールズラブ」を描くための下心から、バイト先の後輩で自分に友情以上の好意を寄せていた森下さんと付き合いはじめます。

 はい、つまり本作は百合です。

 とは言え、6年にわたる連載の最後まで「これ、百合なんだろか……?」という疑念がぬぐいきれなかった作品でもあります。どちらかと言えば女性からの人気を集めそうな繊細な画風で、そういう意味の百合っぽさは画面から感じられるのですが、社主個人としてはそういう恋愛的要素より、川口さん&森下さんはじめ、キャラクターたちが繰り広げる平尾先生独特の掛け合いの妙が毎回楽しすぎて、あまり百合マンガとして読んでいなかった気がします。最終回も先生らしく肩ひじ張らない良い読後感でした。

 そういう意味では「新感覚百合マンガ」の「百合」部分に引っかかって本作を敬遠してしまっていた人にこそ、今改めて読んでみてほしい名作です。もちろん社主としては、そこから百合の世界に引きずり込まれてほしいともくろみますよ!





第5位「めくりめくる」(拓)

 最後は「コミックガム」(ワニブックス)にて2010年から連載、拓先生の「めくりめくる」(全6巻)。倉敷市を舞台に高校生たちの日常を描いた、「若いっていいな!」と思わせる魅力がぎっしり詰まったオムニバス作品です。


画像 (C)Taku/WANIBOOKS

 本作の魅力は何よりものびのびとした若者たち! 彼らの恋愛も友情も夢も未来も、そしてちょっぴりの不安もすべて拓先生の伸びやかな筆致で描かれる表情豊かな少年少女たちからこれでもかとあふれています。社主もいろんな種類のマンガを読んでいますが、読後のすがすがしさではいつもトップクラスでした。

 ちなみに本作はその舞台となった倉敷市とたびたびコラボしていて、毎巻限定版には倉敷観光ガイドマップや倉敷名産のデニム地を使ったブックカバーなどがセットでついていました。また最終6巻の限定版では応援メッセージキャンペーンを展開していて、作品に寄せた読者メッセージ全員分を別冊ガイドマップに収録。たくさんのファンメッセージに交じって社主の応援コメントもしれっと載っていますので、よければご覧ください。

 「夏の前日」、「まんがの作り方」、「めくりめくる」――、いずれも最後まで楽しく読ませてもらいました。長期連載、本当にお疲れさまでした。





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