連載を取り消された漫画家の復活劇――『あいこのまーちゃん』が書店に並ぶ日:漫画家・やまもとありさ インタビュー(3/4 ページ)
作品完結へ向け、自ら動き出す
―― 第1話が漫画 on Webで公開され、その約1カ月後の8月15日にクラウドファンディングをスタートするんですよね。
やまもと クラウドファンディングの経験がある佐藤智美先生が勧めてくださいました。自分から呼びかけてお金を出してもらうって、結構勇気が必要なことじゃないですか。自分にできるのかなってしばらく考えていたんですけど、でもとにかくやらなきゃと思って。
―― 1日で10万円以上の支援が集まったんですよね。
やまもと 金額設定をしたときから不安だったんですけど、実際にお金が集まり始めると「こんな私に、本当にいいの?」っていう思いが沸いてきて(笑)。だからこそ、もっとがんばらなきゃって思えましたね。
―― 作画している様子を配信したり、漫画 on Webが配信しているニコニコ生放送に出演されたりと、チャレンジ精神が旺盛なやまもと先生ですが、2014年12月には沢田マンションギャラリーで273時間の作画配信も実行されましたよね。その辺りのお話もお聞かせください。
やまもと えっと、もともと高校の時から沢田マンションギャラリーのオーナーさんとは知り合いで、2013年の秋に高知に帰省したときにたまたまお会いしたんです。それで、展示しないかって何度も誘われて……。
その時はアシスタントばかりで自分の作品を発表する機会もなかったので、じゃあ久々にやろっかなって。時間があった方がいいと思って年末を押さえていたんですが、連載が取り消しになってしまったので何をするか悩みましたね。結局、そのころやってた作画配信が結構楽しかったので、その拡大版をやることになったんです。
―― ある意味273時間ずっと監視されていたわけですよね。体力的にも、精神的にも大変そうですが大丈夫でしたか?
やまもと 正直言うと、もう2度とやりたくないです(笑)。常に見られてるので、何かしなきゃって思っちゃって。
―― それはサービス精神で?
やまもと そうですね(笑)。手を動かさないと見ている人もつまらないだろうと思って、資料を確認したいと思っても原稿にペンを走らせたり(笑)。一人で考える時間もなかったですし、やってるときはずっと頭の中がからっぽになってました。
でも、出歩かなくてもいろんな人に会えるという面白さはありましたね。それと壁一面落書きしてOKだったので、お客さんに自由に描いてもらったりしました。そういった交流は面白かったですねー。
もっと面白いことができたんじゃないかっていう後悔があるので、次にまた展覧会を開催するときは違った内容にしたいです。やったことないことにどんどんチャレンジしていきたいので、そういう意味では今回は無茶してよかったなって思います。
『あいこのまーちゃん』が書店に並ぶ日
やまもと あ、それから、実は「あいこのまーちゃん」が単行本になるんですよ。
―― えっ? それはクラウドファンディングとは別にですか?
やまもと 4月ごろに書店で発売されることに決まったんです!
―― すごい! おめでとうございます!
やまもと ありがとうございます! 笠倉出版社さんというところが出版してくれることになりました! もう無理だと思っていたんで本当に嬉しいです。いまいろいろと打ち合わせしているんですけど、楽しいですね、えへへ(笑)。
―― 作品が紙になったのはこれが初めてですか?
やまもと 雑誌に掲載されたことはあったんですけど、単行本としては初めてです。
―― 単行本化はどういった流れで?
やまもと 電子版を公開していただいている漫画 on Webは、佐藤秀峰先生の事務所が運営されているんですが、その関係でいろいろな出版社の編集者さんが出入りしているんです。それで、私のマネージメントをしてくれていた方が、その編集者さんたちに声を掛けてくれていたんです。
あと、漫画 on Webさんの方で4月にWebの新雑誌が出るんですけど、そっちでも「あいこのまーちゃん」を連載させてもらえることになってます。単行本の内容を毎回2話ずつ掲載していきます。
『あいこのまーちゃん』出版に関して、笠倉出版社の担当者さんから力強いコメントをいただいたので以下に掲載
「あいこのまーちゃん」を多くの読者に読んでもらうに値する作品だと感じ、発売を決定しました。
それに際し、「不健全図書に当たるかも?」という意見、そして、他社さんの現況などを見て、どうこうと言うのはありませんでしたし、「あいこのまーちゃん」がそういった要素を含んでいる作品だという意見があることに対しては理解しています。
その上でコミックスの発売を決定した次第です。
―― ビッグな発表ありがとうございました。単行本の発売と、Web連載、楽しみに待ちたいと思います。それでは最後に、やまもと先生が今後やりたいことについて教えてください。
やまもと いま新作についても考えていて、まだどういう形で発表できるか分からないですけど、もし掲載されたら読んでもらいたいですね。また2日前に連載中止とかにならなければいいですけど(笑)。
今回の件で、本当に何が起こるか分からないなと思い知らされました。これまでは雑誌こだわっていてネットには注目してこなかったんですけど、「あいこのまーちゃん」が33万回も読まれたということもありますし、ネットでも配信していくべきなのかなって考えています。なので今後は、出版社と同時に個人でもやっていけたらいいですね。
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