「人工心臓」をめぐる親子と姉弟の物語 「オルガの心臓」の続きが気になって眠れないので3巻はよ!虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第42回

今回はITAN WEB COMICから、雨宮もえ先生の「オルガの心臓」を紹介します。

» 2015年03月27日 14時30分 公開
[虚構新聞・社主UKねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。

 PCやタブレット端末からねとらぼをご覧の方にはすでにおなじみとなっているツナミノユウ先生の週末連載マンガ「つまさきおとしと私」。社主も毎週楽しみに読んでいて、最初の頃は「咲ちゃんかわいいな」などと感じさせるほのぼのマンガだったのが、今やちょっとしたホラーと化している昨今ですが、今回はこの「つまわた」でコラボしている講談社の季刊マンガ誌「ITAN」から1作品をご紹介します。「ITAN」作品は田中相先生の傑作「千年万年りんごの子」(全3巻)以来久々ですね。


画像 「オルガの心臓」(〜2巻、以下続刊/講談社)→ 1巻試し読みページ

 今回取り上げるのは、ITANのウェブサイト「ITAN WEB COMIC」にて連載中、雨宮もえ先生の「オルガの心臓」(〜2巻、以下続刊)です。昨年発売された第1巻を手に取ったきっかけは、決意を秘めたようにこちらを見つめる本作の主人公・オルガの表情に惹かれたからなのですが、実際に中身を読んでみて「これはすごい!」と感銘を受けた、近頃読んだマンガの中でもドラマ運びに頭一つ抜けた感のある作品でした。

 「これはいずれ紹介せねば……」と温存していた本作、今月待望の2巻が発売。やっとこさ取り上げるタイミングがめぐってまいりました。



「人工心臓」をめぐる物語

画像

 医療が発達し、人工臓器の開発が進んだ現在。かつて都心で人工心臓の研究を行っていたオルガ=シャルトーはある出来事をきっかけに研究所を追われ、今は田舎の診療所で密かに人工心臓の研究を続けていました。

 彼女が秘密裏に作り上げた人工心臓は、世間ではまだ解決していないバッテリーの問題を克服した画期的なもの。これが公になれば医療技術に更なる進歩をもたらすことは間違いないはずですが、名声や金銭に執着のない彼女はそれを望まず、自身の診療所で極秘に移植手術を行っています。

 そのオルガと共に暮らしているのが弟のニト。オルガの異母姉弟にあたる彼はオルガの研究が世間に知られれば自分たちの穏やかな生活が脅かされると考え、オルガに外出を禁じるなど、極端なまでに彼女を他人から遠ざけ続けています。

 さて、物語はニトが最近街でうわさになっている「偽の人工心臓」の実態調査に乗り出すところから始まります。偽の人工心臓騒ぎが拡大すれば、いずれ本物を知るオルガのもとにまで騒動が飛び火するかもしれないと考えたニトは、ついにその偽物のありかを突き止めます。

 その潜入中出会ったのが少年・マナ。彼は自分の将来を思って心臓を売ったものの、粗悪な人工心臓を植え付けられて動けぬ体になってしまった母の心臓を取り戻すため、偽の人工心臓を作っていた組織に侵入しようとしていたのでした。

 マナが心臓を求める理由を知ったニト。「唯一の身内である母のため」という少年の一途さにかつての自分を重ねたのか、容体が悪化するばかりの母に姉・オルガが作った人工心臓を再移植するよう促します。

 マナが姉弟の隠れ家で見たものは、緑色の電子の光が舞う本物の人工心臓。この人工心臓に母の細胞を入れて培養、再度移植手術を行うことで無事母の容体は回復していくのでした。



ただの医療ドラマでは終わらない

 ここで「マナのお母さんは回復しました、めでたしめでたし」なら、1話完結型の医療ドラマに過ぎなかったかもしれません。しかし本作の真骨頂はここからです。

 手術が成功し、オルガによる新たな心臓が拍動しはじめたマナの母。しかし、彼女の食は進まず、自らを助けてくれたマナに対しても口を開けば「ごめんね」「ごめん」と、息子への謝罪を繰り返すばかり。

 彼女を苦しめるのは、子どもを貧しく生んでしまったことへの罪悪感です。いわゆる貧民街で生まれ育った彼女は息子に同じ思いをさせまいと頑張ってきたものの、それが上手くいかず、結局最後には自分の心臓を売ってお金を得るしかなかった。けれど皮肉なことに、代わりに入れられた粗悪な人工心臓のため、結局息子に苦労をかけさせてしまった――。そんな罪悪感が彼女をむしばみ、その姿を見たマナもまた苦しむという悪循環。この鎖がどのように断ち切られるか、普段は無愛想、前髪に隠れて表情も読み取れないニトがマナの母に対して浴びせた心からの言葉はぜひ本編にて読んでいただきたいです。



一切無駄のないストーリー運び……3巻はよ!

 親子の体と心を救ったオルガとニトの物語はこの後、オルガの心臓のうわさを聞き付けた医師シマ=バークリー、そして現在は絶縁状態にあるものの、2人の父であり人工心臓製作の第一人者でもあるイレール=カテルの登場とともに、大きなドラマへと発展していきます。

画像

 とりわけ本作最大の見どころは親子の関係です。このテーマは先ほどのマナ親子のエピソードの中心にもなっていましたが、それが敷衍(ふえん)される形で語られる「愛の上に望まれて生まれてきたわけではない」オルガと「愛されて生まれてきた」ニト。母が異なる2人それぞれの少女・少年期のストーリーは、幼い頃の家庭機能不全が大人になってもトラウマとして残る「アダルトチルドレン」に重なるところが多分にあるように思えます。

 姉弟で抱きしめるシーンが多い第1巻を読んだときは、正直なところ「いくらなんでもブラコンシスコンすぎるだろ」と思った、共依存なオルガとニトの姉弟関係も、第2巻を読んでからは「こんな状況に置かれたらそうなるのもやむないわ……(と言うか、自分もオルガさんに抱きしめられたい)」と納得できるようになった部分もありますし、また2巻の帯にもなっている「私は弟を恨んでいるの? 愛しているの?」というオルガのアンビバレント(二律背反)な感情も非常に人間らしくて良いです。

 それにしても、今これを書くため改めて繰り返し読み直しているのですが、読めば読むほど本作におけるストーリー運びの無駄のなさには驚かされます。「オルガの心臓」は雨宮先生にとって初の単行本ということだそうですが、初作品とは思えないほどレベルの高いマンガに仕上がっています。

 現在はまだ「ITAN WEB COMIC」にて連載継続中ですが、今秋発売予定の次巻にて完結とのこと。第2巻収録分の最後でオルガさんがえらいことになっていたので、私、本気で続きが気になります。3巻はよ!

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。


(C)雨宮もえ/講談社 ITAN



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/15/news019.jpg 4カ月赤ちゃん、おねむのひとり言が止まらず…… 心とけそうなおしゃべりに「とてつもなく可愛すぎる!」「ウルウルした」
  2. /nl/articles/2404/15/news020.jpg 1歳妹が11歳姉に髪を結んでもらうやさしい光景が160万再生 喜ぶ妹のノリノリのリアクションに「可愛すぎて息できない」「ねぇね髪の毛結ぶの上手」
  3. /nl/articles/2404/13/news014.jpg 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  4. /nl/articles/2404/14/news013.jpg 海岸を歩いていたら「めっちゃ緑のヨコエビがおって草」 作りものと見まごうほどの色合いに「ガチャの景品みたい」と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/11/news165.jpg 遊び疲れた子猫を寝かしつけてみた 絵本のような光景に「きゃーあ」「可愛すぎて変な声出た!」
  6. /nl/articles/2404/15/news038.jpg ダイソーの材料を“くっつけるだけ”で作れる、高見え「カフェコーナー」 今流行りのジャパンディな風合いに「天才的に美しい」「まねする!」
  7. /nl/articles/2404/15/news103.jpg 「ケンタッキー」新アプリ、不具合や使いづらさに不満殺到…… 全面的刷新も「酷すぎる」「歴史に名を残すレベル」
  8. /nl/articles/2404/15/news014.jpg 100均大好き起業ママが「考えた人天才すぎる」と思わず興奮 ダイソー&キャンドゥの優秀アイテム5選が参考になりすぎる
  9. /nl/articles/2404/14/news006.jpg 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  10. /nl/articles/2404/15/news021.jpg 下っ腹に合わせて購入したGUデニムで50代女性に悲劇→機転を利かせたコーデに称賛!! 「笑って楽しんで60代、70代を迎えたい!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  2. 500円玉が1つ入る「桜のケース」が200万件表示越え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「オトナも絶対うれしい」「美しい〜!」
  3. 赤ちゃんがママと思ってくっつき爆睡するのはまさかの…… “身代わりの術”にはまる姿に「可愛いが渋滞」「何回見てもいやされる!」
  4. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  5. 日本地図で「東京まで1本で行ける都道府県」に着色 → まさかの2県だけ白いまま!? 「知らなかった」の声
  6. 中森明菜、“3か月ぶりのセルフカバー動画”登場でネット沸騰 笑顔でキメポーズの歌姫復活に「相変わらずオシャレで素敵」「素敵な年齢の重ね方」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. もう別人じゃん! 「コロチキ」西野、約8カ月のビフォーアフターが「これはすごい」と驚きの声集まる
  9. 娘がクッションを抱きしめていると思ったら…… 秋田犬を心ゆくまで堪能する姿が440万再生「5分だけ代わっていただけますか?」「尊いなぁ…」
  10. 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」