インタビュー
» 2015年03月30日 07時00分 公開

アイドル×オタクで面白さは加速する――アイドル群像漫画『ミリオンドール』の魅力とはドルオタ漫画家・藍 インタビュー(1/2 ページ)

地方アイドルVS地下アイドル、そして在宅オタクVS現場オタクという二重構造で展開される漫画『ミリオンドール』。7月のアニメ化放送が決定した同作の作者・藍さんに作品について伺った。

[宮澤諒,eBook USER]
ミリオンドール

 地方アイドルVS地下アイドル、在宅オタクVS現場オタクという二重構造で展開されるアイドル群像漫画『ミリオンドール』。Webコミックサイト「GANMA!」で連載中の同作は、アイドルものにオタクを取り入れる斬新な切り口で人気を集め、2015年7月、ついにテレビアニメ化することが決まった。

 現在開催中の声優オーディションのほか、4月には、キャストに決定している声優の楠田亜衣奈さんと伊藤美来さんによる番組「ミリオンドール 〜リアルすぎるアイドルラジオ〜」が、ラジオ大阪と文化放送超A&Gでスタート。6月21日にはファンミーティングが予定されており、7月〜9月にはAKIBAカルチャーズ劇場を舞台にキャストたちのトークイベントやライブなども開催される。

 eBook USERでは、作者の藍さんにインタビュー。作品の魅力についてはもちろん、GANMA!の連載作家としてのデビューから、さらに気になる今後の展開まで語ってもらった。

『ミリオンドール』メインキャラクター

 

私は影に徹して

 

       現場オタにはできないことをやるんだ

 

すう子:PCを駆使してアイドルを応援する在宅オタ。同じく、ネットでアイドルを応援することを生きがいとするオタクたちが集う「すう子会」の代表でもある。リア充の姉がいる。


 

業界のヤツらはアテにならねえ

 

            オレがマリ子を有名にする

 

リュウサン:現場に命を賭けるアイドルオタク。DD(誰でも大好き)で、応援できればアイドルは誰でもいいという考えだったが、あることがきっかけでマリ子にガチ恋になる。オタクたちからはカリスマとして慕われている。


 

3人でいればうちら最強なんだから

 

                ね? 大丈夫だよ

 

イトリオ:元ヤンの「ゆりの」、ゆりのの同級生でおっとりぽわぽわな「ももな」、元ジュニアアイドルの「りな」で結成された福岡出身の3人組アイドル。大手CDレーベルからも注目される実力派。


 

先なんて誰にもわからないけど

 

        歌は私と一緒にいつもここにいる

 

マリ子:メジャーデビューを目指して活動する地下アイドル。イトリオとは毎回ライブで人気を争うことになる。母子家庭で、ホステスの母親と一緒に暮らしている。


オタクの非日常性を描きたい

―― アニメ化決定おめでとうございます。アイドルをメインにした人気作は多いですが、オタクを取り入れた作品って珍しいですよね。なぜそういった構造の作品にしたのでしょうか。

 いろいろ理由はあるんですけど、アイドルを題材にした漫画やアニメを見ている中で、アイドルカルチャーを支えている存在であるオタクの描写がほとんど描かれていないことに気付いたんです。自分としても、オタクにフィーチャーした作品を読みたいという気持ちもあって、ないならもう自分で描いちゃおうと。

 もう1つは私自身アイドルオタクなので、現場、いわゆるライブに行ったりする中で、普通の生活を送っていては決して出会えないような面白いことがたくさん起こったりするんです。それをもっと世に出していきたいという気持ちがありました。

 ステージを壊してもそれが笑い話になったり、光り物が禁止のライブでサイリウムの替わりにきゅうりを振ったりだとか(笑)。とにかく、そういう話を何かに残していけたらと思ったんです。

―― 藍さん自身がアイドルにはまったきっかけは?

 ハロプロやモーニング娘。が世代だったこともあって好きだったんですけど、初めてライブに参加したのはAKB48です。漫画家になりたくて上京してきたころに、友達に誘われてAKB48劇場に見に行きまして、そこからちょっとずついろんなアイドルのライブに行くようになりました。

―― ライブ会場でファンに会うことってありますか?

 ありますけど、もともと私がオタクだったこともあって、「先生!」みたいな感じじゃなくて、あ、またいるねみたいな適度な距離感なので気楽です(笑)。

―― いま推しているアイドルは?

 私はDD(誰でも大好き)で、いろんなアイドルが好きなんですけど、寺嶋由芙さんは好きでよくライブに行かせていただいてますね。アイドルじゃないところだと、E-girlsさんもライブに行かせてもらっていたり。

―― 行かせてもらっているっていうのは、取材に行かせてもらっているという?

 あ、これはオタク特有の心理かもしれないんですけど、行くんじゃなくて、応援しに行かせてもらっているっていう気持ちなんです(笑)。

―― 何て謙虚な……(笑)。ところで、藍さんはコミックスマートの「Route M」という作家支援プログラムに所属して漫画を描かれているんですよね。

 そうですね。スタジオや画材も用意されてて、家とスタジオの両方で漫画を描いています。設備や作画道具があることで、連載をする漫画家としては初期投資がかなり抑えられるのがうれしいですね。アシスタントを付けてもらうこともできますし。

 新人が連載を始めるとなると、初期費用で100万円ぐらい掛かるってよく聞くんですけど、かなり経済的に支援してもらっている形です。あと、毎月一定額を支援してもらっているので、安定して描けるという意味でとても助かっています。漫画家って給料が不安定になることが多いと思うので。

―― Route Mに入る前は何をされていたんですか?

 Webディレクターの仕事をしていました。高校生くらいから漫画の仕事をしていて、漫画一本でやっていきたいと思って上京したんですけど、なかなか上手くいかなくて。それでまずは社会経験を積もうと思ってWebディレクターになりました。

 仕事にも慣れてきたなっていうときにRoute Mの告知を見つけて、趣味のアイドルのことを漫画にできたらと思って応募しました。

スタジオでの作業風景

 スタジオで原稿を描くようすを撮影させてもらった。スマートフォンでネームを制作し、拡大印刷したものを使ってペン入れをしていくという。

リュウサンに自分の願望を投影した

―― マリ子やイトリオに、元となったアイドルっていますか?

 迷惑が掛かるといけないのであまり大きな声では言えないんですけど、マリ子は椎名へきるさんをイメージして描かせていただいています。イトリオは、Perfume、モーニング娘。の6期メンバー、ノースリーブスといった3人組みがモデルです。メンバーのバランスですとか、性格などを参考にさせてもらっています。

―― イトリオが福岡出身なのには何か理由があるんですか?

 あ、それは私が福岡県の糸島出身だからだったりします。

―― だから彼女たちの話す方言が自然な感じなんですね。どのキャラにも思い入れはあると思いますが、特に好きなキャラを挙げるとすると誰になりますか?

 強いて言うならリュウサンですね。普段からアイドルオタクの人たちを見ていて、「マジ○○いいわあ!」みたいな、ガチ恋っていうんですけど、そのアイドルが好きで恋愛対象に見ているぐらいに入れ込んでいる人を見ているとすごく楽しそうなんですよ。でも私は女性が恋愛対象というわけではないので、憧れで見ていることもあって……。自分がもし男だったらここまでやってるだろうな、みたいな願望を投影している部分もあります。

―― DDのリュウサンがマリ子推しを続ける理由とは何なのでしょうか。

 イトリオからマリ子に推しを変えた時点ではまだDDなんです。でも、マリ子がライブ後に涙を流しながら「上に行きたい!」といった瞬間に彼はガチ恋に変わったんです。明確には描かれていないですけど、「俺が支えてあげなきゃ」という義務感が彼の中に生まれるというシーンになっています。

 DDからガチ恋へ、応援できれば誰でもいいという人間が、1人のアイドルだけを好きになる。そういう姿は描いていて楽しいですね。

事務所に口止めされていたが、メジャーになりたい思いを抑えきれず口に出してしまったマリ子。次のシーンでマリ子に駆け寄るリュウサンも必見

―― 作中では実在するアイドルの歌を使って、現実とリンクさせる形をとっていますよね。

 私が作詞作曲といった音楽的な知識がない素人ということもありますが、いろいろなアイドルの歌を聞く中で、それを自分が越えられる訳がないっていう、これもオタク心理ですけど(笑)そういう思いがあったからです。

 それと、この作品を描くことで、アイドル業界に何かしら還元していきたいと思っているんです。それが作品を描く上での根幹にもなっているんですけど、この漫画を読んで「この歌聞いてみたいな」とか「アイドルのライブ見てみたいな」って思ってくれたら本望です。

―― 連載ではアイドルの寺嶋由芙さんとコラボしていますよね。

 マリ子が事務所を辞めてフリーになるっていうシーンがあるんですけど、どうもリアリティがないような気がしていて、それで取材をすることになったんです。私の希望で、寺嶋さんに取材することになって、そこからあのコラボが生まれました。今後も「ミリオンドール」を通して実在のアイドルさんと関わり合っていけたらと思います。

―― 作中ではアイドルの所属会社の運営についてだったり、ラーフェスでの得票調整だったりと、結構ブラックな話も目立ちますよね。

 やりすぎると鬱展開になっちゃうのでバランスを考えながら描いていますけど、ただのサクセスストーリーにしたくなかったっていうのが根底にありますね。従来のアイドルものですと、メジャーデビューや大きな箱(ライブ会場)でのライブがゴールになることが多いですけど、そうすると描かれない部分も多いですし、本当はこういう部分で苦労しているのかもしれないっていう、もっと実際のアイドルに寄り添うようなものを描きたかったんです。

―― 作品にはいろいろなアイドルオタク用語が登場しますが、用語集があるおかげでとても読みやすいです。あの用語集は藍さんが手掛けているんですか?

 編集部の方に作ってもらっています。私の方から「このワードを、だいたいこんな内容で」とお願いする形ですね。

―― 各話の最後に読者のコメント投稿ページがありますけど、実際のアイドルを応援しているかのごとく毎回白熱していますよね。

 あの盛り上がりは予想外でした。イトリオやマリ子たちが実際にいるかのように応援してもらっていて、うれしく思っています。逆にアイドルをひどい目にあわせ過ぎちゃって読者さんたちのストレスにならないか、コメントを参考にしています。

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