4人の女郎を描いた物語、『親なるもの 断崖』への思いを語る:漫画家・曽根富美子 インタビュー(1/3 ページ)
最初の単行本化から約24年。「まんが王国」のプロモーションによりネットを中心に話題となった『親なるもの 断崖』の誕生から次回作の構想まで、作者の曽根富美子さんに聞いた。
昭和の北海道・室蘭市を舞台に描かれた曽根富美子さんの作品『親なるもの 断崖』が今、注目を集めている。
同作の単行本化は1991年。すでに絶版となっているが、電子書店「まんが王国」のプロモーションで人気が再燃、7月10日には宙出版から新装版が発売される。
明治から昭和に掛けての北海道では、国を挙げて開拓が進められていた。その歴史の陰には多くのタコ部屋労働者や、遊郭で身を売る女性たちの姿があった。「親なるもの 断崖」は、親に売られ、幕西遊郭で働くことになった松恵、梅、武子、道子という4人の少女を主人公に物語が紡がれていく。
eBook USERでは、作者の曽根さんにインタビュー。デビューから「親なるもの 断崖」を描くことになったきっかけ、さらに次回作のテーマについても聞いた。曽根さんからは、取材の際に撮影した室蘭の写真を提供いただいたので、併せてご覧いただきたい。
高校時代に『りぼん』でデビュー
―― 曽根さんが漫画を描き始めたのはいつごろからですか?
曽根 子どものころから絵を描くのは好きでしたけど、実際に原稿用紙に描き始めたのは高校2年生のときです。高校3年生のときに『りぼん』の第8回「新人漫画賞」で佳作二席に入選して、その年末のお正月増刊号でデビューしました。
―― 高校卒業後にそのまま漫画家になったんですか?
曽根 高校時代は北海道の登別市に住んでいたんですけど、卒業後は上京して会社の女子寮に住みながら、経理の仕事をしていました。
―― 一度、就職されたんですね。
曽根 当時、不況の波が始まっていて、高校の先生にも1人でも都会に出てほしいって背中を押されてしまって。
―― 本格的に漫画家を志したのはいつごろですか?
曽根 就職してすぐでした。経理の仕事をしながら「りぼん」に持ち込みをしていたんですけど「あなたの作品は絵も話も暗い」と言われて、なかなか上手くはいきませんでした。
でも、漫画家の夢がどうしても諦められず、経理の仕事を1年で辞めて、漫画家さんのアシスタントを始めました。20歳のときにサンリオが発行していた『リリカ』という漫画誌で再デビューして、集英社の『ぶ〜け』や秋田書店の『ひとみ』でも掲載されました。
―― 「北乃咲喜」の名前で油絵も描かれているんですよね。Webサイトを拝見しました。
曽根 高校の部活で3年間勉強していたんです。漫画家って体力的にも大変なので、いつかは油絵を中心にやっていこうって考えていました。3年前に、30年ぶりぐらいに描き始めたらすごい楽しくて「もうわたしは油絵を始める時期になったのね」とか思っちゃったんですけど(笑)。
2013年に自分のサイトをオープンしてすぐに数点注文が入ったんですが、それだけで生活するのはさすがに難しくて……。それから友達にレジのパートでもやってみたらって言われたんです。レジって人間の感情が行き交う場所ですごく面白くて。6ページの短編を2話分描いて友達に見せたら面白いって言ってくれて、持ち込むことに決めました。
―― 『モーニング』で連載していた『レジより愛をこめて〜レジノ星子-スタコ-〜』ですね。持ち込みの場として「モーニング」を選んだのはなぜですか?
曽根 わたしから見て、「モーニング」は活気があったんです。以前『ブンむくれ!!』で担当してもらった方がまだいらっしゃって、その方にメールで連絡しました。
3話分描き上げたら一度本誌に掲載して読者に評価してもらうってことになったんですけど、パートをやりながらだったのですごく時間が掛かっちゃって。18ページ描くのに1カ月掛かったかな。2014年の9月に連載がスタートして、今年の1月で単行本分のページがたまったのでいったん連載を終了しています。
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