ドイツはアニメイベント大国? 大型アニメコンベンション「AnimagiC(アニマジック)」に行ってきた

ドイツで3日間にわたって開催される大型アニメコンベンションをリポート。ドイツってアニメ関連のイベントがかなり多いんです。

» 2015年08月08日 11時00分 公開
[Katahoねとらぼ]

 ドイツ西部、旧西ドイツ時代の首都ボンで7月31日から8月2日の3日間、大型アニメコンベンション「AnimagiC(アニマジック)」が開催された。近隣諸国やドイツ各地からアニメ・漫画ファンが集まるイベントで、今年も1万5000枚のチケットが完売。その模様をお伝えする。

 会場はボン中央駅から徒歩20分ほどのところにあるコンサート施設「ベートーベン・ホール」。メインのコンサートホール以外にも会議室や通路など館内すべてを使用し、企業ブースや制作者によるパネル、アニメ作品の上映ルーム、物販ブースが展開する。

画像 メインホール。ファンによるショーグループがリハーサル中でした
画像 入場待機列の様子。当日は好天に恵まれました

 アニマジックはアニメ専門誌「AnimaniA」(アニマニア)が主催する商業イベント。ファンが主体となって開催するアニメコンベンションとは異なり、企業ブースや最新作などを紹介する企業パネルが充実しているのが特徴。制作関係者と直接交流する機会があるためか、よりコアなファンに支持されているという。

画像 アニメと漫画の両方を販売するKAZÉ
画像 漫画出版社大手のひとつEMA

 同イベントでは、主催が雑誌編集を通して築いてきた日本サイドとのつながりを活用し、招待ゲストにも力を入れている。今年は、アニメ「スペース☆ダンディ」や「カウボーイビバップ」の渡辺信一郎監督、漫画「るろうに剣心」の作者・和月伸宏さんなどが招待されファンとの交流を楽しんだ。アニメ「Fate/stay night」の主題歌を歌う歌手の綾野ましろさんなども招待され歌声を披露し、イベントを盛り上げた。

画像 開会式で紹介される招待ゲスト
画像 ドイツの漫画家クリスティーナ・プラカさんもゲスト参加

ドイツで人気のマンガは?

 アニマニア編集長でアニマジックの主催者でもあるトーマス・ヴェブラーさんによると、同イベントの参加希望者は供給が需要に追いつかない状態だという。施設の収容人数の都合でこれ以上規模を拡大できないのだそうだ。

 マンガファンは増加傾向にあると話してくれたのは、ドイツ語翻訳マンガ最大手の出版社カールゼンの漫画部門のカイ=シュテフェン・シュヴァルツ編集長。ファンの数はフランスと比較すると少ないかもしれないが、増えるスピードはドイツのほうが優っているという。カールゼンでは最近、読者の成長にあわせて青年漫画の開拓にも力を入れている。現在ドイツで最も人気があるのは「進撃の巨人」(出版:カールゼン)と「東京喰種トーキョーグール」(出版:KAZÉ)。

画像 カールゼンのシュヴァルツ編集長

 アニメ「Fate/stay night」などを販売するpeppermint animeのブースで関係者に聞いたところ、ドイツには日本と同様にものを大事にする文化があるという。DVDのブックレットなど、こだわりをもって制作すると応えてくれるファンがいる。今後もさまざまなアニメを販売したいと語ってくれた。

 ハンブルクでマンガ教室Manga Hamburgを運営するフィリップ・ペアバンドさんは、これ以上ファンが増えるかどうかは分からないが、イベントは増えるのではと予想する。ファンは交流の機会をもっと求めており、交流の場としてのイベントの需要はまだまだ拡大の余地がありそうだという。

画像 招待ゲストのひとり歌手の綾野ましろさんからサインをもらい喜ぶファン
画像 漫画教室Manga Hamburgの特設ブース

ドイツは欧州のアニメイベント大国

 欧州ではフランスの首都パリで開催される大型日本紹介イベント「Japan Expo(ジャパン・エキスポ)」がよく知られているが、ドイツのイベントは首都ベルリンだけに終わらない。文化、経済の中心はドイツ全土に分散化していて、イベントも各地で開催されている。

 参加人数が1万人(のべ)を超える大型アニメコンベンションだけでも、8月開催のアニマジックのほか、以前紹介したコンニチ(9月開催、関連記事)があり、5月ごろには日本人が最も多く住むデュッセルドルフで開催されるDokomi(ドコミ)がある。

画像 ドコミの閉会式。2014年撮影

 主要な各都市でも、中規模のアニメコンベンション(参加者1万人未満)が開催されている。4月にミュンヘンで開催されるAniMUC(アニムック)を筆頭に、6月はハンブルクのChiisaiCon(チイサイコン)やフランクフルトのCosday2(コスデイ)、10月にはベルリンのMMCが開催されるほか、コンニチの以前の開催地であるマンハイム近郊のルトヴィクスハーフェンでも5月にHanami(ハナミ)という数千人規模の中堅アニメコンベンションがある。

 ドイツ東部でもファン同士の交流は活発だ。ドレスデンのDeDeCo(デデコ)は2月の開催。地元カメラマンと協力し複数の撮影ブースを用意するなど、コスプレイヤー向けの企画が充実しているのが特徴。近年では周辺の町ツヴィッカウで新たなイベントがスタートするなど、まだまだこの勢いは止みそうにない。

 さらに、このようなアニメ・マンガファン向けに特化したアニメコンベンション以外にも、日本紹介イベントの「日本デー」(デュッセルドルフ)やコスプレイヤーが集まるフランクフルトやライプツィヒのブックフェアなど、とにかくイベントが多い。

 アニメコンベンション自体はどこの国でも実施されているが、1万人を超える規模のイベントが国内数カ所で、しかも首都以外で開催される国は欧州でもドイツくらいだろう。

 ドイツではコンニチや先に取り上げたアニメ・マラソン(関連記事)など、オフ会タイプのイベントが好まれる傾向がある。同じ趣味の友達と会う場としてのアニメコンベンションが求められているのだ。加えて人口が分散化していることから、こうした「大きなオフ会」が各地で行われている。ドイツでイベントが活発に開催されているのにはそうした背景があるのだろう。

 仕事や旅行でドイツに来る際は、イベントが開催されてないか一度調べてみてはいかがだろうか。アニメ・マンガ文化を通した国際交流の機会は意外と多い。

アニマジックのコスプレイヤー

 最後に、アニメファンのイベントといえばやはりコスプレ。アニマジックでは館内やホール前の芝生エリアにとどまらず、近くを流れるライン川沿いもコスプレを楽しむファンたちでにぎわっていた。

画像 アニメ「狼と香辛料」のホロ。ドイツの古い町並みと相性抜群?
画像 アニメ「弱虫ペダル」から。ドイツではファンはまだ少ないという
画像 オンラインゲーム「刀剣乱舞」のコスプレグループ
画像 アニメ「ラブライブ」のグループ
画像 任天堂のシューティングゲーム「スプラトゥーン」
画像 定番のひとつ「初音ミク」
初掲載時、東京喰種トーキョーグールの出版社をTOKYOPOPとしておりましたがKAZÉの誤りでした。お詫びして訂正します(8月13日)。

(写真撮影:ニコラス)


著者紹介

Kataho:ドイツ、フランクフルト在住のアニメ・ボカロ好き。日本文化を通じたドイツと日本の交流に興味があり、ドイツ各地の日本イベントに参加(Twitter:@sakaikataho


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた