“野球版テニプリ”と話題の漫画「デッド・オア・ストライク」 作者の西森生さんに突撃インタビューしてみた
野球漫画ではなく、バトル漫画です。
先日、Twitterを中心に話題となった「デッド・オア・ストライク」という漫画をご存じだろうか。
無料マンガ配信サービス「GANMA!」で連載中の同作。勝者こそが絶対正義を地で行く野球の名門・頂(いただき)高校に入学した主人公・初月和希(みかづきかずき)が、頂高校に支配された故郷の島を取り戻すべく、野球をテーマにしたバトルでのし上がっていくという物語で、昭和の超人野球「アストロ球団」を彷彿(ほうふつ)とさせる必殺技の数々、そして設定のぶっ飛び具合に心を鷲づかみにされる人が続出したのだ。
例えば次の画像を見てほしい。まるで電車に弾丸が撃ち込まれているかに見えるこのシーンは、入部試験として3軍のキャプテンが打ち込んだ「ノック」に過ぎない。3軍ですら人間を卒業してしまっているレベル。トンデモバトルものが好きな人にとっては、これだけで興味が沸いてくるのではないだろうか。
なぜ平成も30年に近づくこの時代に、こんなすばらしい作品を生み出してしまったのか、必殺技はどのように考えているのか、一部では「テニスの王子様」っぽいとも言われるが実際のところ影響されているのかなど、作者の西森生(にしもりうい)先生に気になる話を聞いた。なお、持ち込み時から担当している編集者にも同席してもらった。
昔流行っていた魔球ものを21世紀に全力でやってみたかった
―― まず、西森先生の漫画家としての経歴を簡単に教えてください。
西森 デビューは小学館の「週刊少年サンデー超(スーパー)」に載った読み切り作品でした。アシスタントをしながらしばらく小学館にいて、その後に独立。講談社のWebコミックサイトでラブコメを連載していたこともあります。それから2年ほどイラストの会社に所属して、ちょうど1年ほど前に「GANMA!」で連載している吉開さん(「リセットゲーム」の吉開かんじさん)の紹介で持ち込みをして「デッド・オア・ストライク」の連載がスタートしました。
―― 「アストロ球団」や「テニスの王子様」のように、読者の想像を超えた必殺技が連発する「デッド・オア・ストライク」ですが、どのようにして物語が作られていったのでしょうか。
西森 まずスポーツものをやろうというのが最初にありました。90年代以降のスポーツ漫画って、「スラムダンク」のように割とリアル志向のイメージがあるんですけど、僕はそれほどスポーツに詳しくないので太刀打ちできないと思ったんです。それで、やるなら別の切り口でやろうとした結果、「昔流行っていた魔球ものを21世紀に全力でやったらどうなるんだろう」という考えに至りました。
―― 影響された作品だったり作家はいますか?
西森 この作品に関して言えば、根底にあるのは「らんま1/2」のころの高橋留美子さんだと思います。SNSなどで「テニスの王子様」っぽいと言われたのですが、自分では違うと思っていまして、それでこの前振り返ってみたんです。世代的に「ドラゴンボール」も大好きなんですけど、漫画として影響を受けたのは「らんま1/2」かなと。1話で雑魚が全員ふっとぶシーンは完全に高橋留美子さんを意識して描いていますし、普通にジャンプして3階の高さまで跳んじゃうところなんかもそうですね。
担当 参考にした漫画でいえば、まだ西森先生が企画を練っている段階のときに、編集長から「監獄学園<プリズンスクール>」を参考に読んでほしいと言われて、西森先生にお渡ししました。「デッド・オア・ストライク」ってギャグではなくて、ちょっとアホっぽいことを死ぬ気でやるのをコンセプトにしているんです。だから作中には突っ込み役がいないんですよ。
西森 “真剣にやっているがゆえに笑える”っていうのを目指そうと。勢いで読ませて、クスッとなるような描き方が得意なので。
―― ジャンルでいうと「バトル」になるんでしょうか。
西森 「ハイテンションバトル」ですね。ここでいうハイテンションは、ちょっとギャグが入っているっていう意味合いです。でも別にギャグ漫画として描いてはいないので、ギャグバトルとはしたくないんです。
―― Twitterでは、もともとは違うタイトルだったと書かれていましたよね。
西森 そもそも「デッド・オア・ストライク」というのは、初月が最初に対戦した3軍キャプテン・碇山剛宗の魔球(頂高校の選手が持つ投球に特化した能力。魔球を打ち返すには「魔振(ましん)」と呼ばれる打撃に特化した能力が必要となる)の名前だったんです。「死球or直球」と書いて「デッド・オア・ストライク」。連載直前でタイトルを変えようってなって、担当と二人でかなり悩みました。そのときは既に2話までできていたので、細かい部分を修正しながら考えていて、たまたま「この技名ってタイトルとしていいな」という話になり、急きょ決まったんです。
―― 本作の魅力の1つに魔球や魔振といった必殺技がありますが、技のアイデアはどうやって考えていますか?
西森 描きながら考えていますね。取りあえず思い付いたことを描いて、その後に攻略法を考えています。名前に関しては作品に合うようにちょっとダサめを意識してます。
―― 攻略法を後回しにするのって怖くないですか?
西森 予定調和で物語が進むのがつまらないんです。取りあえず一回自分を追い込む。一回追い込んでから……さて、どうしようかって(笑)。
―― 作品と西森先生のバトルでもあるんですね。何てストイックな……。ちなみに一番気に入っている魔球は何ですか?
西森 まだ登場してないやつで、ちょっとこれは面白いなっていうのはあるんですけど、まだ言わない方がいいかな。登場した中だと、やっぱり最初に見せた「死死球球(デデデッドボール)feat.三振(アウト)」ですね。ネットでめちゃくちゃ突っ込まれてますけど、要するにあれが通るくらいアウェイなんだよっていう意味で描いたんです。あの球に審判も突っ込まない場所に主人公が来たんだっていう、世界観の説明という意味も含まれています。後に対外戦をやることになるとしたら、ちゃんとルールが登場すると思いますけど、学内でやる分には審判も敵寄りな感じでいいかなと。
―― 魔球や魔振といった能力は、個人にそれぞれ元となる力があって、それを投打に分けて利用しているということなのでしょうか。
西森 いろいろ応用できる、ぐらいな感じで、まだ細かくは設定していないです。詰崎の「ネガティブネット」(自身の持つ負のオーラを利用して、空中でボールを止めることができる。走攻守に応用できる強力な能力)は特殊能力過ぎてボツになってもしょうがないと思ったんですけど、通ったので採用しました(笑)。
担当 それぐらいやった方が幅が広がるだろうなと思いまして。今後は、能力のカテゴリー分けみたいなものも出していくことになるかもしれません。
西森 カテゴリー分けに関しては、ざっくりとは考えています。割とそういう設定を考えた方が、自分の中で物語を組み立てやすかったりするので。まだ登場させるか分からないんですけどね。
勢いだけじゃなく、キャラクターも好きになってくれたら
―― 読者にここに注目してほしいというところはありますか?
西森 この先、新キャラをバンバン出す予定なので、その中でお気に入りを見つけてほしいなと思います。どうしても勢いとか、そういうところばかりに注目されがちなので、もうちょっとキャラクターを好きになってくれたらうれしいです。
―― 先生のお気に入りのキャラクターは?
西森 描いてて面白いのは、最近登場した才野と、初月と同じ島出身の織部っていう女の子。何かイレギュラーなことをしてくれる感じがあるんです。初月は逆に「何か変なことをさせなきゃ」って意識的に考えているので、その脇で二人が別のことをやってくれると面白いかな。
―― 織部ちゃんはコマによっては微妙に裏がある感じに描かれていて、気になる存在です。考えるのに苦労したキャラクターはいますか?
西森 1軍は苦労していますね。ラスボス的な感じなので。キャプテンはボウズにするっていうのは決めていたんですけど、顔まで決めてなくて、思ったより早く登場したのでどうしようかと(笑)。最初は全員まとめてワンカットで出そうと思ったんです。そしたら小出しにしていく方針になってあんな感じに。
―― 物語の展開はラストまで考えていますか? それとも進むにつれて考えていくといった感じでしょうか。
西森 ものすごいざっくりと、ポイントごとに考えているぐらいです。そういえば、8話の引きで「魔振眼(ましんがん)を身につけてもらう」っていうセリフを入れたんですけど、その段階では魔振眼の設定は考えてなかったんですよ(笑)。取りあえずワードが浮かんだんで、内容は後で考えようと(魔心眼とは、魔振を発動するための必須要素。作中では「超動体視力」と表現されている)。
担当 「魔振眼」ってもともとは初月の「魔振」にする予定だったんですよね。
西森 あ、そうですそうです。魔振「眼」って書きますけど。最初は魔振「弾丸」って書いて、初月の必殺技の名前にしようと思っていたんです。6話の鮫定の魔球を打ち返すシーンですね。セリフもそれっぽくしていたんですけど、8話になって魔振眼っていうのが出てきたので、戻ってセリフを変えたんです。これやめようって(笑)。
―― 連載中に聞く質問でもありませんが、そのうち機会があったら描いてみたいジャンルはあったりしますか?
西森 もし次やるならちょっとミステリーっぽいものを描きたいです。ただ、ミステリー部分を考えるのが苦手なので、その部分の原作があればやってみたいです。
―― 最後に、西森先生にとって「デッド・オア・ストライク」とは?
西森 落ち込んだ気分を吹き飛ばせるような、エンターテイメントとして面白い作品だと思います。
主人公は、同級生のいない小さな島にいたことで、仲間のつながりにすごい憧れがあるっていう設定なんです。自分も作品は一人で描いているので、孤独を感じることがあって、チームワークというものにグッっとくるんですよね。高校野球ってまさにチームワークのスポーツなので、そういう部分をこれからどんどん描いていけたらと思ってます。
(宮澤諒)
関連記事
「デッドボールと3ストライクを同時に奪う!」 ぶっ飛び野球漫画「デッド・オア・ストライク」がテニヌレベルと話題に
こんなの野球じゃなくてベーヌボールよ!「ちくわしか持ってねぇ」コラの元ネタ 漫画「ホワッツマイケル」アンコール連載が伝説のちくわ回
「クレクレ」に対するたった一つの冴えたやり方。ようこそ地獄へ 鈴丸れいじは「地獄恋」でなぜ日常を描くのか
地獄もそんなに悪くない……?「ねこあつめ」がマンガになった! Webコミックサイトで連載
かわいくて味わい深い。第一回少年ジャンプに絶対載るギャグ賞に「中二病以上初恋未満」 2コマで笑える……だと!?
ジャンプで輝く、ギャグ漫画の星になるかもしれない。連載を取り消された漫画家の復活劇――『あいこのまーちゃん』が書店に並ぶ日
「不健全図書」に該当する可能性を指摘され、連載中止となった漫画『あいこのまーちゃん』。同作の単行本化に向け、クラウドファンディングやニコニコ生放送、273時間の作画配信などさまざまなことにチャレンジしてきた漫画家・やまもとありさ先生とは一体どういう人物なのか。ロングインタビューでやまもと先生に迫った。少年ジャンプで許されるのか、これが! ヤリすぎる漫画「あの娘はヤリマン」にネット騒然
青春ラブコメの新しい地平を切り開いてしまった……。掲載誌が休刊してもネットがあるッ! 業界震撼の衝撃作「有害都市」 となりのヤンジャンでリスタート
10月に休刊した「ジャンプ改」で連載していました。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
皇后さま、全身「真っ白な衣装」に18万いいね
ボランティアで庭を掃除していたら…… 物置から見つかった“ヤバいもの”で警察沙汰に 「通報して正解」「絶対に触らないで」【海外】
初めてのコメダ珈琲店で「やたら高くないか?これが都会価格なんだろう」と料理を頼んだら…… “衝撃の洗礼”描いた漫画に「無茶しやがって」の声 作者に話を聞いた
「子供泣くぞこれ」 トーマスの塗り絵、描き始めて2秒で…… “予想を超えた変貌ぶり”に反響「夢に出てきそう……」「ヒィィ…!!」
ショウガを土に埋めて水やりすると……「すごすぎる!!」 想像もつかなかった、とんでもない状態に37万再生
“1K8.5畳”の新居を一人暮らし男子が模様替え→1年後…… 「もうホテルやん笑」生まれ変わった空間に驚き「こんな部屋に住みたい」
「何の生き物……?」 小学生の時に飼い始めて23歳になるまで“死なない生物”の正体が判明 「永遠に生きてる」「怖いよ」
小学生女子3人のお泊まり会、母が用意したのは…… 圧巻の朝ご飯が「こんな友達のお母さん羨ましい」と326万再生
生まれつきの“縮毛症”に悩む小2の女の子→「髪を伸ばしたい!」 プロの手で“夢がかなった”シーンが1600万再生「涙出ちゃいました」
のどかな釣り場に現れた“妙に風格のある”おばあちゃん→釣り上げた“とんでもないヤツ”に仰天「本当におばあか?」
- 急性骨髄性白血病で闘病中だったVTuber、死去 「復帰を目指して闘病」 専門学校の講師としても活動
- 万博の“着物ショー”に天皇陛下だけ許される「装束」登場で物議…… 「深くお詫び」主催者謝罪
- 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」 投稿者に話を聞いた
- 大人なら解けないと恥ずかしい? 「(1/8)−(1/8)」を計算せよ!【算数クイズ】
- 「女の子みたいな顔だね」と言われ続けた男の子、20歳になったら→「神がかってる」姿に驚がく 「人体の不思議」「オーラが凄い」
- 使わなくなったカラーボックス→“ずぼらシンママ”が簡単DIYしたら…… 天才的な仕上がりに「かしこーい!!」「これ作ってみよう」
- クリスマスに出会ったギャルとギャル男が21年後…… 誰も予想できない現在に「素直に凄い」「人に歴史あり」と称賛の声
- カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収
- マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「待ってました!」 人気作の登場に混乱の懸念も「すぐ売り切れそう」「初週ヤバいぞ」
- お隣さんから丸見えの土地→巨大ウッドフェンスを7日かけてDIYしたら…… 雰囲気ガラリで「すごい大作ですね」「ワクワクした」
- 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
- 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
- 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
- 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
- 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫、1年後の姿に「泣いた」と大反響 それからどうなった?現在の様子を聞いた
- 100万円の“錦鯉”を自宅の池に入れたら…… 「おかしいでしょ」3日後、まさかの事態に「鯉は難しい…」「信用が大切ですね」
- パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
- 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
- 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
- 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」