「“読者のニーズが”とか言ってるヤツを見ると、ムカッと腹立つんですよ」 20周年を迎えた「コミックビーム」が目指すもの奥村勝彦“編集総長”インタビュー(3/3 ページ)

» 2015年11月19日 17時40分 公開
前のページへ 1|2|3       

マンガに対する東日本大震災の影響

―― 玉吉さんの作風の変化は、奥村さんの影響が強いんじゃないですかね。「しあわせのかたち」の中で転換点と言われる「しあわせのそねみ」が始まったころ、ちょうど奥村さんとも出会っていて。

奥村 それは俺の影響というより、もともとあいつはつげ(義春)さんの熱狂的なファンだったので、その要素は持っていたんです。「週刊ファミ通」の中ではなかなかやりにくかったんだろうけど、俺がその辺は理解できたから、ビームでは全開で行けたんじゃないかな。俺の方からそう描けとは言わなかったけど、確かに関与はしてたんだろうなと。


画像画像 「しあわせかたち」5巻より。「しあわせのそねみ」の作風はその後の桜玉吉作品にも受け継がれていった

―― 好きにやってくれという環境を提供したんですね。

奥村 お前が描くならそれなりに面白いもの描くんだろうよ、だったらやりなってのは常に言ってましたし。それは、いましろ(たかし)君に対してもそうで、反原発(「反原発幻魔大戦」)をやりたいならやればと。案の定、読者は減っちゃったけど、本人が描かざるを得ないんだったら別にいいよと。関東に住んでりゃやっぱり震災の影響はある。もし作家として描いても許される状況があったら、すべからく描いていいと思います。うちの作家連中って、みんなビビッドに反応してくれたのでうれしかったですね。同時代に生きてて同じものを見てるのに、それをなかったことにして「エンタテイメントです」ってのは、何か違うんじゃないかと。ちゃんと本人が腰の入った形でやるのであれば、いかなるリアクション取ったって構わないと思ってます。

―― 玉吉さんも5年ぶりに「ビーム」で発表した新作が、震災時のエピソードでしたね。

奥村 3.11(東日本大震災)以降描かなきゃって気持ちになったのは、あいつにとっては良かったのかなという気はしてます。自分なりにまた世間に対峙し始めて、もちろん不幸な事件ではあったけど、一つのきっかけにはなったんじゃねえのかなと。



「コミックビーム」という雑誌よりも理念を伝えていきたい

―― 20年続いた「ビーム」ですが、今後はどういう展望を?

奥村 今の形態をそのまま保持してやっていけるかというと、ちょっとキツイだろうね。部数的には笑っちゃうぐらい少ないし。けど、俺は縁日の夜店みたいな場をイメージして雑誌を作ってきたんで。お化け屋敷もあれば焼きそばや綿菓子もあって、その場にいることがすごく楽しくて、ポンと何かに出会える。そのためには作品がバラバラな方がいい。竹本泉の読者がいましろたかしの単行本も買うとかね。ただ今の世の中だと、それはなかなか厳しい。モノを選ぶにしても、みんな検索するから、最初から一直線で目的にたどり着いちゃう。


画像 「俺は『ビーム』がなくなっても別にいいと思ってるんです。ただ『ビーム』的な価値観を持った編集と作家さえ残ってくれればいい」

―― 話題作の単行本だけ買って、雑誌は買わない人が多いですしね。

奥村 寄り道も何もしないから、他の出会いがない。でも、それじゃやっぱり寂しいんだよな。俺が最初に漫画を読み始めたのは全盛期の「週刊少年マガジン」だったけど、それには「巨人の星」と「あしたのジョー」、おまけに「天才バカボン」に「アシュラ」「デビルマン」なんかも一堂に会していて。俺は「バカボン」を読みたいから買ってたんだけど、なんだかすごく面白い場にいる実感があった。「週刊少年チャンピオン」の全盛期もいろんなものがごった煮で、「がきデカ」や「ブラックジャック」、萩尾望都の漫画まで載ってたわけですよ。そういう場をなくすことでマーケット的にはシンプルになるかもしれない。だけど、すごく大事なものを失うんじゃなかろうか。

―― その意味では「ビーム」は貴重な場になってますね。

奥村 極論を言ってしまえば、俺は「ビーム」がなくなっても別にいいと思ってるんです。「ビーム」的な価値観を持った編集と作家さえ残ってくれればいい。人間だって雑誌だっていつかは死ぬ、ただ、それを継いでくれるものがあれば、それは「生きてる」ってことだと。「マーケティングではなく、ある意味での混沌を目指す」という理念をどうやって後の世代に伝えていこうかと、今はそちらに頭を切り替えてるところです。

―― そうした「ビーム」の理念を残す一方で、玉吉さんとのご縁も続いていくわけですね。

奥村 もう二人ともヨボヨボでちんこもあんまり勃たないし、傍から見てるとジジイたちが情けないアホみたいな会話をしてるのを、若いヤツが横で聞いてて薄笑いを浮かべてる、とかそんな状況になったら楽しいよね。そこまではやっていきたいと思ってるよ。(2015年11月12日 KADOKAWA社内にて)


画像 最後までサービス精神たっぷりだった奥村さん

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/15/news019.jpg 4カ月赤ちゃん、おねむのひとり言が止まらず…… 心とけそうなおしゃべりに「とてつもなく可愛すぎる!」「ウルウルした」
  2. /nl/articles/2404/15/news020.jpg 1歳妹が11歳姉に髪を結んでもらうやさしい光景が160万再生 喜ぶ妹のノリノリのリアクションに「可愛すぎて息できない」「ねぇね髪の毛結ぶの上手」
  3. /nl/articles/2404/13/news014.jpg 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  4. /nl/articles/2404/14/news013.jpg 海岸を歩いていたら「めっちゃ緑のヨコエビがおって草」 作りものと見まごうほどの色合いに「ガチャの景品みたい」と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/11/news165.jpg 遊び疲れた子猫を寝かしつけてみた 絵本のような光景に「きゃーあ」「可愛すぎて変な声出た!」
  6. /nl/articles/2404/15/news038.jpg ダイソーの材料を“くっつけるだけ”で作れる、高見え「カフェコーナー」 今流行りのジャパンディな風合いに「天才的に美しい」「まねする!」
  7. /nl/articles/2404/15/news103.jpg 「ケンタッキー」新アプリ、不具合や使いづらさに不満殺到…… 全面的刷新も「酷すぎる」「歴史に名を残すレベル」
  8. /nl/articles/2404/15/news014.jpg 100均大好き起業ママが「考えた人天才すぎる」と思わず興奮 ダイソー&キャンドゥの優秀アイテム5選が参考になりすぎる
  9. /nl/articles/2404/14/news006.jpg 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  10. /nl/articles/2404/15/news021.jpg 下っ腹に合わせて購入したGUデニムで50代女性に悲劇→機転を利かせたコーデに称賛!! 「笑って楽しんで60代、70代を迎えたい!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  2. 500円玉が1つ入る「桜のケース」が200万件表示越え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「オトナも絶対うれしい」「美しい〜!」
  3. 赤ちゃんがママと思ってくっつき爆睡するのはまさかの…… “身代わりの術”にはまる姿に「可愛いが渋滞」「何回見てもいやされる!」
  4. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  5. 日本地図で「東京まで1本で行ける都道府県」に着色 → まさかの2県だけ白いまま!? 「知らなかった」の声
  6. 中森明菜、“3か月ぶりのセルフカバー動画”登場でネット沸騰 笑顔でキメポーズの歌姫復活に「相変わらずオシャレで素敵」「素敵な年齢の重ね方」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. もう別人じゃん! 「コロチキ」西野、約8カ月のビフォーアフターが「これはすごい」と驚きの声集まる
  9. 娘がクッションを抱きしめていると思ったら…… 秋田犬を心ゆくまで堪能する姿が440万再生「5分だけ代わっていただけますか?」「尊いなぁ…」
  10. 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」