アニメ業界に新時代を 2人のアニメ馬鹿が「CHIKA☆CHIKA IDOL」プロジェクトに込めたメッセージ:「とある」シリーズ錦織監督の挑戦(3/3 ページ)
―― ライブシーンは動きが多くて作るのが大変ですよね。
本条 コストがかかりますし、演出も曲も必要です。どんなアイドルアニメでも毎回というのは難しいです。しかし「CHIKA☆CHIKA IDOL」の場合は、基本的に各話で誰かしらの新しいライブシーンを表現したいと思っています。
錦織 そこは歌やダンスもそうですし、会場の演出も含め、パフォーマンスを日常シーンと合わせてエンターテイメントとして見てもらいたいです。その一つの方法として3DCGを用いています。将来的には、より没入感のあるVRコンテンツへつなげることも視野に入れています。
本条 日常的なパートは、非常に親しみやすく現実的。ライブパートでは最先端の技術を使った、非日常的でファンタジックな映像を展開し、視聴者の皆が盛り上がれるようにしたいですね。この両パートのギャップを通じて、作品に幅をもたせられればと考えています。根底にある価値観はシンプルに二つだけ。「良い」と思った歌を皆でライブで一緒に歌うのは気持ちいいよね、というのが一つ。もう一つはアイドルを応援したい気持ちです。技術的な進歩を受け入れつつ、この二つの価値観をブレないようにしたいと思います。
錦織 作品として成功したら、VRコンテンツや初音ミクのようなリアル世界のライブなど、様々な技術・媒体にリンクさせることも考えています。
―― クラウンドファンディングでファンとつながり、さらに展開する媒体を多様化することで、そのつながりを深く、広くしていきたい。
本条 クラウドファンディングの良い点の一つは、お客様の声がダイレクトに届くことです。僕らが良い案を出せなかったらあまり支援も得られないでしょうし、出せれば盛り上がります。もしたくさんの企業・メーカーの資本が入っていると制作の自由が効かなくなり、クオリティー管理がずさんになるケースもしばしばあります。我々がコンテンツのクオリティーをしっかり管理する主体になって、ベストな形で世界に提供したいのです。
―― インターネットの登場以来、アニメファンとクリエイターの距離が、今だかつてないほど近いですね。
本条 作品とファンの関係性は少しずつ変わっていくと思っています。ファン投票やクラウドファンディングなどがあるように、皆でコミュニケーションを取りながら作品作りが展開されていくようになっていくのかなと思います。また一方で、ちょっとした失言やミスでインターネット上で酷評されてしまうかもしれません。そうしたリスクに怯えてしまう人も少なくないでしょう。でも僕らはリスクを承知で前に進むしかないと思っていて、炎上してまっ黒に焦げてもかまいません。僕は焼け焦げる覚悟でやっていますので、その姿すらも皆さんに楽しんでほしいです(笑)。
―― 今までにないコンテンツを生む可能性がある一方、緊張感がありますね。
本条 はい。また一方で、皆さんが気になっている懸念点の一つにアニメーターやクリエイターの低賃金や待遇の問題があると思います。日本のアニメ業界は、Blu-ray DiscやDVDの売り上げに左右される収益構造がぐらついているのも事実で、皆「どうにかしないといけない」と思ってはいるのですが、様子を窺って動けていないようにも感じます。そこで僕たちが最初のチャレンジャーになって、アニメ作りの新しいビジネスモデルに挑戦してみようかなと思いました。失敗したら仕方ないですが、良い作品ができれば世に残ります。「お金が本当にないのか?」と誰かに問われれば、正直ありません(笑)。僕ら二人のお金はクラウドファンディングのためのPVとマンガを作るのに使ってしまいました。だから僕らの考えを知って、「CHIKA☆CHIKA IDOL」という作品をワクワクして楽しみにして頂ける方には、できる範囲でサポートして頂けたら嬉しいです。皆さんの見たいアニメを作ろうと意気込んでいますので、これから信頼関係を少しずつ築いていきたいです。
―― 錦織監督は、本プロジェクトに関してどんなこだわりが?
錦織 ファンとの関係と同様にこだわっているのは、「商業アニメを作ること」です。ちゃんとプロフェッショナルなものを作る前提でやっています。そこでスタッフには、多くの若手を起用する一方、要所のポジションへ「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」や「TIGER & BUNNY」などの制作にも参加した信頼できるスタッフを配置しています。
―― 良い作品を生み出すために。
錦織 作りに対しては言い訳しないで、最高水準のものをファンに届ける。時代に応じて中身を発展させていく。そういった意味で純粋にファンとクリエイターのことを考えたプロジェクトです。クリエイターが直接支援を受けて、クリエイターが直接ファンへ発表する。これがアニメとファンの最終的なスタイルになっていくと思います。この形がうまくいけば、クリエイターへしっかり還元していくことができると同時に、ファンもクリエイターも声優も、皆が幸せになる仕組みになるんじゃないかと信じています。
Twitterアカウント:@chikachika_idol
英文記事:A New Era in the World of Anime: Two Anime Fanatics Send a Message with the CHIKA*CHIKA IDOL Project
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