萌えと宇宙は無限大? 女子高生×人工衛星の組み合わせにロマンを感じる「衛星研究部」:司書メイドの同人誌レビューノート
作者は、実在の人工衛星をかわいく擬人化させた「現代萌衛星図鑑」の二人。
日差しがすっかり暖かくなりましたね。3月は旅立ちの季節、新生活の準備をしている方もいらっしゃるでしょうか。「入学したらどんな部活動に入ろうかな」と、わくわく想像するのも楽しいですね。体育会系の部活で汗をかくのもいいかな、文化系で大好きなことに打ち込むのもいいかな。いろいろな部活があって悩ましいですが、こんな部活動はいかがですか? 女子高生たちが人工衛星を観測する「衛星研究部」!
今回紹介する同人誌
「衛星と学舎と境界線」(ホシとマナビヤとスカイライン) B5 28ページ 表紙カラー・本文モノクロ
著者:しきしまふげん(原案)、へかとん(漫画)
リアリティありすぎ! 夢の「衛星研究部」
衛星研究部とは、とある学園の女子高等部にある、地球の周囲をまわっている人工衛星から送られてくるデータを観測したり、お世話をしたりしている部活動。対象の人工衛星はかつて大きなプロジェクトに使われていたのですが、目的の観測を終えたことから、教育機関に払い下げられたもの。管制権を持つ大学の付属校なので、女子高生も観測や運用に携わることができるんですって! ここまでのお話で分かった人もいると思いますが実はこれ、ぜんぶ架空の設定なんです。
この同人誌は架空の女子高、櫻賀美(おうがみ)学園女子高等部の衛星研究部に集った女の子たちを描いた作品。大きなモニターの前に座る制服の女の子が、インカムできりりと指示をする様子を見て、「へー! こんな部活動があるのね」と納得しかけましたが……「いやいや、衛星を動かしている部活なんてないですよね!?」と我に返りました。実際は、「衛星を開発する部活動」を取材元にした、作者さんのオリジナル設定だそう。
女の子と人工衛星を熟知した作者さんによる匠の技の結晶
いかにも実在していそうなリアリティを感じるのは、あちらこちらに専門用語や人工衛星のイラストがちりばめられているから。難解な用語はやさしい言葉で解説され、図はかわいくデフォルメされていてとっても分かりやすい! 文系ひとすじの私でも、「ふむふむ、なるほど」と、滞りなく物語に入っていけるのです。
解説コラムでは「衛星は単体では役に立ちません。パートナーと呼べる施設“地上局(アンテナ)”が必要です」とさらりと書かれていたりして、「確かにデータを受け取るものが必要ですよね」と、いままでぼんやりと知っているつもりだった知識が、するする頭に入ってきます。
作者さんは、実在の人工衛星「小惑星探査機 はやぶさ」や「気象観測衛星 ひまわり」を女の子の姿で描くことで、その健気さと愛らしさで読者に幾多の涙をこぼさせた名著「現代萌衛星図鑑」のしきしまふげんさん(原案)と、へかとんさん(漫画)の強力タッグ。専門的な知識を、女の子のかわいらしさでくるんで、分かりやすく提示するその匠の技は、同書でもいかんなく発揮されています。
女子高生と人工衛星のマッチングの素晴らしさ
ふんわりしたタッチの丸っこいかわいい女の子と、「人工衛星」という無機質な響き。ちょっとミスマッチ? いえいえ、同作では、部員さんたちはただただ、きゃっきゃと部活を楽しんでいるのです。そこに、「実在しない部活」という違和感はありません。部員が少ないとか、活動場所が遠いとか……ちょっとした悩みや、それを越える楽しさが、ほのぼのと描かれています。それがとってもかわいい!
そして、人工衛星という、まだまだ日常では滅多にお目にかかれない物へのわくわくする気持ちと、初々しい学生さんの溢れるすがすがしさに共通するもの……それは「ロマン」です! 広い宇宙で活動する人工衛星と、これからどんな方向に伸びていくのか未知数な女学生さんたち……。一見、まったく接点がないような気がしますが、これらは「可能性」というロマンに満ち溢れたひとつの共通点があるのです。ゆえに、両者がマッチングしたときのきらめきと言ったら! 架空でありながら「こんな部活あったらいいな。いつかこんな部活動ができたらいいな」と楽しみになってしまうのです。新しい部活動を始める予定の方も、部活動から離れて久しい方も、「衛星研究部」でロマンを感じてみませんか。
サークル情報
サークル名:teardrop(てぃあどろっぷ)
Twitter:しきしまふげん(@shikishima)、へかとん(@hekaton100)
参加予定イベント:5月のコミティア、夏のコミックマーケット
連絡先:各TwitterまたはBlogのメールフォーム
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著者紹介
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