ポスドクたちのリアルな声に共感 研究者を応援する同人誌「月刊ポスドク」司書メイドの同人誌レビューノート

付録の「進捗ラムネ」が気になる。

» 2016年08月21日 11時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 「ポスドク」という言葉をご存じでしょうか。辞書を引いてみると、「ポストドクターの略で、博士課程を終了し、常勤研究職になる前の研究者」とありました。大学院で学んだあとも、専門機関などで研究を続ける方々ということですね。

 「白衣とか着ていらっしゃいそうでかっこいい!」と外から目線で憧れる一方で、さらに調べてみると、実情としては勤務先の多くが期限付きで、落ち着いた環境で研究を続けることができないかも……と、日本ではいろいろな問題も抱えている状態のようです。そんなポスドクさんたちのお役に立ちたいと発行されているのが、今回紹介する同人誌「月刊ポスドク」です。

今回紹介する同人誌

「月刊ポスドク2016年8月号(第5号)」 A4 28ページ 表紙カラー 本文モノクロ


同人誌「月刊ポスドク2016年8月号(第5号)」 明るくて元気な表紙の中で、くっきりしたクマにどきどきします。今号は非常勤講師特集です

ポスドクさんたちのリアルな手記を多数掲載

 今号の特集は非常勤講師。実際にポスドクの立場を経験した方々の手記が、詰め込み過ぎないすっきりとしたレイアウトで並んでいます。その内容は、「求職のチャンスはどこで出会ったか?」という最初の一歩から、教室で教えるための工夫、現場で着る服装まで、淡々とした書き方ながらも実に細やか。

 授業内容を身近に感じてもらうために、授業中にその場でスマホを使ってアンケートを取った事や、配布プリントは生徒が書き込むときに字がつぶれないように大きさに配慮するなど、本当にその場で困った事のある人だから出てくる体験談の数々。そのどれもが、「私はこんなことに困りました。次にあなたが困ったら、こんな方法がありますよ」と、まだ見ぬどこかのポスドクさんへのエールになっているのをひしひしと感じます。

同人誌「月刊ポスドク2016年8月号(第5号)」 今号から「頑張る研究者をまるっと応援するマガジン」へとサブタイトルが変わったそうで、目次からも多様なアプローチがあることを見ることができます

フィールドワークでひらめいたレシピや研究者のためのカフェ情報まで

 テーマ特集以外のページでは、「青瓜の炒め煮の卵とじ」というレシピが紹介されていました。マレーシアで現地調査していたころに作ってもらった料理をヒントにして思いついたレシピで、青瓜をにんにくと鶏がらスープで炒めて卵とじにするそうです。味の決め手はオイスターソース。ほんわかおいしそうですねえ。現地調査していた時のちょっとしたエピソードも添えられ、ほっとする読後感です。よかった……ポスドクさんがおいしいものを食べていて良かった……。

 さらに2016年7月にオープンしたばかりの「研究者カフェ」のレポートも。談話スペースと個別の電源があるデスクスペースを備えていて、オーナーさんは「研究を皆で共有する場であってほしい」と願われているとか。他にも自著のPRや、勉強会の告知をする広告コーナーもあったりと、研究する人たちをサポートするぺージが続きます。

同人誌「月刊ポスドク2016年8月号(第5号)」 文字情報がメインですが、A4サイズにゆとりをもってレイアウトしてあり、シンプルで読みやすいです

研究者さんたちに幸あれ!

 編集長さんはポスドクを経験し、今は民間の会社で研究員としてお仕事をされているとのこと。そんな方が拘られたのが「知へのアクセス権」。大学との関わりをやめてしまうと、論文雑誌へのアクセスができなくなるなど、大学にいたからこそ可能だった環境から離れざるを得なくなり、研究が進められなくなってしまう……という困窮が語られています。

 実は私は少しだけですが大学図書館で司書をしていたこともあり、そこでは学生、先生、講師と、それぞれの立場によって利用権限が違い、はっとしたことを思い出しました。今、必ずしもどこかの研究室に属していなくても、自分の知りたいことが分かるような環境を公共の図書館でも整えられたらなあ……と、ポスドクさんの体験から、司書としてのヒントをもらったようにも思いました。苦労も、楽しさも、とつとつと紡がれるポスドク語りに、「この想いを共有して、お互いに素敵な環境で研究できるといいよね!」という願いがたっぷりと込められている本です。


サークル情報

サークル名:TwiFULL Press

Twitter:@nanaya_sac@Kimihira0120@yearman@tasogarenoumi@gakeau@tsutatsuta

Webサイト:http://studio7839.net/?page_id=786

取り扱い:TwiFULL Press通販部(booth内)

連絡先:@nanaya_sac


今週のシャッツキステ

シャッツキステ 「月刊ポスドク」さんを手にしたらおまけがついてきました。その名も「進捗ラムネ」。黒のコースターは第4号につけられた活版のコースターです。かっこいい! 進捗どうですか、と気になりますが、あまり根をつめないで、お茶でもいかかですかー……と、メイドは深夜のお茶会の開催となったのでした

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた