“後日アップデートで対応”は免罪符になるのか 「ストリートファイターV」が酷評された理由と現状

発売直後からトラブルが相次いだ「ストリートファイターV」、現在までの経緯を振り返ります。

» 2016年10月13日 18時00分 公開
[イッコウねとらぼ]

 「ストリートファイター」シリーズの最新作「ストリートファイターV」。格闘ゲームの金字塔「ストリートファイター2」からジャンルをリードしてきた一大シリーズの最新作として、2月18日のリリース直後から現在に至るまで国内・海外を問わず大会が開催されるなど、世界的な注目を集めるビッグタイトルです。

 年末には数千万円規模の賞金を用意した公式の世界大会が行われることも予告され、大々的なPR活動を行った上で発売されたストリートファイターV。しかし、国内e-Sportsの先駆けとして注目を集める裏側で、Amazonレビューは星2つを割り込み、その他のレビューサイトでも酷評が相次ぐ状況となっています。長い歴史を持ち、人気の高いビッグタイトルにもかかわらず、なぜストリートファイターVはここまでの低評価になったのか――その理由は、発売直後から立て続けに起こったトラブルと「後日アップデートで対応」を前提とするメーカーの姿勢にありました。


ストリートファイターV Amazonレビューでは星1.9という状態(Amazonより

ストリートファイターV その他のレビューサイトでも低評価です(PlayStation mk2より


未完成状態での発売強行、対戦できない対戦格闘ゲーム

 数回のβテストを経てリリースされたストリートファイターVですが、発売直後からさまざまな問題が露見。中でも指摘が多かったのはロード時間の長さとネットワークの不具合です。細かい箇所で非常に長いロード時間が課せられた他、プレイヤー同士の実力を競い合う「ランクマッチ」では、対戦相手を募集しても数分から十数分待たないとマッチングしないため、ロード時間も含めると一度の対戦のために20分近くの時間を費やすことも(前作では数十秒から数分でマッチングしていました)。さらにはネット対戦が成立しても切断した場合のペナルティが一切無かったため、仮に勝利しても故意の切断によって実績が反映されないケースも多々発生していました。

 また、対戦が無事終了しリザルト画面に到達しても、そこで通信エラーが起こることもあったため、「ログインに成功してもマッチングのために十数分待たなければならず、仮に対戦に勝っても実績が反映されない場合がある」という状態に。ネットワークの不具合に関しては、フレンドとの対戦が行える「バトルラウンジ」のモードでも異常な頻度でエラーが発生しマッチングが非常に困難となっているなど、「ランクマッチ」以外の面でもさまざまな問題を抱えており、対戦する時間の数倍を待ち時間に費やさなければなりませんでした。

 そして、ネット対戦ができないというストレスに拍車を掛けたのが「CPU対戦未実装」の問題。通常の格闘ゲームでは必ず実装されているアーケードモードは実装されておらず、CPUとの対戦機能もなかったため、初心者層の練習に必須となる対CPUでの練習が事実上不可能になっていました(サバイバルモードやトレーニングモードのCPU設定では可能ですが、ルールが通常の対戦と大きく異なります)。また、メインメニューの項目「チャレンジモード」や「ショップ」は“後日アップデートで実装する”という状態になっており、ユーザーからは発売と同時に「未完成状態だ」「なぜこの状態で発売したのか」という批判が噴出することになりました。


ストリートファイターV CPU対戦は、発売から7カ月後の実装となりました

仮想通貨「ゼニー」の廃止と、PC版のマルウェア問題

 既に発売から4カ月近く経過した6月10日、“想定外の不具合”により仮想通貨「ゼニー」の廃止が発表(関連記事)。ゼニーは当初リアルマネーによって購入するものとアナウンスされており、2月に発売された限定版の特典としても配布されていました。廃止発表と同時に“ゲーム内で獲得できるもう1つの仮想通貨「ファイトマネー」に変換する”という補填内容も発表されましたが、ファイトマネーは獲得条件が比較的容易だったためユーザーは強く反発。中には消費者庁へ報告したことを示唆し、Twitterに割れたゲームディスクの画像を投稿するユーザーも現れるなど、物議を醸しました。

 また、9月に行われたアップデートでは、セキュリティ上の問題のあるファイルがインストールされるという不手際も起きました。これによって一部の環境でPC版の起動ができなくなり、一時混乱が広がることに。現在は対策がアナウンスされていますが、このことは多くのユーザーに失望感を与えたようです。

未完成状態で発売した理由と、絶賛するプロゲーマーの“ステマっぽさ”

 実は、発売直後に問題となったネットワークの不具合やロード時間の長さは、βテストの段階で幾度となく声があがっていたもの。ではなぜ、このような状態での発売を強行したのでしょうか。理由として指摘されているのは、莫大な賞金が掛けられた公式世界大会の出場権をめぐって争う「カプコンプロツアー」の存在です。



 このカプコンプロツアーは、世界各地で行われる大会の結果をもとに、年末に行われる莫大な賞金がかかった大会「カプコンカップ」に出場できるというもの。実際に2月18日のリリースにもかかわらず2月末にはカプコンプロツアーの大会が開催されました。世界中で好成績を残さなければならない以上、カプコンカップに出場できるのは過去の例を見てもプロゲーマーや、プロに近い立場の人ばかり。ほとんどの一般ゲーマーにとってカプコンプロツアーは無関係であり、開催する恩恵の大部分を受けるのはプロゲーマーであるため「プロを優遇する発売スケジュールだ」とする声もあがっています。

 一般のゲーマーからは批判が殺到していますが、プロゲーマー達の意見はむしろ本作を絶賛するものが多く、目立った批判はあがっていません。カプコンの公式企画に呼ばれる例も多く、影響力も強いプロゲーマーからすると問題を声に出しづらい点もありそうですが、メーカーを批判できないプロの「ステマっぽさ」と「一般ユーザー目線の欠如」に嫌悪感を覚えるユーザーもいるようです。

「ゲームとして」面白いのか

 ネットワークの問題、仮想通貨廃止、アップデート不具合など、多くの問題を抱えていた「ストリートファイターV」ですが、実はゲームのメインとなる「対戦」の部分については過去最高レベルの高い評価を得ています。読み合いや地上戦の駆け引きはシンプルでありながら非常に奥が深く、操作難易度を下げることでミスによるストレスを大幅に緩和。さらには(キャラクターデザインについては賛否両論あるものの)美麗なグラフィックや、荘厳な音楽なども高評価。ネットワーク周りの不具合も細かな課題を残すもののほぼ改善され、CPU対戦も9月末に実装し、現状は致命的な欠点が無い状態です。

 一方、「後日のアップデートで対応します」という言葉を乱用し、これまでのシリーズでつかんだファンが本作で離れていったのも事実。盛り上がりを見せるe-Sports業界ですが、今後ストリートファイターVが定着するかどうかは不透明と言えそうです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  2. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  3. /nl/articles/2412/12/news089.jpg フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/14/news081.jpg 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  5. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/14/news038.jpg 「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
  8. /nl/articles/2412/14/news063.jpg 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  9. /nl/articles/2412/14/news002.jpg 【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
  10. /nl/articles/2412/15/news024.jpg おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」