「お客さんが来れば来るほど赤字になります」(店長談) 890円の刺身食べ放題がおいしすぎて安すぎた
「赤字覚悟」じゃなくて、本当に赤字だった。
神田駅前にオープンした「刺身食べ放題890円」の店が話題になっている。店の名は「大和屋 音次郎」。40分でお刺身を好きなだけ食べられるのだという。それも安物の刺身ではない。食べられるのはいずれも脂の乗った旬の魚のみ。「普通に食べたら5000円分、たくさん食べるお客さんなら1万円分くらいはいくかもしれないですね」とは店長の三上淳司さん。なんということか……! 一体どのようにして採算をとっているのだろう。詳しい話を聞く前に、お刺身をいただくことにした。
店の入り口にはツヤツヤといい色をした魚がでかでかと置かれている。
ビュッフェ形式で刺身を好きなだけ取る仕組み。列に並んで早速刺身を取りに行く。
刺身以外にも、あら汁に酢飯、そしてさまざまなおかずが用意されており、こちらも食べ放題。残したら罰則金が発生するため、何をどれだけ食べるかは胃袋との相談だ。
かんぱち、さわら、まぐろ、ねぎとろ、づけを一枚一枚、口に運ぶ。どれもうまみと甘みのぎゅっと詰まったお刺身だった。
1皿目をぺろりと平らげ、2皿目へ入る。今度はづけを多めにとり、づけ丼にしてみた。周囲を見てみると、右も左も私と同じようにまぐろなどをご飯の上に乗せて楽しんでいた。
写真を撮りながらゆっくり食べていると、2皿を食べ切ったところで時間切れ。ほかのお客さんも40分間で大体2皿、多くて4皿といったところ。終了時間が近づくと、店員さんが残り時間を教えに来てくれる。ちなみに、追加料金を払えば延長も可能だ。
この刺身食べ放題は現在は1日先着100人限定で整理券制。毎朝10時から配布される整理券を目当てに連日人が押し寄せ、早い人では8時ごろから並んでいるのだそう。ちなみに、11月頭にオープンしたばかりのころはあまり人が来ず、あるお客さんのTwitterでの投稿が拡散されたことで、200人以上もの行列ができるようになった。先着100人限定の整理券システムになったのもそのときから。店長の三上さんいわく、「正直、お客さんが来れば来るほど赤字になってしまうから、100人限定にしたんですよ」とのこと。そう、この破格の食べ放題、採算はどうなっているのか気になっていたが、なんとまったくもうかっていないのだ。
「このままじゃ潰れちゃうかもしれません。どうしましょうね〜。ははは(笑)」とのんきに笑う店長三上さん。魚の話になると「いいものしか仕入れません」と急に眼光が鋭くなる店長三上さん。「お昼の食べ放題で知って下さったお客さんが夜の通常営業にも来ていただければ」と願う店長三上さん。頑張れ店長三上さん!
朝井麻由美(@moyomoyomoyo)。フリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。雑誌やWebでコラム連載多数。近著に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。ゲーム音楽と人狼と麻雀が好き。
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