市川猿之助「近くて遠い存在」 映画「花戦さ」で能楽師・野村萬斎との共演に喜び
歌舞伎役者と能楽師のコラボレーション。
6月3日から全国公開の映画「花戦さ」の公開直前記者会見が5月29日、有楽町の東京国際フォーラムで行われ、主演の野村萬斎さん、市川猿之助さん、中井貴一さん、佐々木蔵之介さん、佐藤浩市さん、高橋克実さん、山内圭哉さん、和田正人さん、森川葵さん、吉田栄作さん、篠原哲雄監督が登場しました。
原作は鬼塚忠さんの小説「花いくさ」。織田信長が本能寺で倒れ、豊臣秀吉が圧政を敷いた16世紀後半、華道を極めた天才花僧・池坊専好が、命を賭して花の力で世直しを挑んだ姿を描いたエンタテインメントでポップな時代劇です。
池坊専好を演じた野村萬斎さんは「渾身こめて演じさせていただきました。最初はちょっとけったいな男から最後は秀吉に勝負を挑んでいくという非常に濃い時間を体験した思いがございます。実際には十数年の間ですが、人生の半分を生きることができたような、濃密な映画。随分と面白おかしくも真剣に演じさせていただきました」と冒頭あいさつ。
歌舞伎役者である猿之助さんとの競演については「番組で対談したことはありましたが、共演は初めて。とても楽しみでした」と話し、「僕とのシーンも素晴らしいのですが、佐藤浩市さんを踏みつけるシーンは憎々しさが楽しいし(役として)嫌な奴がこんなにチャーミングに見えるというのは、本当に素晴らしい秀吉でした」と絶賛しました。
秀吉を演じる猿之助さんは「素晴らしい大先輩の胸を借りてお芝居をできたことは、私の歌舞伎役者としての幅を広げてもらって、大変経験豊かな時間を過ごさせていただきました。能と歌舞伎は近くて遠い存在。同じ伝統芸能だが、共演はほぼあり得ない。映画という舞台で図らずも共演できたことは非常にうれしかった」と歌舞伎と能、日本の伝統芸能を引っ張る第一人者同士の競演に感慨深げな表情を浮かべていました。
その秀吉に頭を踏まれ、自害に追い込まれる茶人・千利休を演じる佐藤浩市さんは「古典芸能の方々は型というところで芝居ができますが、今回、僕の頭を猿之助くんに踏んでもらうシーンで、僕なんかは圧がかからないとできないんで、猿之助くんに『もっと踏んで! もっと踏んでっ!!』と、違う風に捉えられちゃうかと思いますがお願いしました」と撮影時のエピソードを披露し会場を沸かせると、猿之助さんは「大先輩の佐藤浩市さんの頭を踏んづけるとかホントに嫌で、なんでこんな役を……と思ったんですけど、役だからしょうがないですよね。本当にいい経験をさせていただきました」と、佐藤さんとの印象的なシーンについて振り返りました。
専好の幼なじみの町人・吉右衛門役の高橋克実さんは同作が初の時代劇。「私だけ羽二重なしの“地頭がつら”という着脱が本当に簡単なカツラで演じさせていただきました。羽二重にすると、目が釣り気味になって表情にいくらか制限があるんですが、私のみ、表情の制限はございませんでした!」と明かし、さらに「映画の見どころは、どこを切ってもきれいな映画、和の文化、あとは地頭がつら。この3つ」と話して会場を爆笑させました。
同作でメガホンを取った篠原哲雄監督は「日本文化の基礎となったころの話ができた。文化がいかなる力を発揮するのかということが皆さんの心の中に伝わっていく映画になったと思います」とコメント。信長役を演じた中井貴一さんは「こんな時代の中で、人間がもうちょっと賢く芸術や文化を使って平和になれる道が、この映画の中に潜んでいると思います」と話しました。
同作に登場する200瓶を超える「いけばな」は、発祥555年を迎える池坊が監修。茶道は表千家不審菴、裏千家今日庵、武者小路千家官休庵の三千家が協力しました。日本の伝統文化の協力と伝統芸能の第一人者の競演、そして映画界を代表する俳優のコラボレーションで日本映画史に新たな歴史を刻む、映画「花戦さ」は6月3日から全国公開です。
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入院・手術のため、6月の博多座と7月の歌舞伎座を休演するとしています。
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