コラム
» 2017年09月14日 19時50分 公開

公開から23年 なぜ私は8年間、月1で映画『レオン』を見てしまうのか

「大人になっても人生はつらいの?」に何と答えよう。

[のとほのか,ねとらぼ]

 孤独なプロの殺し屋が少女と出会い、初めての愛を知り、“生きる希望”を見つけていく映画『レオン』。23年前の今日、フランスで公開された。日本公開当時のキャッチコピーは“凶暴な純愛”。私は、初めて見た高校2年生の夏から25歳になった今でも月に1度は見ている。単純計算しても96回。

 この話をすると大抵周りに引かれるが、私にとってはもはやそれが日常で、月に1度やってくる女の子の日のような感覚だ。それでも周りがあまりにドン引きするので、「同じ映画 繰り返し見る」で検索したら「病気」がサジェストされたときはさすがに焦った。


Leon - Bande annonce

LEON 好きすぎる レオン(画像はYouTubeから)

 麻薬組織に家族全員を殺されたマチルダ(ナタリー・ポートマン)が、隣室に住む殺し屋のレオン(ジャン・レノ)に助けを求め、共同生活を送りながら復讐(ふくしゅう)を決心するというストーリーはあらためて語るまでもないと思う。監督であるリュック・ベッソンだけでなく、ナタリー・ポートマンやジャン・レノの評価を確実にした作品といっても過言ではない。今でも名作の1つとして名前を挙げる人は多いし、Twitterのアイコンをマチルダに設定する人も後を絶たない。私もやった。

大人になることへの抵抗

 私が初めて同作を見たのは高校2年生の夏。クラスメートが卒業後の進路をそろそろ真剣に考え始める時期にもかかわらず、私はといえば、「まだ子どもでいたい」「自由がいい」「遊んでいたい」などの気持ちをどう消化すればよいか自分でもよく分からない、一言で言えば遅れてやってきた思春期の真っただ中にいた。

 自分が周りより子どもで、周りは自分より大人だと感じることに息苦しさを覚えながら、特に期待せず見た完全版『レオン』(劇場公開時はカットされた22分間の未公開シーンを加えたもの)は、私の心にしみこんできた。

 イタリア系移民として19歳でニューヨークに渡ったレオンは、マフィアのボス殺し屋として育てられた。頼まれた仕事は完璧にこなす。そこに一切の感情はない。ただのロボット。でも、仕事終わりには映画館のど真ん中で『雨に唄えば』を食い入るように見たり、唯一の友だとする観葉植物を愛でたりと、少年のような姿を見せる。体は大人、心は子どもな逆コナン。私も大人になりたくないと変化を恐れ、無駄な抵抗を見せる子どもだった。レオンともども、自立できないでいた。

LEON マチルダ マチルダ(画像はYouTubeから)

自立心の芽生え

 しかし、そんなレオンがマチルダに出会ったことで次第に成長していく。その姿が分かる3つのシーンがある。

 1つ目は、麻薬組織に1人で乗り込んだマチルダを助け出し、2人で抱き合う足元のアップのシーン。レオンに抱きつくマチルダの足は宙に浮いているが、レオンの足はしっかりと地を踏みしめている。鉢植えの観葉植物を「根が地面についてないことが自分と同じ」としてきた彼が自分の居場所を見つけたように感じさせるシーンだ。

 2つ目は、女にしてほしいと愛を告げるマチルダに、レオンが涙ながらに初めて自分の過去を語るシーン。ここでは少女から女になろうとするマチルダと、大人になれなかったレオンの繊細なやりとりが描かれている。大の大人と少女が交す愛の言葉は当時としては刺激的で、それ故に劇場公開時はカットされ、同作が“ロリコン映画”とやゆされることがある一因でもあるのだが、レオン自身が過去と向き合い、マチルダに受け入れられたことで存在意義を見つけることができる大切なシーンである。

 3つ目は、ラストの惨殺シーン。ゲイリー・オールドマン演じる本当に憎たらしいラスボスと決着をつけるまでの過程で、それまで冷徹な殺し屋として仕事を遂行してきたレオンが、マチルダを守るためだけに感情をむき出しにする。子どものままだったレオンが見せた愛情表現は、まさに“凶暴な純愛”。世の中を多少知った今でこそ不器用だなとも思うが、ピュアすぎて何度見ても感動してしまう。今こうして書きながら泣けてくる。

LEON 凶暴な純愛 ラストの惨殺シーン(画像はYouTubeから)

 冷徹な殺し屋の内に隠れていた1人の少年が少女と出会い、人知れずアイデンティティーを見つけていく姿は、大人と子どものはざまで不安定に揺れる私の背中をものすごい力で押して、背筋をぐんっと伸ばした。結果、私は「進学」ではなく「就職」という選択をするのだが、自立した感覚になったことが何よりもうれしかった。

 その後も、ことあるごとに同作を繰り返し見てきた。高校を卒業して、就職して、地元から東京に上京して、転職して、いろいろな変化があったが、心が「そろそろ」と感じたら時と場所を問わず見返してきた。そして、鑑賞後に思うことはいつも同じ。何かが変わりそうな気になる。背中をものすごい力で押して、背筋をぐんっと伸ばしてくれれるような気になる。

LEON (画像はAmazonから)

 その間、冷徹な殺し屋はドラえもんの格好をしてしまうほど丸くなってしまったし、大人の女になりたいと告白した少女も今では2児の母となった。私はといえば、平和に満員電車に揺られて出社している。大人になるとはどういうことだったのか、あの頃の感覚を取り戻したくて『レオン』を見返している。

 先月、また1つ年を重ねた日に見た『レオン』は、やはりとても居心地が良かった。なぜ、こんなにも忘れたくない気持ちを喚起してくれるのだろう。公開から23年たっても色あせない魅力、これぞ名作だと思う。

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