「問おう。あなたが私のヒロインか?」 セイバーと間桐桜を相対させてみた
「劇場版 Fate / stay night [Heaven's Feel] I.presage flower」の公開が迫る中、セイバーと桜のフリーダムな会話をお楽しみください。
主人公・衛宮士郎の後輩、間桐 桜を通じ聖杯戦争の真実に迫る「Fate/stay night」第3のルート[Heaven's feel]が劇場版アニメ化され、10月14日に公開されます。
2004年発売のPCゲーム「Fate/stay night」を原作とし、2014年にはテレビアニメ「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」(通称:凛ルート、以下[UBW])が放送されましたが、通称「桜ルート」の[Heaven's feel](以下[HF])は全三部作の劇場アニメ。第一章の公開を記念し、AbemaTVでは[UBW]が9月16日から一挙独占先行放送されています。
「Fate/stay night」の物語全体を語る上で欠かせない[HF]の劇場公開を前に、ねとらのではシリーズ第1作からヒロインのセイバーを演じる川澄綾子さんと、間桐 桜を演じる下屋則子さんに「Fate/stay night」の魅力をあらためて聞いてみました。
―― 「Fate/stay night(以下、Fate)」は、ストーリー性だけでなく、戦闘をはじめ多くの魅力的な要素があるかと思いますが、お二人が「これぞFate」と思うのは?
川澄 1つに決めるのは本当に難しくて、なかなか「これぞFate」と言えないんです。聖杯を巡ってのバトルもそうですし、士郎との関係もそうだし。
下屋 セイバーは特にそうですよね。ほとんどのキャラクターが聖杯戦争をきっかけに物語が描かれていますけど、桜だけが聖杯戦争前から士郎とのつながりがあって、それぞれ思うところは違いますし。
川澄 則ちゃんだと一番は?
下屋 すごく悩むんですけど、「これぞFate」というのならやっぱり聖杯戦争はありきで、後はそれぞれのキャラクターの願望や欲望だったりかなって。
川澄 そうですね。聖杯戦争がなければ、セイバーは士郎と出会っていないわけですし。セイバーにとっては、召喚されたからこそ物語が始まり、「問おう。貴方が私のマスターか」というせりふから全てが始まります。7組のマスターとサーヴァント、そしてそれを取り巻く全ての「Fate」の世界に出てくるキャラクターは、聖杯戦争の始まりと共に動き出すので。
―― [Fate]、[UBW]、[HF]と異なる特色がありますが、それぞれのシリーズに関してはどういう印象ですか?
川澄 これも則ちゃんは全然違うんじゃない?
下屋 全然違います(笑)。[Fate]、「セイバールート」は本当に王道というか、ベースとなる「Fate」の世界じゃないですか。[Fate]をやらないと[UBW]ができなくて、その2つをやらないと[HF]ができなくて、分岐していますけど、全てを知らないと最後までたどり着かないのが大事。いきなり[HF]だとヘビー過ぎますよね(笑)
川澄 [HF]をやらないと「結局、聖杯とは何なのか」など、物語の根幹に関わる謎も分からないですし。でも、それぞれの特色は確かにありますね。「セイバールート」は始まりにして王道で、ボーイミーツガールのような面もありますよね。
下屋 そうですね。[UBW]は、男の戦い、かな(笑)。男性キャラクターがとにかくカッコいいですよね。で、また士郎とアーチャー。
川澄 視点を変えると士郎の目指すものの違いを追うストーリーでもありますね。
下屋 主人公が確かにね。[Fate]と[UBW]では正義の味方にこだわって……。
川澄 「セイバールート」だと正義の味方という理想を追い求めていて、セイバーと出会い変化するところもあるけど、まだその理想にとらわれてて。でも[UBW]でそれを昇華できて……。
下屋 そうですね。[UBW]はそこがフィーチャーされてますよね。
川澄 でも[HF]で、「正義の味方って何!?」ってなるっていう(笑)。士郎の理想や思いの変化も面白いところだと思います。
下屋 同じ聖杯戦争を巡る話でも全く違いますよね。特に[HF]は。だからこそ[UBW]を一挙放送していただけるのがいいなって。[UBW]を見てから[HF]を見ると打ちのめされちゃうんじゃないかなと。
―― それぞれのシリーズ(ルート)は士郎が「どのヒロインを選ぶか?」によって分岐するかと思います。お二人が演じられたキャラクターにとって、士郎はどのような存在ですか?
下屋 桜にとってはやっぱり初めて自分の居場所を感じられた、安心する場所や普通の幸せを教えてくれた、なくてはならないような存在だと思うんです。
川澄 どのルートでも士郎への思いが変わらないのって、桜だけなのかな、と思います。セイバーだと、「セイバールート」は、士郎を愛することになって士郎にも愛されてますけど、[UBW]ではそこは描かれなくて、あくまでマスターとサーヴァント。もちろん、士郎はセイバーが大事だし、セイバーも士郎が大事なんですけど恋愛感情ではないかもしれない。あまり言うとネタバレになってしまうのですが、[HF]の関係も最初は同じ。だから各シリーズで士郎への印象が全然違うんです。それは演じていても面白いところですね。
下屋 ただ、桜は聖杯戦争があってもなくても士郎への思いは変わらないんですよね。
川澄 むしろ聖杯戦争がなかった方が。
下屋 聖杯戦争によって壊されていくので(笑)。そこは大きな違いですよね。他のキャラクターは自分のメインのルート、セイバーなら[Fate]で恋愛関係になるじゃないですか。じゃあ桜は[HF]でハッピーになれるかというと……どちらかというと壊れていく話じゃないですか。
川澄 他のルートで桜の気持ちや置かれている状況は描かれていないですけど、[Fate]でも[UBW]でも、ずっとこうだったんだって理解するとより桜の境遇がつらすぎる、と思ってしまいますね。
下屋 [HF]では桜がフォーカスされていますけど、他のルートでは出演していても本当に最低限しか出てこないじゃないですか。でもどのルートでも裏にある事情は一緒で、[HF]で初めて桜の事情というか本当の桜を知る方は、もう一度[UBW]を見直していただくと、あの日常の裏ではお義兄さんとおじいさんにあんなことされたりとか、蟲蔵(むしぐら)に入ってたり。そういうことが本当はあるんだなって感じて頂けると思います。
川澄 [UBW]の最初のころ、桜は以前から衛宮家にご飯作りに来ていて、でも後からセイバーが来て、さらに凛が来て、桜があたふたしてるシーンがあるのですが、セイバーと凛が来ることで、桜が衛宮家から帰った先に待っているものはって視点を持つと……、本当に「桜、帰してごめん!」ってなりますよね、[UBW]を見ると。
下屋 衛宮家に居させて!
川澄 居させて! もう一人ぐらい居候しても良かったのに(笑)。印象に残っているのが、セイバーが来ちゃって桜がちょっとすねるじゃないですか。でも、本当はあんなにかわいくすねるどころじゃないのにって。他の女の子が寝泊まりするのが嫌だとかそういうレベルの話じゃないですよね。それを知るとつらい(笑)。それが包み隠さず全体に出ているのが[HF]。
下屋 そうなんですよ。でも多分、聖杯戦争のことを知っているから、セイバーを見た時点で……。
川澄 そんなこと考えたらもう大変ですよ。間桐 桜ってそういう子なんですよみたいな。怖い(笑)。
下屋 (笑)。
川澄 本当に、いろいろなスピンオフ作品で、桜がちょっと面白く重い感じで描かれることが多いんですけど、本当はそんな笑いにしちゃいけないぐらいなんだなって思うと……。ごめんね、笑いながら言って。
下屋 いいんです。それはそれで(笑)。
―― キャラクターではなく、お二人からして、士郎はどう思いますか? 魅力的だと思う部分や直した方がいいと思う部分は?
川澄 ルートによって受ける印象が違うと思うんですよ。「セイバールート」は、セイバーと士郎のマスターとサーヴァントの関係性が最初は上手く築けなくて。士郎がライダー戦の前にセイバーを呼ぶシーンの前後で印象が全然違うんです。セイバーを演じているときは、最初の闘いのときとかに「戦っちゃダメだ」とか言われると、「もう〜そのために来たのに!」とか思っちゃう。
下屋 特にほら、女の子扱いされるじゃないですか。でもセイバーは女の子として育てられてきていないし……。
川澄 セイバーの過去を知っていると「どれだけの思いを抱えて聖杯戦争に来てると思ってるんだ!」って思ってしまうので。士郎はそうなってしまう理由があるとはいえ、見ていて危ういし痛々しいところがありますよね。切嗣から受け取ってしまった「正義の味方」の呪いもそうですし、背負っているものが重すぎるので。そこが魅力的な部分でもあるんですが。
下屋 実際に士郎みたいな人がいたら心配にはなると思うんですよ。
川澄 そう。だからこそ、桜の意見を聞いてみたい気がする。
下屋 私は桜目線でずっと見てきたので。ただ、私、個人的に好きな男性のタイプが、いざというときに守ってくれる強さがある人なんです。だからずっと士郎の正義感あふれるところや、困っている人を見たら助けてあげたいと思う優しいところとかすてきだなって思い続けてきたので。ただ、自分をもうちょっと大事にしてほしいかな。
川澄 確かに。人の嫌がることを引き受けたり、自分の命を顧みずに他人を助けたり。セイバーも言っていますが、正義の味方になるという志はとても素晴らしい。ですが、自分のことを全く考えない、というのは異常ですよね。その士郎のゆがみはセイバー自身のことにもつながる。だからセイバーは士郎に反発しながらも引かれるのだと思います。
私自身が士郎がすてきだなと思うのが、3人ヒロインがいるけど、ヒロインの間で揺れないじゃないですか。各ヒロインでストーリーが違うのもあるんですけど。
下屋 1つのルートでですか?
川澄 例えばどのルートでもセイバーは常に士郎の側にいる。でもそのルートのヒロインのことを1番に考えてる。もちろん、セイバーのことを大事に思っていて、尊敬し合える関係を築いているのですが、八方美人じゃないところとか、自分が守るって決めたことから決してブレないのは、男らしいな、すてきだなって思いますね。
―― 士郎愛されている……。彼以外で魅力的だと感じる男性キャラクターをもう一人挙げるとしたら?
川澄 私はエミヤです。何かもう士郎と一緒になっちゃってますけど(笑)。私の中で、[UBW]をやった後ではエミヤと士郎を一緒に考えてしまうことが多くなってしまって。エミヤのあのありさまは悲しすぎるんですけど、[UBW]の最後でもしも1つの希望が見えてエミヤにならない未来があるなら……。と思うのですが、なかなか難しいみたいで。
エミヤになっても、その先に希望があればいいな、と最後の笑顔を見て思います。でも、士郎が自分の信じた道を行った先が地獄だとしても、それを貫こうとしているエミヤはすてきだなと思いますし、最終的に士郎に敗れてよかったなって思います。
下屋 私、この質問すっごく難しくて……。
川澄 お爺様(間桐臓硯)でもいいよ? 桜はあまり他の男性キャラクターとは関わらないよね。
下屋 そうなんです(笑)。
川澄 それは則ちゃんが言うならアリだよ! 私がおじいさまとか言ったらダメだけど(笑)。
下屋 キャラクターとしては、お兄さんもお爺様のことも好きです。[HF]でいよいよ登場するということもありますし、ここは本当に推していきたいところではあるんですけど(笑)。
川澄 でも私、[UBW]を見て格好いいなと思ったのはランサー。
下屋 分かります。ランサーは皆が好きですよね。[UBW]では一推しです。
―― それでは最後に、AbemaTVで一挙放送される[UBW]、劇場公開される[HF]の見どころをあらためて教えてください。
川澄 [UBW]は衛宮士郎という男の子が義父から受け取ってしまった「正義の味方」という呪いをどう自分のものにして乗り越えていくのかというお話で、士郎のバトルシーンはとても見応えがあります。
アーチャーの無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)のシーンは映像も迫力がありますし、さらに士郎がそれを自分のものにしてギル(ギルガメッシュ)に立ち向かうシーンなど、胸が熱くなるようなバトルシーンがたくさんあります。女性はもちろん、男性も男同士の熱いバトルなど、少年漫画的な要素もあるので、楽しんで頂けると思います。
下屋 [HF]はマスターの話も多いと思うんですよ。だから他の2つのルートで明かされなかった真実が明かされていきますし、それまでの伏線も拾っていくじゃないですか。なのでぜひ[HF]で、聖杯とは何なのか? 「Fate」の全貌を見届けてほしいです。
AbemaTVでの「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」放送スケジュール
- 「Fate/stay night [UBW]」独占先行放送カウントダウンSP
- Fate/stay night [UBW] 一挙放送 第2部(#8〜16):9月23日19時から。翌日9時からも放送
- Fate/stay night [UBW] 一挙放送 第3部(#17〜25):9月30日19時から。翌日9時からも放送
※各一挙放送終了後、翌週月曜日から振り返り放送実施(各日22時/27時から)
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