「だまされたふり」で逆にだまされる 巧妙化するオレオレ詐欺、最新の手口を解説
終わらないいたちごっこ。
これだけ新聞やテレビで報じられているにもかかわらず、親族をかたってお金をだまし取る「オレオレ詐欺」がいまだに後を絶ちません。今回は、そんなオレオレ詐欺の最新の手口をご紹介します。
※警視庁が定めた新名称「母さん助けて詐欺」も存在しますが、この記事では広く普及していると考えられる「オレオレ詐欺」を採用します。
オレオレ詐欺とは
そもそも「オレオレ詐欺」とは、主に高齢者に対して電話をかけ、家族などになりすましてお金をせびる手法のことです。
「電話番号を変えた」「会社の電話を使っている」「風邪気味でのどの調子が悪い」などの偽の口実を使って、被害者の息子や孫、夫になりすましてきます。
要求してくるお金はたいていの場合かなりの高額ですが、その理由には以下のような話が使われます。
- 交通事故を起こして、示談金が必要になった
- 会社の小切手が入ったバッグをなくした
- 会社のお金で株を運用していたが、証券業者に持ち逃げされた
- 不倫相手を妊娠させてしまい、中絶費用が必要になった
- 友人の借金の保証人になった
- 賃貸の物件を破損して、リフォーム代金を払わなければならない
- 上司が本を出版するので、その費用を援助する
「上司の出版費用」などはなぜ払わなきゃならないんだ、という話ですが、これも実際に被害が報告されている事例です。いかにも緊迫した雰囲気を醸し、疑いを持たせる前に事を進めてくるケースがあります。
お金の受け渡しは、電話でATMに誘導して振り込むよう操作させたり、友人や上司、会計士をかたる人物が代理で現れたりすることが多いようです。
進化する手口
最近出てきている手の込んだケースをご紹介します。
多くの人物が次々に電話を代わってくる「劇場型」ケース
電話がかかってきたときに、警察や弁護士をかたる人物が電話を代わってきて、お金を要求してくることがあります。専門家を装って「示談金を払ってください」などというわけです。
また、電話の向こうから電車や車が通る音がしたり、痴漢を口実にしている場合は被害者の家族が電話を代わるなど、複数人で状況を作り上げてきます。
「だまされたふり作戦」を逆手に取ったケース
警察は詐欺グループの撲滅のため、だまされたふりをした一般人を使って、お金を受け取りに来た犯人を捕まえることがあります。俗に「だまされたふり作戦」と呼ばれるものです。
この作戦は一定の成果を挙げていますが、これを逆手に取り、架空の作戦をでっち挙げる犯行が出てきています。
ある事件では、80代の女性にニセモノの甥(おい)から「交通事故を起こした」と電話がありました。この女性は本物の甥に連絡し、一度はニセモノであることを見抜きました。
ところが、そのあとに警察官を名乗る人物から電話があり、「受け取りに出てきたところを逮捕するので、現金を犯人に渡してくれ」と頼まれます。言葉を信じて自宅前で現金を渡してしまったあとは、警察官とも犯人とも会うことはなく、100万円も戻ってきませんでした。
こんなところに注意!
詐欺かどうかは、ちょっと調べればすぐに分かります。すぐ振り込んでしまう前に、たった1分で明暗が分かれるので、どれだけ緊迫したことをいわれても以下を念頭に行動してください。
本物の息子や孫の「元の番号」やメールに連絡してみる
「電話番号が変わった」という口実が使われることが多いです。必ず、「元の番号」が使えなくなっていることを、実際にかけて確認しましょう。また、メールやLINEなど、別の手段で連絡を取ってみると、話の食い違いに気付けます。
相手はなりすました人の情報をたくさん持っている
詐欺は単独犯によるものもありますが、近年では多くがグループによる犯行です。こうした詐欺グループは、名簿などを不正に入手して、名前や電話番号以外に、卒業した学校や同級生などの情報を得ていることがあります。より個人的な、本当に家族しか知らないような話をしてみましょう。
複数人が出てくることもある
警察や弁護士をかたる人物がお金を要求してくることもありますので、必ず相手の所属先などを確認しましょう。また、事件や裁判でお金が動く場合には、(たとえ現行犯などであっても)書面が発行されます。書面がないまま、お金を出してしまわないように。
また、電話で「104」にコールすれば電話番号案内につながりますので、かかってきた番号や教えられた番号が本物かどうかもすぐに確認できます。
「だまされたふり作戦」に本物のお金やカードは使わない
だまされたふり作戦は、実際に警察が行っている作戦ではありますが、その際には警察が用意した偽物の紙幣やカードが使われます。「犯人逮捕に協力を」といわれると出してしまいがちですが、本物のお金やキャッシュカードを受け渡してはいけません。
紹介したのはあくまで代表的なケースで、ほんの一部です。普段からこうした知識を持っておき、家族間で共有しておくことで、いざというときにも落ち着いて対処することができるでしょう。
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