今までのプリキュア映画とは540度違う? 「映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリっと!想い出のミルフィーユ!」レビュー:サラリーマン、プリキュアを語る(2/3 ページ)
ジャン=ピエールさんが面白キャラだった
今回の映画のために用意されたのは「ジャン=ピエール・ジルベルスタイン」という「キラ星シエルの師匠」という位置付けのキャラクターと、クックという謎の妖精キャラ。
とにかくですね。
「ジャン=ピエール・ジルベルスタイン」というキャラクターが一風変わったものすごい個性のキャラクターなのです。
映画を見るまでは「クールなイケメンキャラ」なのかな? と思っていたのですけど、いざ実際に見てみると「エキセントリック・おバカお兄さん」(褒め言葉)だったのですよね。
最初にこのキャラクターが出てきた瞬間に「あ、この映画、こういう方向性なんだ……」と悟りました。
このジャン=ピエールが今回の物語のカギを握っているのですが、それを感じさせないレベルでエキセントリックな行動をとるので、シリアスなシーンでもあっというまに面白シーンに変えてしまうのです(それは賛否あるかと思います。シリアスな場面はシリアスで行ってほしいと個人的には思いますが、子どもはきっと面白シーンの方が喜ぶでしょう)。
ただ、スイーツ作りに対しても「バカ正直」なキャラで、一途にスイーツ作りにかける情熱はシエルの師匠というだけはありました。もっともそのスイーツ作りにかける情熱がトラブルの元になるのですけどね……。しかし最後の最後までスイーツのことしか考えない、筋の通ったキャラクターでした。
シエルの物語
今回の映画の主役は「キュアパルフェ」こと「キラ星シエル」。
先述のジャン=ピエールとの師弟関係が描かれます。
単純な師弟関係ではなく、シエルが一方的に師匠と呼んでいるだけで、ジャン=ピエールの方はそれを容認している感じでしょうか。
シエルは決してジャン=ピエールの行動を全面的に信頼しているのではなく「スイーツ作り」という1点のみ全幅の信頼を寄せている、という「微妙な師弟関係」が良く描けていたのではないかと思います。
終盤、シエルがジャン=ピエールにお説教にも似たアドバイスをするのも、この微妙な師弟関係あってのこそですよね。
そう。まさに今回の映画は「キラ星シエル」の物語だったのです。
シエルが何を思いジャン=ピエールを師と仰ぎ、何を思いスイーツを作り、何を思いパリを出て、何を思いイチゴ坂に来て、何を思いプリキュアに変身することになり、何を思い再びパリの地に戻ってきたのか?
そのシエルの成長を、一度キラリンの姿に戻すことで成長の再認識を行い、想いの集大成を「想い出のミルフィーユ」という形で仲間と一緒に仕上げる構成も面白かったと思います。
ストーリー的にはネタバレ避けるために深く言及できませんが、
「1人よりも、仲間と一緒の方が大きな力が出る」
「誰かのために作るスイーツには、とてつもないパワーが込められる」
といった、キラキラ☆プリキュアアラモードが普段からテーマにしていることを劇場用にリファインした感じでした。
いわばテレビアニメで普段やっていることを「超豪華にして、いつもより楽しさを倍増させた」お話だったと思います。
このあたりの映画とテレビでの主張のブレなさは、製作体制がしっかりしていることの証だとも思います。
ただ1つ。
今回のお話はキラ星シエルと、ジャン=ピエールと、妖精クックの3人の「会話で」ストーリーが進行するので、残りのプリキュア5人は「置かれた状況を処理するのに精いっぱい」な感じが少しだけありました。
ストーリーだけを見れば「映画キラキラ☆プリキュアアラモード」というよりも「映画キラ星シエルとジャン=ピエール」みたいな感じでしょうか。
しかしその分、5人のプリキュアは「普段と違うアニマルプリキュア」になって、場を盛り上げました。
この、事前に情報が解禁されていた「いつもとは別の動物形態になるプリキュア」。
視聴前は、てっきり「顔見世程度に少しだけ出てくる」だけかと思っていたのに、がっつり、この形態での戦闘シーンがありました。
しかも、それぞれの特性と個性を生かした戦い方で「個性が違えば役割も違う」というキラキラ☆プリキュアアラモードのテーマにも直結させて、それでいてきっちりと「楽しい」戦闘シーンに仕上げたのがさすが土田監督、と思いました。
亀になったキュアホイップは亀ギャグ(?)をしますし、ペンギンひまりはパタパタとかわいい動きをしますし(しかも水中泳いで大活躍!)、ナマケモノあおいは今までと違ったあおいちゃんが見られてすてきです。
パンダゆかりは相変わらずゆかりさんですし、何と言ってもあきらさんのザリガニ姿が見ものです。あきらさん、ザリガニになってもやっぱりあきらさんなのですよ。ザリガニあきらさんの決め技は、子どもたちが劇場で大笑いしていました。
また、ラスボス周りは、深く掘り下げるととんでもなく「重い」お話になりそうなので、この程度あっさりしていた方が明るく終われて良いと思います。ラストの締めも良かったと思います。
最後の最後、エンドロールでの仕掛けも楽しかったです。びっくりしました。
魔法つかいプリキュア!も出演するよ
今回、秋映画としては初の試みとして過去作「魔法つかいプリキュア!」のキャラクターが出てきました。
きちんとセリフもあり、パリに来た理由も描かれ、戦闘シーンもありました。
この「まほプリ組」、ものすごく効果的に作用していて、まほプリ組の個性もきっちりと描かれつつも、決してプリアラ組のメインストーリーを邪魔するものでもありませんでした。
こういった演出はきっと小さなお子様も大喜びだったのではないでしょうか。
事実、自分の見た映画館でも魔法つかいプリキュア組が出てきたときは、子どもたちがものすごく盛り上がっていました。
(余談ですが、大きなお友達の一部界隈(かいわい)では、キラキラ☆プリキュアアラモードの映画なのに魔法つかいプリキュアのキャラが出てくるとは何事だ! 整合性がとれないじゃないか! 世界観が!! みたいな意見も(少数)あるようですが、このレベルならば何も問題ないと思いますし、そんなもの子どもの笑顔の前には無効ですよね)
おそらく、今後もこういたクロスオーバー的な演出は増えていくものと思われます。
それはプリキュア映画にとって、とても良いことだと自分は思います。
ミラクルライトの使い方がすてき
今回の映画では「ミラクルライト」を使用する場面が1回ではなく、複数回用意されていました(これは今作だけではないのですが、特に今作はミラクルライトを振る場面が意識的に多かったように思います)。
「妖精の短編映画」のときに1回(これは本編でミラクルライトを振るための練習を兼ねているものと思われます)。
本編では、プリキュアがピンチのとき、プリキュアが「あるもの」を作るとき、最後のスタッフロールが流れているときなどでミラクルライトを使用します。
子どもたちへのミラクルライトへの誘導もスムーズで、子どもたちを積極的に「物語に参加させよう、楽しませよう」という想いがここにも表れているようでした。
みんな、例年よりも大きな声で元気にミラクルライトを振っていたのが印象的でした。
まだ、見ていないあなたへ
今回の「映画キラキラ☆プリキュアアラモードパリっと!想い出のミルフィーユ!」は「とにかく楽しい映画」でした。
お子様をお持ちのお母さん、お父さん。ぜひ子どもと一緒に劇場に足を運び、一緒に笑ってください。
12年間プリキュア映画を見てきた自分から見ても、ここまで「楽しさ」に特化した映画は初めてだと思います。きっと家族全員で笑って劇場を出ることができると思います。
大きなお友達にも、もちろんおすすめです
「楽しさ」に特化している、とはいえストーリーの根幹にはシエルとジャン=ピエールの関係、ジャン=ピエールとクックの関係を通して「大好きを伝えることの意味」「1人よりも仲間と一緒の方が力が出る」「それぞれの個性を大事にしよう」といった王道のプリキュアイズムがあふれています。
巨大な敵にプリキュア全員で立ち向かったり、ピンチになったら仲間が駆け付けたり、終盤パワーアップして羽が生える、といったプリキュア映画の定番シーンも、もちろん用意されています。
「いつもと違う楽しいプリキュア」と「いつもと同じ熱いプリキュア」が何層にもなって、まさに「ミルフィーユ」のような作りになっている映画なのです(おお! なんかうまいこと言った気がするぞ! 気がするだけか!)。
とにかく、
「映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリっと!想い出のミルフィーユ!」は、
キラキラ☆プリキュアアラモードのテーマである
「つくって、たべて、たたかって」
を劇場で再構築した、とてもとても「楽しさにあふれた映画」なのです。
何度でも言いますが、本当に、本当に、楽しい映画なのですよ。
今週末、僕も3回目の鑑賞に出向くとしましょうか。今度はあのシーンに注目しようかな。見るたびに新しい発見があるのですよね。
子どもたちの笑顔も、たくさん見られるといいな。
週末興行成績動員数ランキングで第1位に
2017年10月30日、公開初動2日間の成績が発表されました。
公開土日2日間(10月28日、29日)の興行成績は、観客動員数17万659人、興行収入1億9310万1900円。週末興行成績動員数ランキングは第1位です。
昨年公開された「映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!」(興行収入6億7000万)と比較して、動員比122.3%/興収比119.4%と絶好調なスタートを切ったようです。
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