「来世で会いましょう」彼女は最後にそう言った―― ネトゲで起きたボーイミーツガールを描く漫画がせつない

最後のセリフを「来世で会いましょう」と決めた競作企画の1編。物語は多様な解釈ができますが、どうとらえても悲しい……。

» 2017年12月19日 17時00分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 『おじさんとマシュマロ』で知られる漫画家の音井れこ丸さんが、pixiv(「トイレ籠」名義)で実験的な作品「High Quality Smile」のネームを公開しました。オンラインゲームの世界で起きたボーイミーツガールを描く、せつない物語。

※19日20時20分追記:初掲載時、作者様の名前が誤って「龍」となっていました。お詫びして訂正いたします。

1P

2P リアルでの不穏なせりふから、舞台はネトゲの世界へ

 「俺はずっとだまされてた」「好きだったのに……」と、始まりは主人公の少年が現実世界で放った不穏な言葉から。そして舞台はネトゲの世界へ移り、少年がある女性型アバターと出会ったころの思い出が描かれます。


3P

 彼女は決して上手でもなく、口数も少ないプレイヤーでしたが、遊ぶ時間がかぶっていて一緒に遊ぶのが楽しく、少年は意気投合。彼自身は恋愛感情ではないと述べていますが、「プレイに有利だから」と言い訳めいた物言いで、ゲーム内で結婚までしています。


4P

5P

6P 少年自身は否定していますが、どことなく恋愛感情が見られるやりとり

 しかしある日、少年は気付いてしまいます。彼女がゲームの世界から抜けると必ず、引きこもり中の自分へ食事が届けられることに。彼女の正体は母親で、自分を更生させようとゲーム内で接触していた……? そんな疑念が湧き起こり、少年は落胆してしまいます。


7P

8P

9P もしかすると、相手がネカマだったほうがまだマシかもしれない

 ところが、真実はもっと別のところにありました。女性アバターの正体にして、食事を運んでいたのは、少年の幼なじみの少女だったのです。少年の母親は既に他界しているのですが、常にVRゴーグルを装着して仮想世界に没入している彼は、現実世界の状況をまるで把握しておらず、彼女を母親だと思い込んでいたのでした。


10P ホクロの位置がアバターと同じ。幼なじみの少女は、少年の父親に頼まれて世話をしていたのでした

11P

12P 「それに私……」に続く言葉は何だったのだろう

 幼いころ、少年と一緒に写った写真を眺めながら、少女は再び仮想世界へ。「あんた、中身……母さんだろ」と少年に問いただされると、「もしそう思うなら、また来世で会いましょう」と答え、ただ空を見上げるのでした。


13P

14P 物語は意味深長な言葉で締めくくられる

 コメント欄には、仮想世界に浸るあまり、現実の声が届かない少年の姿に悲しむ声が多数。少年が母親の死を知らないのではなく、受け入れられなくて仮想世界に逃げているとの解釈も見られます。最後のせりふ「来世で会いましょう」についても、「既に亡くなった母親とは来世でしか会えない」「少女は少年に好意を抱いているけれど、仮想世界から戻ってこない彼とは今生では結ばれない」といった多様な解釈が生まれています。

 同作は音井さんが漫画仲間と雑談中に提案した、「締めのセリフを『来世で会いましょう』にする縛りで漫画を描く」競作企画から生まれた1編。編集部が発想の原点を聞いたところ、参加した仲間にも楽しんでもらおうと、「オチのせりふが分かっていても読めない展開」を狙い、仮想現実をフィーチャーしたとのことです。既に母親が死んでいたという設定は、「来世」というどうしても死につながる言葉を使いながらも、死の瞬間は描きたくないとの思いから生まれたのだそうです。

 競作には『あしあと探偵』の園田ゆりさん(関連記事)や、『ヤングチャンピオン烈』で『えっちすけっちわんたっち』を連載中の玉置勉強さんら8人が参加。おのおのが異なるシチュエーションの漫画を描き、「来世で会いましょう」で結んでいます。


画像提供:音井れこ丸(トイレ籠)さん

(沓澤真二)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/31/news019.jpg “部屋が汚すぎて”彼氏に振られた女性→1人孤独に片付けを続け、600日後…… まさかの光景に「感動しました」
  2. /nl/articles/2501/29/news009.jpg 高校生のときに出会った“同級生カップル”→「親に頼らん!」と必死に貯金して…… 19年後、現在の姿に反響
  3. /nl/articles/2502/01/news088.jpg 「痩せた」 大谷翔平、“最新ショット”に驚きの声 “寝ぐせ”にツッコミも……「うわ凄い絞ってる」
  4. /nl/articles/2501/28/news188.jpg 「やられたな」 ベトナムで「FUJITSU」だと思って購入した家電→“衝撃の正体”に思わず戦慄
  5. /nl/articles/2502/01/news039.jpg 生え際後退で老けて見える25歳男性、プロが大胆カットしたら…… 「不可能を可能にした」「35歳から15歳に」大変身が740万再生【海外】
  6. /nl/articles/2501/30/news026.jpg 普通の折り紙1枚を、パタパタ折っていくと…… プレゼントにぴったりな美しいアイテム完成に「すげぇつくりたい」「かわいい」
  7. /nl/articles/2501/31/news041.jpg 水道検針員から直筆の手紙、確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生→大反響から1年たった“現在の様子”を聞いた
  8. /nl/articles/2502/01/news008.jpg 【ハギレ活用】「もう最高……」 着物のハギレをリメイク→わずか30分で“すてきなアイテム”が完成! 「私にもできそう」
  9. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  10. /nl/articles/2501/31/news215.jpg 「こういうの大好き」 ユニクロ“3990円パジャマ”が発売前から話題騒然 「最高」「シンプルで良い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議