「カタカナは20文字だけ」「没アイテムで宝箱がカラッポに」 ファミコンハードの限界に挑んだ制作者たち(2/3 ページ)

» 2018年01月07日 12時00分 公開
[辰井裕紀ねとらぼ]

 メモリーにくわれて、イベントがトブよりイイんじゃないかなと思って、タイトル画面とタイトル曲をけずったんです。もし、けずらなかったら、ドラクエ3のロゴマークにアニメーション処理した画面がでてくるハズだったんです。

 でもこれを取ったおかげで、町3つ分とイベントを組み込むことが出来たんだ。

 今回も原稿は4メガ分あったのに、使えたのは2メガ分。

<出典:『ドラゴンクエスト3マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>

 海外版には収録されている、その幻のオープニングがこちら。ドラクエというよりも、別のアクションゲームのようなシュールな時間が流れる映像ですが、ついつい見入ってしまいます。


海外版には幻のオープニングシーンも流れる

「ドラクエ3」でカットされた幻のオープニング(YouTube
火山で魔物と戦うオルテガ
魔物ともみあって最後は火口の中に……

すぎやまこういち、秘技で「1音」を「3音」に見せる

 ファミコンの同時発音数は3(ノイズを含めば4)。それほどに手足を縛られた状態でもすぎやま氏はあの「序曲」をはじめ名曲を生み出しましたが、ドラクエ3になって使った秘技が「分散和音」でした。

 同時発音数の少ないファミコンでは、音の厚みがなくなりがち。そこで例えばサブメロディパートを使って、32分音符単位で「ドミソドミソ……」と素早く音階を変えて鳴らすと、ふしぎなことに、1音でドとミとソの和音感が生まれたのです。

 この手法は通常戦闘曲「戦闘のテーマ」と、洞窟の曲「ダンジョン」で用いられ、音数の少なさを感じさせない、重厚なハーモニーが実現しました。


ドラクエ3にヨーデルが流れるスイスの村があったが、消滅!

 そんな軽やかなテクニックで音数の問題を乗り越えたすぎやま氏ですが、お蔵入りになった曲が多くありました。

 あれでも何曲かカットになってるんだから、できた曲が。たしか、3曲ばかりオクラ入りしてますよ。(中略)今だから言うけどね、スイスの楽しいヨーデルの曲があったの。でもスイスの村ごと音楽もなくなっちゃった(以下略)

<出典:『ドラゴンクエスト4マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>


ボスなのに「通常戦闘曲」だったバラモスの専用曲もカットされた

 この他、“ボスキャラなのに通常戦闘曲”になっている「バラモス」には、実は彼専用に作っていた曲がありましたが、こちらも容量の問題でお蔵入り。さらに、主人公の父親・オルテガの戦闘シーンも通常戦闘曲になってしまいましたが、すぎやま氏はここだけは「レクイエムを流すべきだった」と悔やんでいるそうです。


不遇のコマンド、「おいのりをする」

 ドラクエ2、3ともに一時は採用されながらも、けずられたコマンドがあります。それは教会で行う「おいのりをする」というもの。

 Q.開発途中の画面を見ると(教会に)「おいのりをする」とゆーのがあったのですけど、このコマンドを実行するとどんなことになるハズだったんですか?

 (前略)これも、メモリーの関係で、しかたなくけずられているんだ。おいのりをすると、ちょっとイイことがある、ハズだったんだ。具体的に何が起こるかまでは、ちょっと教えてあげられないんだけどね。

<出典:『ドラゴンクエスト3マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>


ファミコンの容量節約伝説 2でも3でも採用されなかった、悲劇のコマンド「おいのりをする」(『ファミコン通信』1987年7月10日号より)

 なおドラクエ4で「おいのりをする」はようやく採用されたものの、当時の役割とは違う「セーブ機能」として扱われています。


「反転」を多用してメモリを稼いだ、スーパーマリオブラザーズ

 ドラクエと来れば、もう1つの国民的ゲーム、任天堂のマリオシリーズも忘れてはいけません。何せ「スーパーマリオブラザーズ」は40KB。こちらも相当な節約を強いられています。

 例えばクリボー。彼は2足歩行で自然に歩いているように見えますが……実はこれ、単なる1つの画像。アニメーションをさせるには最低でも2つは必要なのに……なんと「左右を交互に反転させる」ことで、歩いているように見せているのです。歩きを自然に見せるため、クリボーの体は少し斜めになっているとか。(参考:『ファミコンの驚くべき発想力 ―限界を突破する技術に学べ』/松浦健一郎・司ゆき/技術評論社)


ファミコンの容量節約伝説 画像を交互に反転させれば、歩いているように見える

 なんでもクリボーは最後に生まれた敵キャラだったため、使えるパーツがほとんど無く、苦肉の策としてこのようなチャレンジが行われました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/08/news177.jpg イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  2. /nl/articles/2411/06/news180.jpg 「むりだろww」「笑いました」 ニトリでソファ購入 → 愛車の前でぼうぜん…… “まさかの悲劇”が1000万表示
  3. /nl/articles/2411/07/news182.jpg 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  4. /nl/articles/2411/07/news163.jpg 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. /nl/articles/2411/05/news138.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  6. /nl/articles/2411/08/news132.jpg peco、息子の近影を公開「すごーくりゅうちぇるに見えます!」「パパに似てる〜」 息子のスクールランチも色とりどりでおいしそう
  7. /nl/articles/2411/08/news143.jpg 高嶋ちさ子、3000万円超の“超高級外車”ゲットにドヤ顔も! 笑い止まらずハンドル握り「Woohoo!!!」
  8. /nl/articles/2411/07/news029.jpg 50代主婦が5日間、ひたすら草抜き&庭木の剪定→たった一人でやり遂げたとは思えないビフォーアフターに称賛の嵐 「尊敬する」「本当に脱帽です」
  9. /nl/articles/2411/08/news025.jpg 「そうはならんやろ」クルマ修理会社の壁を見ると…… まさかの“シュールすぎるイラスト”に9万いいね 「よすぎる」「天才か」
  10. /nl/articles/2411/08/news111.jpg 2人組ガールズユニット、突然の脱退を発表 マネージャー「本人の意思ではない」 母親とする人物からの脱退理由と経緯説明が物議
先週の総合アクセスTOP10
  1. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  2. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  3. 結婚相手を連れてくる妹に「他の人に会わせられない」と言われた兄、プロがイメチェンしたら…… 「鈴木亮平さんに見えた」大変身に驚がく
  4. 「2007年に紅白出場」 38歳になった“グラビア界の黒船”が1年ぶりに近影公開→驚きの声続々
  5. 「クソビビったwww」 ハードオフに38万5000円で売っていた「衝撃的な商品」が90万表示 「売った人突き止めたい」
  6. 夫婦喧嘩した翌朝の弁当を夫が作ったら…… “森”すぎるビジュアルに「インパクトすごい」「最高に笑いました」の声
  7. 約9万円の「高級激レアガンプラ」を10時間かけて制作→完成品に「家宝だ」「めっちゃくちゃにかっこいい!!」
  8. 天皇皇后両陛下主催の園遊会、“お土産”に注目 ジョージア大使「大好物です」「娘たちからも大好評」
  9. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  10. 事故で重体の人気日本人TikToker、1カ月の意識不明と家族ケア経て逝去……“旅立ち直前に会った”親友は「励ましに来てくれてたのかな」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた