読むのがつらくなる「ダメな文章」の特徴とは? マネしちゃいけない「ダメ文の書き方講座」(3/3 ページ)
指示内容が分からない 〜「それ」「その」「これ」「この」はなにを指示するのか?〜
わたしは勤務先で、文章表現に関わる授業を担当しています。これは主に1年生・2年生を対象としたもので、大学生として必要な文章表現能力を身につけてもらうための内容です。半期の授業を終えたところで最終レポートを出してもらうのですが、中には「ひとつひとつの文はそんなにダメでもないのに、文章全体を読むとよく分からない」、不思議なレポートに出会うことがあります。
どうにも分からないので、「なぜ、分からないのか」と視点を変えて読み直してみたところ、あるポイントが浮かんできました。そのひとつが、「不明な指示内容」です。まずは、以下のサンプルを読んでください。
報道によれば、昨年度の家計における年収および貯金の額の平均値は、昨年度より向上しているという。わたしはそれを確認することにした。
さて、この「それ」は何を指示しているでしょうか? 「報道(の事実)」でしょうか、それとも「昨年度の家計における年収および貯金の額の平均値」でしょうか、はたまた「昨年度の家計における年収および貯金の額の平均値は、昨年度より向上(したこと)」でしょうか。
この文章の場合は、おそらくあとの文章を読んでいけば、「それ」の示す内容は分かります。が、「それ」の内容が分からない状態で文章を読み続けるのはストレスがかかります。
このように、「それ」などの語が示す内容が曖昧だと、読み手には負担がかかります。それでも上の例のように、指示内容がシンプルな場合はまだ負担も軽いものです。一番困るのは、指示内容が多くの文脈を含む場合、そして指示語が層をなすように用いられた場合です。
ダメ文章のポイント
- 「それ」などの指示語を、内容が不明確になるように使用する。
- 複数の指示語を複雑に使用する。
以上、3回に渡って、ダメ文とダメ文章の書き方を見てきました。もちろんこれらは、比較的分かりやすいダメ成分で、実際には説明することすら難しいダメ文・ダメ文章もたくさんあります。それらのダメ成分をうまく抽出できたら、またご報告したいものです。
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