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» 2018年05月12日 11時00分 公開

「透けちゃダメなものを、あえて透けさせた」 BANDAI SPIRITSがたどり着いた「常識外れのプラモデル」開発秘話(前編)(1/4 ページ)

「『プラモデルにできること』を広げたい」。

[しげるねとらぼ]

 3月28日の発表以来、大いに話題を集めているBANDAI SPIRITSの新たなプラモデルシリーズ、「Figure-riseLABO」(フィギュアライズラボ)。「これまでのフィギュアやプラモデルでは実現できなかった表現を研究し、実現に向けて進化させていくプロジェクト」と銘打ち、価格や商品内容や表現において、プラモデルとフィギュア双方の特性を併せ持ったキットを展開していくという。その第一弾が、「ホシノ・フミナ」である。


Figure-riseLABO ホシノ・フミナ

 第一弾キットの研究テーマが「肌」。皮膚の表層となる肌色のプラスチックの層の下にピンクやオレンジの芯の部分をインサートし、芯の色を透けさせることで、まるで塗装したかのようなグラデーションのある肌表現を部品段階で施すというものだ。



 つまり「塗らなくても、パーツを切り取って組んだだけで、市販の塗装済み完成品のようなキットが完成する」という商品なのである。発表時に話題を集めたこのキットが、5月10〜13日開催の第57回 静岡ホビーショーでいよいよユーザーにお披露目される。

 そこで今回は、静岡のバンダイホビーセンターを訪問。Figure-riseLABOの企画担当である西村悠紀さんと、設計担当である山上篤史さんにお話を伺った。

 フミナ先輩のキットには、言うのは簡単ながら実現までに膨大な時間がかかった肌表現の苦労、BANDAI SPIRITSならではの発想とその根幹にある技術、そして「プラモデルにできること」を広げたいという情熱が複雑に絡まりあっていたのである。


静岡にあるバンダイホビーセンター。一見ショールームだけど、中身は工場なのだ
今まさにフミナ先輩フィギュアを生産している成型器。型の部分の構造は当然極秘である
左が西村さん、右が山上さん。西村さんが企画担当で、山上さんは実際の設計を担当している

そもそも、なんでこんなことをやろうと思ったんですか?

――いきなりの質問なんですが、このFigure-riseLABOというシリーズが誕生するきっかけは、どのようなものだったんですか?

西村:最初に前提について話すと、われわれが年々「何か新しいことをできないかな」と考えるのは通常業務なんです。Figure-riseLABOの一段前として存在していたのが「Figure-riseBust」(フィギュアライズバスト)というシリーズなんですけど、これもそういう試行錯誤から生まれた商品です。この時は塗装済みフィギュアでしかできなかったようなキャラクター表現を、気軽にプラモデルで作れないかと思って始めたんです。


Figure-riseBust ホシノ・フミナ(バンダイ ホビーサイト

――組み立て式の高精度な女の子の半身像、という商品形態でしたね。

西村:それを何個も出してきたんですけど、その中で「このシリーズのゴールって何だろう?」と考えると、やっぱり色が塗ってある完成品フィギュアなんですよね。

 昔はバンダイでもラムちゃんとかガンダムのキャラクターのプラモデルを出してたんですけど、もうちょっと時代が経つと出来が良くてそれなりに価格も安いPVCフィギュアが市場的にメインになってしまったんです。で、そういう「出来が良くて買いやすい」という方向にプラモデル側からアプローチできないかなと思ったのが、Figure-riseLABOを始めた理由ですね。

――内容面でPVC製の完成品に迫れるようなプラモデルを出せないかという話になったわけですか。

西村:そうです。プラモデルである以上、塗装されている完成品には表現の面でかなわない部分があるわけです。ゲート(※)の跡や肌の色とか……。そこを改善したいという考えがあって、アニメみたいな質感にするにはどうすればいいかという企画を何個も検討してたんですよ。その中で上がってきたのが「肌の色を成形段階で再現することで、より高みを目指せないか」という案で、それならできるんじゃないかと。

※ゲート:プラモデルの部品が周囲の枠とくっついている、一段細くなっている箇所。組み立ての際に切り離す必要があり、ここの断面を綺麗に処理すると見栄えがよくなるとされている

――「プラモデルであること」が根底にあったんですね。

西村:そうですね。今回はプラモデルでできるフィギュア的な成形の技術を追求したかった。「Figure-riseLABO」というシリーズ名をつけたんですけど、やっぱりフィギュアが作りたかったわけではなくて、プラモデルの成形技術を深めて進化させたくて、その出力結果がキャラクターのプラモデルという形になったという順番です。この先未来に向けてずっとみんなにプラモデルで遊んでもらうためには、技術はもっと高めていかなくてはいけないので。

――あ〜、だから「ラボ」だったわけですか。

西村:新しい技法を開発して、開発しただけではなくてやはり商品としてのアウトプットが必要です。「今回の研究結果のアウトプット」という形でこのフミナ先輩が生まれたというのが、企画側の意図ですね。「フミナ先輩のフィギュアがほしかった」とか「女の子のフィギュアが作りたかった」というわけではなくて、技術を高めていく流れの中で生まれた出力物という感じです。

――あくまでトライアルの結果なわけですね。

西村:「ラボ」のシリーズ名はそういうコンセプトを分かりやすく伝えるためにつけたものなんですよ。

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