「キャラクターをどうやって三次元に連れてくるか」 BANDAI SPIRITSが挑む、次元を超えた“変態技術”(後編)(4/5 ページ)

» 2018年05月13日 11時00分 公開
[しげるねとらぼ]

山上:通常のキットなら、設計担当者も金型担当者も、なんとなくこれまでの経験則で「ここにこれだけゲートがあればこう流れるだろう」という予想はつくんですけど、今回は全くやったことがない構造だったので、みんなの期待を悪い意味で裏切る結果ばかり出ましたね……。

西村:金型に樹脂を流して、何秒か待って、冷えて固まったら完成なんですけど、パーツが巨大すぎて冷えるまで何秒かかるのかも分からないんですよ。普通のガンプラなら大体目安があるんですけど、これだけパーツが厚いと全然分からない。だから樹脂を流す時間、流す温度、冷やす時間というのを何度も調整してやっとここまでたどり着きました。

山上:肌の赤みの表現に目が行きがちですけど、そもそもこの厚みの物を成形するということ自体が割と珍しいんですよ。これだけ厚いと、冷える時に縮みますし。そこも調整が必要でしたね。

――こんなプラスチックの塊みたいな部品、普通は作らないですよね。

西村:少なくともプラスチックモデルで抜くことはないですね。普通だったら塩ビとか使いますから。一回下地のオレンジの部分を打ったあと、もう一回それが溶けるほどの温度の肌色のプラスチックを流さなきゃいけないんで、それでまた形がずれてしまうという……。

――そっか。下のプラスチックがずれたり溶けたりしちゃうんですね、これ。

西村:全部じゃないけど、若干溶けてます。下地のオレンジの上に肌用のプラスチックを流し込むと、どこかに溶けやすい位置と溶けにくい位置が発生して、それによってオレンジの部分がどれくらい溶けるかが変わってくる。

山上:でも、オレンジの部分のゲートはこの脚の内側の位置にしか作れないという制限もあるわけです。目立っちゃうので。

西村:成形についてご存じであればご存じであるほど、いかに気の遠い作業か分かっていただけるかと……。

――さぞかし大変だったろうとは思っていましたが、そこまでとは……。

山上:本番用の型ができるっていわれた、その予定日から2週間くらい調整し続けましたからね。何回データを直したことか……。もう、樹脂が誰も想像していない動き方をするんですよ。顔とかでも、下から赤みが透けているということは、ピンクの層と金属の型の間の間隔がものすごく狭くなるわけです。で、そこに樹脂を流し込むためには、高温の樹脂を普通より高圧で押し込まないといけないんです。

西村:それだけの高圧をかけると、下地の層が完全に溶けちゃったりとか、下地の部分が大きくずれてオレンジの部分が外に出てきちゃったりとか、そういう事故が起きます。金属と金属の間にプラスチックを流すならノウハウはたくさんあるんですけど、金属とプラスチックの間にプラスチックを流し込むとなると全然分からないので……。

――話を聞いてるだけでゲンナリしてきました……。

山上:これ、打ち始めと量産したあとで樹脂の流れ方にブレがないか見ないといけないんですよ。だから最初に抜いたやつと30個めと50個めと……というふうにサンプルをたくさんもってきて、それをおっさん5〜6人が眺め回すわけです。フミナ先輩の脚を。で、一回切断して断面にどう樹脂が流れたかを見ないといけないんですね。だからフミナ先輩の脚をぶつ切りにしたものをみんなで眺め回していることになってしまって「この光景はやばいな……」と思ってました(笑)。

――単純に考えて、これ脚も胴体もムク(※)だから使ってるプラスチックってすごく多いですよね?

※ムク:中空ではなく、中身まで樹脂が詰まっている状態。通常は外側部分のみをパーツにするところだが、フミナ先輩はインサートした下地を透けさせる必要があったため、胴体も脚も樹脂で埋める必要があった

西村:そうなんです……。だから持ってもらうと分かるんですけど、このキットって重いんですよ! だから樹脂量もかかるわ加工費はすごいわで、お金はかかってますよ。胴体と脚以外の部分も、普通のガンプラでは考えられないような樹脂量でパーツの厚みをつけてるんで。

山上:間違えたのかなってくらい重いですよね。僕ら自身も作ってる途中に素でびっくりしてました。

西村:正直ちょっと引いてました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  2. /nl/articles/2412/20/news034.jpg 「博物館行きでもおかしくない」 ハードオフ店舗に入荷した“33万円商品”に思わず仰天 「これは凄い!!」
  3. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. /nl/articles/2412/20/news050.jpg 「マジかーーー!」 新札の番号が「000001」だった…… レア千円を入手した人が幸運すぎると話題 「555555」の人も現る「御利益ありそう」「これは相当幸運」
  5. /nl/articles/2412/20/news148.jpg 浅田真央、男性と“デート” 驚きの場所に「気づいた人いるかな?」
  6. /nl/articles/2412/20/news016.jpg 身内にも頼れず苦労ばかりの“金髪ギャルカップル”→10年後…… まさかまさかの“現在”に「素敵」「美男美女でみとれた」
  7. /nl/articles/2412/18/news144.jpg 海岸で大量に拾った“石ころ”→磨いたら…… 目を疑う大変貌に「すごい発見!」「石って本当にすてき」【カナダ】
  8. /nl/articles/2412/18/news047.jpg トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  9. /nl/articles/2412/15/news077.jpg 生後1カ月の保護子猫、後頭部を見るとあのアルファベットが……→9カ月の現在にびっくり 「プレミアム猫」「本当にPですね」
  10. /nl/articles/2412/19/news190.jpg 辻希美、17歳長女・希空に「ダサすぎるって」とツッコんだ格好 
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」