プリキュアが結び付けた2人――福原遥×戸松遥の化学反応がすごいコラボ曲はどのように生まれたのか聞いてみた
It’s Show Time!!
テレビ朝日で4月から放送中のドラマ「声ガール!」の主題歌「It’s Show Time!!」が5月23日にシングルリリースされました。
歌っているのは、福原遥さんと戸松遥さん。ドラマでは福原さんが声優の知識も経験もないのに声優を目指すようになる主人公・菊池真琴を、戸松さんは本人役で登場し真琴にアドバイスする先輩後輩のような関係を演じています。
ドラマは放送開始15周年のアニメ「プリキュア」シリーズとコラボしたもので、劇中には「プリキュア」シリーズの名場面や懐かしいキャラクター、決めぜりふなども登場。福原さんは2017年放送のアニメ「キラキラ☆プリキュアアラモード」でキュアカスタード(有栖川ひまり)を、戸松さんは2014年放送の「ハピネスチャージプリキュア!」でキュアフォーチュン(氷川いおな)を演じましたが、そんな“W遥”のコラボレーション楽曲について2人に話を聞きました。
「声ガール!」はいろいろなタイミングが重なった奇跡のようなドラマ
―― 4月から始まったテレビドラマ「声ガール!」は、テレビ朝日が新設したドラマ枠「ドラマL」の第1弾です。アニメ「プリキュア」シリーズとコラボし、声優にフォーカスした斬新な内容ですが、出演されているお二人はこのドラマにどんなイメージをお持ちですか?
福原 声優さんにスポットを当てたドラマというのはこれまであまり聞いたことがなかったですし、プリキュア15周年でコラボして、私たちもユニットを組ませていただいて主題歌も歌わせていただくなど本当に全てが初めてのことで、こんなの見たことないというドラマですね。
考えてみると、「声ガール!」はたくさんの方に楽しんでいただける作品ではないかと思います。小さいころからプリキュアを応援してくださっている方だったり、アニメが好きな方だったり、声優に憧れている子どもたちだったりと幅広い年齢の方に届けられたらいいなと最初に思いました。
戸松 いろいろなタイミングが重なった奇跡のようなドラマですね。「プリキュア」シリーズが15周年という節目にできた企画でもありますし、そのタイミングで私と遥ちゃんが出会えたのも本当にいろいろなことが重なってここにつながって。
声優をやっていなければ、あるいはプリキュアに出ていなければこの作品に出ることはなかったと思うので本当にありがたい機会だと個人的にも思います。声優という職業を描いたドラマが注目されるという時代の変化も感じますし、それだけここ最近で声優が世の中から注目されつつあるのだなとあらためて感じられて、それがすごくうれしく誇りに思える機会でもありましたね。
―― 戸松さんは声優という立場からドラマの製作にアドバイスを求めらることもあったのではないでしょうか。
戸松 はい。ドラマの撮影に入る前に、基本的なことでもいいから業界のあるあるな用語を教えてもらえないかということで、監督さんをはじめスタッフさんたちとお話しする機会があり、私が経験したり見聞きしたものからお話させていただきました。
他の共演者の方などにもヒアリングされたようですけど、そうしたものから共通していた要素をうまくすくい取って再現してくださっていて、「ガヤ」という存在だったり、オーディションで名前を覚えてもらったり、ガヤやモブで「いい声してるね」って認めてもらったりする話が反映されていて、ドラマを見ていても「リアルだな」って思うシーンもたくさんもありますね。
―― ドラマの中ではガヤの話も出てきました。劇中では真琴がものすごく自己主張するガヤでしたけど、アピールするのも必要だとはいえ率直に「大変だな」と思いました。
戸松 一般的には本編をとり終わってからその現場に来ている方全員、新人ベテラン関係なくガヤを一気にとるのがスタンダートで、ガヤ“だけ”というのは例えば養成所の方ですることも多いんですが、映画や長い作品だとガヤも多いので「ガヤだけをとる日」というのがあって、ドラマではそれをピックアップしていたのかなと。
ああいうアピールも必要ですけど、一歩間違えると悪目立ちになる可能性もありますね(笑)。本当に紙一重なんです。「1人変なこと言ってるやつがいるぞ」と止められちゃったりするので。個性も必要という回だったので真琴ちゃんも他の人よりも頑張ってガヤをやっていましたけど、いろいろなガヤをやっていたのを見て私も「大変なガヤだな」と思いました(笑)。
私はそれを“きれいな戸松遥”と呼んでいる――
―― カットごとに撮ることが多いドラマと、パートを一気にとることが多いアフレコの現場だと声優と俳優の違いをあらためて感じていそうですが、福原さんはどうでしたか?
福原 役を演じるというのは変わらないなと思います。ドラマのようにカットごとに撮ると確かにつながりとかがバラバラになりやすいのでそれが苦手な私はまだまだだなと思うことも多くて、アニメのように全部一気にアフレコする部分ではやりやすかったりもします。ただ、声優さんのように声だけで表現しなくちゃならないのでちょっとオーバーにしたりとか、もっと個性を強く出さないと駄目だなと思ったりするので、難しいところとうまくいくところがあるんだというのを感じます。
戸松 自分の顔として映るかどうかという違いがありますよね。声優の仕事も表に出るのはセリフだけですけど、シーンがつながっているのを一気にとるというのは、台本上シーンがいきなり次の日になっていたりすることもあって、そういう状況を頭の中で全部理解して、「今この子は写ってないけど、こういう表情をしてこういうセリフが出てくるんだな」とかつながりを想像します。
そういうつながりを意識するのは声優も俳優も同じだと思うんですが、それを自分自身が全身で表現する難しさは今回ドラマをやってみて感じますね。自分がしゃべっていなくてもそこに肉体としてはあるわけなのでどういう状態でいたらいいんだろうとか、一挙手一投足が全部芝居として現れますよね。アニメは絵がありますけど、ドラマは全部自分で考えて組み立てるものなので、その難しさとか想像力はすごく勉強になるなと思いました。
―― 戸松さんは劇中でも“みんなが憧れる人気声優”というリアルと同じ役柄ですけど“戸松遥を演じる”というのはどうでしたか?
戸松 自分を演じるのは逆に難しいです。そもそも“自分とは何か”が正直よく分かりませんし、客観的に自分を見ることはあまりないですから。だから、いざ自分を演じてくださいと言われても「私って普段どういう風に喋ってたっけ?」と戸惑うことが多いですね。
むしろ何かの役になれていた方が「この役ならこう言いそう」と第三者的に見られるんですけど、それが自分という話だと何をやっても自分のような自分じゃないような気がして。だから、これまでの人生でここまで自分を考えたことないと思うくらい初めて自分と向き合っています。
私、声量や行動やリアクションが大きいタイプで、映像にすると何というかキャラクターみたいになっちゃうところがあるんですよね。だから、“引き算”でそぎ落とすイメージで今回は演じました。私はそれを“きれいな戸松遥”と呼んでいるんですけど(笑)。
―― きれいな戸松遥(笑)。本人なのにそぎ落とさなきゃならないなんて。
戸松 声優界の先輩的なポジションで間接的にいろいろアドバイスをしたりする役柄なので、言葉の説得力を持たせるためにも、真琴たちが「こういう人になりたい」って思ってもらえるような先輩でいなきゃいけない。だからそこは私の理想も込めた感じです。「こういう先輩でいられたらよかったな」と(笑)。
―― 戸松さんとお話していると長く一線で活躍する人のプロ意識が垣間見えるように感じます。ご本人は何が重要だったと思いますか?
戸松 いやいやいや、たくさん先輩がおられますから、まだまだです。私の場合はすごく恵まれていたというか、環境もすごくラッキーだったりいろいろなタイミングが重なって気づいたらこのぐらいたっていたというだけです。「これを1日も欠かしたことはない!」みたいなストイックさが自分にあるわけではないんですよね。それこそ10年前と今を比べると声優さんになりたい人の数自体が違いますし。私よく言うんですけど、「私が今新人だったら激戦区すぎて残れていない」ですよ。
でも、声優のお仕事に向き合うに当たってはいつも“絶対に爪あとを残そう”という気持ちでいます。作品を見てくださる方に演じてもらえて良かったという風に思ってもらえる作品作りをしたいという気持ちで全力で向き合っています。
周りを見るともっと努力されている方や何十年も活躍されていたりする方もおられるので、そういう方がいるから自分も頑張ろうと思うんですよね。
―― 目標というと語弊があるかもしれませんが、戸松さんが尊敬されている先輩声優というとどんな方なんでしょう。
戸松 個人的にこういう人になっていきたいなと思ったのは(「魔法少女まどか☆マギカ」の暁美ほむら役や物語シリーズの戦場ヶ原ひたぎ役などで知られる)斎藤千和さんです。斎藤千和さんみたいになりたい。男性なら宮野真守さんだったり。憧れる部分もあります。
プリキュアが結び付けた2人
―― 「プリキュア」シリーズとしては、戸松さんは2014年放送の「ハピネスチャージプリキュア!」でキュアフォーチュン/氷川いおな役を演じ、福原さんも2017年放送の「キラキラ☆プリキュアアラモード」でキュアカスタード/有栖川ひまりを演じました。聞くところによると、戸松さんはプリキュアのオーディションを過去にも何度か受けられたそうですね。
戸松 そうですね。女の子が憧れる作品ってあるじゃないですか。「セーラームーン」だったり、私なら「おジャ魔女どれみ」がそうなんですけど、今の子は「プリキュア」。私は世代的にプリキュアで育った世代ではなくて、声優の仕事を始めたときにはそこにあったという感じですが、女の子の憧れであるプリキュアに自分がなりたいという思いはあったので、幾つかのシリーズ作品でオーディションを受けさせていただく機会がありました。
「ハピネスチャージプリキュア!」で自分がプリキュアになれたのはすごくうれしかったです。女性声優さんの中でプリキュアに出ることを1つの目標にされている方も多いのですが、自分がプリキュアになれたことは本当に自分の声優人生の中で宝物になりましたね。
福原 私も「ふたりはプリキュア」(2004年放送)にガッツリはまって、当時はパジャマからパンツまでプリキュアグッズでそろえたりしましたし、七夕で願い事を「プリキュアになりたい」と短冊に書いた覚えもあります。
その後プリキュアのオーディションを受けられることになって「私でいいの?」って驚きましたし、受かるとは思っていませんでしたが、ただそこにいるだけで何かプリキュアに関われたような気がしてうれしかったんです。それが夢がかなって、これからも絶対大切にするものになるのだろうなと。
これだけでも本当にうれしかったのですが、再びコラボができて、どれだけプリキュアと一緒にいられるんだと(笑)。一緒に成長しているような気持ちでうれしいです。
ドラマ主題歌「It’s Show Time!!」――キラキラした場所に私たちを連れて行ってもらった
―― お二人が歌うドラマ主題歌「It’s Show Time!!」について聞かせてください。
福原 同じ“遥”ということもあって運命的なものを感じました。
戸松 そうだね。名前も漢字も一緒というのもあって“W遥的”な意味もあり、本当にこの作品だからこそのユニットというか、声優と女優のユニットというのも企画としては珍しいと思いますし、ドラマでも先輩と後輩のような関係性があるので、ジャケットやミュージックビデオ(MV)もそれにリンクさせて作られています。
福原 MVは、戸松さんが先輩で私が後輩として私がアドバイスをもらいながら切磋琢磨(せっさたくま)するストーリー仕立てなんです。「声ガール!」の主題歌として世界観がカッチリ決まっていたので、それをがむしゃらに楽しむというか、キラキラした場所に私たちを連れて行ってもらったような感じです。
―― 作詞は前山田健一さんですね。前山田さんは過去には「魔法つかいプリキュア」のエンディングテーマも手掛けていますが、今回の曲でお二人が印象的なフレーズはありますか?
戸松 前山田さん自身が声優の業界もよく知ってくださっている方だからこそ、違和感なくというか知ってる人が書いてくださっているのがすごく伝わってくる歌詞でした。ジュニアランクとかモブキャラとかそういう業界用語を違和感なく入れてくださってるのはさすがだなと。
福原 私は「努力すれば報われる」というフレーズがすごく好きで。レコーディングのとき、戸松さんと歌えるというのがうれしすぎる反面、緊張でガチガチだったんですけど、歌っている途中にこの歌詞に背中を押されたというか、本当に自分に刺さって、後悔しないようにやった方がいいと思いながら歌ったので、この歌詞がすごくお気に入りです。
―― 戸松さんは2008年に「naissance」でアーティストデビューされて今年で10年がたちますが、自分の名義でコラボした曲を出すのは初では?
戸松 そうですね。自分名義ではないキャラソンでコラボみたいなことはありましたけど。ご縁があればいろいろなことをやりたいと常日ごろ思っているんですが、コラボで歌を出すのはどんなきっかけでできるんだろう、できると思っていなかったので、「やれる機会があるんだな」という気持ちです。
今回遥ちゃんと一緒に歌わせていただいて、2人でやれるのはよい刺激になりますし、表現の勉強にもなって本当にありがたい機会です。いろんな奇跡が重なった結果ですが、忘れられない思い出になっていくと思います。
―― 「It’s Show Time!!」は夢に向かって頑張る人への応援歌となっていますよね。ちなみに、お二人が応援したいと思うのは?
戸松 頑張っている人はみんな応援したいです。これは年齢を重ねたなと自分で感じるんですけど、スポーツやっている子たち、特に甲子園の男の子たちを見るともう泣けてきますからね(笑)。いつのまにか高校球児がどんどん年下になって、試合に負けて泣きながら土をがーっとやっているのを見ると「うぅ……頑張ったね……」って。だんだん涙もろくなってきてしまって。
福原 分かります! 駅伝もですよね。ああいうのを見ると自分も頑張らなくちゃって。
―― ところで、先ほどから福原さんが戸松さんに向ける尊敬や憧れのような感情をすごく感じます。福原さんが戸松さんを意識した作品などは何なのでしょう。
福原 これ、というよりは、私が生きてきた中の折々で戸松さんがいる感覚なんです。プリキュアの先輩というのももちろんですし、例えば戸松さんが榎本夏樹のキャラクターとして歌ったHoneyWorksの代表曲「告白予行練習」は当時学校でもすごくはやっていて私も歌っていたり、「妖怪ウォッチ」のケータだったり、「ソードアートオンライン」もすごく見ていましたし、ライブにも行かせていただいたりして、その度に心打たれます。
戸松 えぇーーーー? ありがとーーーー!
福原 いつも言っているじゃないですかー(笑)。私もすごく好きですし、私の弟もアニメが好きで、戸松さん話をするとよくうらやましがられます。
―― 福原さんはあと数カ月で20歳を迎えます。戸松さんは20歳の誕生日にアルバム「Rainbow Road」をリリースされましたが、20代を先に経験した先輩として、どんなアドバイスを送りたいですか?
戸松 遥ちゃんは「20代になりたくないー」ってよく言っていますよ(笑)。
福原 まだ10代でいたい……。自分が想像する20代が大人すぎて全然追い付いてないのであと5年くらいほしいです……。
戸松 いやーでも楽しいよー。私は20代の方が楽しいよ。大人としての責任もあるけれど、大人としてやれることがたくさんあるから。いろいろなことやって楽しく過ごしていたら「あれもう30代が見えて……来たぞ……?」という感じだけど、私の周りの人に聞くと「30代からが楽しい」と言うので、「あぁ、どんだけ人生楽しくなっていくんだ」と(笑)。
福原 じゃあなります(笑)。(撮影などの)打ち上げなども楽しみです。
―― ところで、戸松さんといえば無類の寿司好きでも知られていますが、嗜好(しこう)に変化はありましたか?
戸松 いえ、不動のおすしです。今でも週2で回る寿司を食べに行きますし。小さいころから寿司が好きで、他に好きなものももちろんあるんですけど、毎日食べたいとは思わないみたいなものもあるじゃないですか。でも寿司には飽きたことがないので「私は何よりも寿司が一番好きだったんだ!」と気づいたのが本当に2、3年くらい前です。
―― 福原さんといえば、トマト狩りしかりイチゴ狩りしかり、食べ物“狩り”に造詣が深い印象です。
福原 すみません、食いしん坊で(笑)。家でもミニトマトとか作って弟と取り合いになって食べたりましたね。あと、バラエティー番組で「トマト狩りに行きたい」と言っていたら連れて行ってくださって、鎌倉にある有名なトマト農園が本当に病みつきになるおいしさで、そこのトマトを使った「鎌倉Dining 由比っと」も本当にすばらしくて、そのためだけに鎌倉に行ったりもしました。
戸松 狩りは食べ放題ですしね。若いなー。
福原 食べ放題といえば戸松さんに大人の食べ放題に連れて行っていただいて、寿司やしゃぶしゃぶなどいろんなものを食べさせてもらって。本当にありがとうございます。
戸松 何よりだよ。大事大事。
―― 脱線しました。最後に、ぜひお二人から曲の見どころについて。
福原 私自身がレコーディングのときに背中を押されたようにすごいパワーが込められていて、何かにつまづいて転びそうになっていたり、頑張ろうとしていたりする人が勇気を持てる歌詞で、聞いて笑顔になれる曲だと思うのでたくさん聞いてほしいです。
MVはストーリー仕立てで、中華料理屋さんで二人で働いて、最初から最後まで楽しんでもらえて、ダンスも個性的で覚えやすい振り付けなので、一緒に歌いながら、踊りながら夢に向かって進んでいってほしいなと思います。
戸松 遥ちゃんも言ってくれたように、すごく夢を与えてくれる歌だと思いますし、MVもダンスパートは一緒に踊ってもらえたらいいなという気持ちで楽しく伸び伸びとやりましたし、ストーリーパートも「声ガール!」をオマージュしたようなシーンもあったり、振り付けや黄色と紫の衣装もお互いが演じたプリキュアの要素を入れたものがあったり、衣装の差し色も黄色と紫だったり裏テーマがあったりと、見どころがちりばめられています。カップリング曲の「Try」も劇中歌で、作品とリンクしている楽曲なので2曲とも楽しんでもらいたいです。
リリースイベント開催!
- ミニライブ&福原遥握手会(東京都)
5月26日12時からタワーレコード渋谷店 B1F CUT UP STUDIO
※ミニライブのみゲストとして戸松遥さんが参加します。
- ドラマ「声ガール!」スペシャルトークショー&福原遥握手会(大阪府)
5月27日13時からあべのキューズモール 3Fスカイコート
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これでクリスマスも寂しくない。
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