9回裏まで一球入魂! 児童向けから成人向けまで、野球小説オンリーのレビュー本が熱い司書メイドの同人誌レビューノート

野球らしく9回裏まで全18冊をレビューしています。

» 2018年05月27日 12時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 そろそろ南の方では梅雨入りしたという声が聞こえてきました。冬の上着を収めたばかりだと言うのに、2018年は季節の移り変わりの早さにびっくりです。さてさて、雨が降る前に、曇天を突き抜けるような、まぶしい白球を追いかけるレビュー本を読んでみましょうか。

今回紹介する同人誌

『野球小説の話をしよう 3』

A5 24ページ 表紙カラー・本文モノクロ

作者:環俊次


同人誌 野球小説 野球 高校生 シャッツキステ コミケ コミックマーケット コミティア 野球小説レビュー本のシリーズ、もう3冊目なのだそうです!

児童向けから成人向けまで! 野球小説だけのレビュー18本

 こちらの同人誌は、作者ご自身が読まれた小説のレビュー本です。ずらり並んだ18冊の本。これらに共通するのは「野球」。そう、どれも野球をテーマにした小説なんです。

 バットを持ったイラストがほほえましい表紙の、なんだか懐かしさ漂う児童小説、試合に誘拐事件が絡むミステリー、ラノベ、かつて一世を風靡(ふうび)したケータイ小説などなど、ひとくちに野球小説といっても、こんなに種類があるんですね。中には成人向けの小説も!

 1ページに1冊のペースで紹介される野球小説はタイトル、著者、出版社、発行年といった基礎情報と、作者さんのレビューが載っています。この1ページに1冊というシンプルな構成が、野球に詳しくない私にも、するりと入って読みやすいのです。しかも、文頭を“野球嫌いの野球小説”や、“残念?男子高校生だ”といった、興味をそそるキャッチフレーズが飾っていて、ご本に興味が出てきます。

同人誌 野球小説 野球 高校生 シャッツキステ コミケ コミックマーケット コミティア 読んだことありますか? 児童向けから成人向けまで18冊

レビュー順には試合展開が詰まってる? 意味深な並び順の謎

 野球がお好きな方なら、18冊という数にピンとこられたでしょうか? 野球に疎い私は、レビューの中で「9回裏という形でヒッソリ取り上げます」と書かれて、やっと、はた! と手を打ったのですが、なるほど、野球の試合が9回まであるのに掛けてあるのですねー。

同人誌 野球小説 野球 高校生 シャッツキステ コミケ コミックマーケット コミティア 『もしドラ』みたい? 実は意外なほどに熱い作品だとか!

 そう気付いてからあらためてページをめくり直すと、1冊目は児童向けの『ぼくは野球部一年生』からスタートしています。ふむふむ、誰にでもやさしく読めそうなご本から、順当な試合開始と言ったところでしょうか。ミステリーや青春小説を挟みつつ、3回裏には、北杜夫さんのエッセイ本の中に収録されている小説をチョイス。ちょっと本流から外れたようなご本を選択されたのは、3回裏がなにか試合のキーポイントになった……? と深読みしてしまいます。

 レビューされている本そのものだけでなく、紹介するご本の順序にも、実はドラマチックな展開が隠されているのかもしれない、なんて考えを巡らせているだけで楽しい! なお、前述の「9回裏という形でヒッソリ取り上げ」られたのは、今回のレビュー本の中で唯一の成人向け小説。しかも実は競技はソフトボールだったそうで……。でも、ちゃんと野球とソフトボールの違いに戸惑うシーンが丁寧に解説されているところに注目されています。18冊のレビュー本を通して試合が行われている比喩だとしたら……うーん、この試合、かなり波乱に富んで、最後に大逆転があったのかも?

あなたの野球観は? 同じ本を読んで語り合いたくなるかも!

 レビューを拝見していて、顔をあげて「あれ?」と首を傾げることがありました。ふと思ったのです。「あんまりテンションが高くない……」と。いやいや、レビューされるお気持ちが低いわけでは、決してありません。ではなぜ落ち着いているなぁ、と感じたのかと考えてみると、それは作者さんの野球への接し方が垣間見えているように思ったからでした。

 レビューの中で作者さんは、ケータイ小説の横書きに馴染めなかったこと、文中の野球道具の呼び方に違和感を持ったことなど、率直に語っていらっしゃいます。さらに、過去に活躍した野球選手が登場するシーンから時代背景を推察したり、自身は小さなころは野球が嫌いだったこと……そういったことを少しずつ文章に織り込んでいらっしゃいます。好きなジャンルのことだからあれこれ言いたくなるけれど、決して悪口ではなくって、「好き」ゆえのツッコミ。個人の経験と思い出。それらが少しずつミックスされたレビューは、とても“日常”の空気をまとっています。

同人誌 野球小説 野球 高校生 シャッツキステ コミケ コミックマーケット コミティア もともとは東京ドーム球場が開場した1988年に刊行された小説とのこと。野球はその折々の時代を感じさせる題材でもあることに気付かされます

 私が野球に触れるのは、「○○チームが優勝したんですって」とか「国外で大活躍の選手がいらっしゃるんですって」といった、とっても特別なニュースを耳にしたときですけど、きっと作者さんにとって、野球はいつも身近にあるものなのでしょうね。その特別じゃない、日常の愛おしさから選ばれた18冊。ご本を読んで、レビューを読んだら、試合を観戦しながら語り合いたくなってしまうかも。


サークル情報

サークル名:テキサスヒット

Twitter:@toshitugu37

次回イベント参加予定:コミックマーケット、東京野球ブックフェア


今週のシャッツキステ

シャッツキステ メイド 同人誌 あじさいの花びらの色の複雑さがとっても美しいです。晴れていても、雨でも映える、すてきなお花の時期ですね

著者紹介

シャッツキステ メイド 同人誌 司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

同人誌 | コミケ |


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/08/news006.jpg 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  2. /nl/articles/2412/08/news016.jpg 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  3. /nl/articles/2412/05/news178.jpg イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  4. /nl/articles/2412/07/news025.jpg 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  5. /nl/articles/2412/07/news024.jpg 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  6. /nl/articles/2412/08/news003.jpg ダイソー&セリアの毛糸6玉が、みるみるうちに…… たった4時間編んで完成したとは思えないオシャレアイテムが話題
  7. /nl/articles/2412/07/news039.jpg コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  8. /nl/articles/2412/07/news020.jpg “ひっつき虫”を簡単に取るには…… 身近なアイテムでスッキリするライフハックに「これでイライラしないで取れる」「今度、やってみます」
  9. /nl/articles/2412/07/news057.jpg その発想はなかった! 手に描いた“孫悟空” → 広げたら…… “まさかの変化”にテンション上がる「センスだね」
  10. /nl/articles/2412/07/news018.jpg 赤い毛糸3玉をどんどん編んでいくと……? 完成した“冬のオシャレアイテム”に「わかりやすくて感謝」「編んでみたい!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  4. 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
  5. 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
  6. パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
  7. アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
  8. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
  10. PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」