「男女で着るものが違うことがおかしいんじゃないか」――“メンズサイズのかわいい服”ブランドはなぜ生まれたか(1/3 ページ)

「性別や体形にとらわれずかわいいお洋服を着たい」という願いをかなえることを目指したアパレルブランド「blurorange」の代表にお話を聞きました。

» 2018年05月29日 10時00分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 「性別や体形にとらわれずかわいいお洋服を着たい」――そんな願いをかなえることを目指したアパレルブランド「blurorange(ブローレンヂ)」。2017年9月にクラウドファンディングサイトでプロジェクトを立ちあげて注目を集めた(関連記事)。

blurorange blurorange代表の松村智世さんとモデルの中野誠さん

 メンズサイズでも着られるレディースのデザインの服を制作し、ファッションとしてかわいい服を着たい男性や、既存のレディース服が合わない女性にも知られるように。さらに6月には女性装の東大教授で有名な安冨歩教授とともに、東京大学安田講堂でのファッションショーを含む異例のイベントを開催する。同ブランドの取り組みや誕生のいきさつを代表の松村智世さんに聞いた。

メンズサイズのかわいい洋服、購入者はどんな人?

人気の控えめガーリーカーディガン

 2017年夏にスタートしたblurorangeの第1弾の商品は、柔らかなレース生地を使ったブラウスと、男性が着用した際の見ばえと着心地の良さを実現したワンピース。9月に実施した初のクラウドファンディングでそのワンピースに組み合わせられカーディガンを生産するプロジェクトを立ち上げ、目標額の3倍もの資金を集めた。

 「前回のクラウドファンディングで商品化した『ひかえめガーリーカーディガン』は、袖がメンズでも手の甲まで隠れる長さなのですが、とても好評でした。オーガニックホワイトは早い段階で完売しました」(松村さん)

 直接顔を合わせないネットショップでの販売なので、全ての購入者を把握できているわけではないが、トランスジェンダーの人、趣味で女装する人に加えて、肩や二の腕のサイズが大きいため既存のレディース服が着づらいアスリート体形や背の高い女性が購入するという。

 また、メンズサイズでレースやボタンがついているデザインの服は今までなかったため、カーディガンなどをメンズのものと組み合わせて、ファッションとして楽しむ男性もいるそうだ。

 「blurorangeでは男性と女性との骨格の違いに注目して洋服づくりをしているので、『こんなかわいいデザインのワンピースを、メンズサイズで着られるとは思わなかった』『着心地が楽』という、着やすさについての意見を多数いただきました。また、blurorangeを気に入ってくれて着続けてくれたお客さんが、久々に女性向けの既製服を着たら、シルエットのバランスが全然ちがっていて、ショックを受けたという話も聞いております」(松村さん)

メンズ体形でも美しく着られる洋服作りの秘密

マネキンによる男女の体型の比較(左が男性、右が女性)

 メンズ体形の人に合うように、blurorangeの商品はサイズの違いだけではなくさまざまな点で工夫している。例えばウエストの場合、ろっ骨がやや内側に入る形で腰回りの肉付きがいい女性に比べると、ろっ骨がハの字に広がった男性では見た目の印象が大きく違う。

 「ウエストの切り替えは身体に沿った位置にしますが、そのままでは胴長に見えてしまうため、襟などで胸元にポイントを作ったり、本来のウエストより高い位置にリボンを付けたりしています。また、お尻が丸みのある形に見えるように、たくさん生地を使い、スカート部分にレディース服よりもギャザーを多めに入れています」(松村さん)

 また首を長く、肩幅を目立たなく見せるために襟ぐりはVネックラインに近い形にし、襟の形は丸くすることで可憐(かれん)で柔らかな雰囲気を作っているという。

 ところで、blurorangeでは体形を補正しつつ、かわいく着られる洋服が主流だが、かわいい服ばかりではなく、ラグジュアリーなものや、セクシーなものを身につけたい人もいるのではないだろうか。

 「私自身はフリフリの甘いデザインよりクラシカルなデザインのお洋服が好みです。最初に甘いデザインのかわいい服を作ったのは、レディース服を着たい人たちの好みを調べたリサーチの結果。ただ、購入されたお客さんからも、『かわいいから好きなんだけど、普段向けのものも欲しい』という意見もあったので、新作では日常でも着られて、私が好きなクラシカルなデザインのものも制作しています」(松村さん)

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