EVO2015の歴史的珍事「早すぎたガッツポーズ」の裏側にあったもの “勝負を分けたカウンターヒット”を生んだ「0.1秒の駆け引き」(3/3 ページ)
ヲシゲはゲージ管理を始めとした完璧な状況判断と、的確なコンボ選択で最終セットの2ラウンド目を勝利。会場は湧き、完璧なプレイを誇るかのようにヲシゲは席を立ってしまった。一方、歓喜するヲシゲとは対象的に、小川は極めて冷静に「ヲシゲは急いで席に戻るはずだ」と考えていたという。
そして、「この状況でコントローラーに触れたら、ヲシゲはどんな行動を取るのか」を予想。短い時間の中で最も可能性が高いと判断したのは、“レバーを後ろに入れた状態で「HS」(※)のボタンを押すこと”だった。
【HS】読み方は「ハイスラッシュ」。ボタンを押すだけで出せる通常技の1つ。ストリートファイターシリーズでいう「強パンチ」のようなもの。
ヲシゲが操作するのは、トップクラスのスピードと強力な起き攻め(※)を特徴とする「ミリア=レイジ」というキャラクター。ミリアのHSは、外したときのスキは大きいが発生が非常に早く、仮にヒットしていればそこから起き攻めに移行でき、レバーを後ろに入れておけば近づいてきた相手を通常投げ(※)で投げられる可能性もある。「暴れ」(※)としてHSがヒットしても、投げを当てても、そこからミリアの勝ちパターンへ移行できる。
【起き攻め】ダウンした相手が起き上がるときに攻め込む行動の総称。ミリアの起き攻めは非常に見切りづらい上に、起き攻めが成功するとそのまま再度ダウンを奪い、次の起き攻めに移行できる。
【通常投げ】全てのキャラクターが使用できる投げ技のこと。ギルティギアシリーズでは、相手に近づいて左右どちらかにレバーを入れた状態でHSボタンを押すと通常投げが成立する。
【暴れ】攻めてくる相手に対し、ガードを固めるのではなくあえて技を出すことで相手の攻めを止めようとすること。
もちろん、ヲシゲがこの通りに考えているという確証はない。しかし、当然迷っている時間もない。小川はザトーを棒立ちしているミリアの眼の前に移動させ、自らの判断を信じてカウンターヒットしたときに大ダメージを奪うことができる技「しゃがみHS」を打った。
レバーを後ろに入力すれば問題なくガードできるタイミングだったが、ヲシゲはHSを押してしまっていた。お互いの技が交差するが、ボタンを押したタイミングはわずかに小川の方が早く、ザトーの技がカウンターヒット。そして小川は画面上のカウンターヒット表記を冷静に確認し、カウンター時限定の大ダメージコンボをミスなく決め、そのままの勢いで勝利した。勝敗が決した後、今度は小川が観客に向かって勝利をアピールすることとなった。
小川によると、「仮にしゃがみHSがカウンターヒットしていなかったら、よくて3〜4割のダメージ。いずれにせよ状況は有利になるが大ダメージコンボにはならない」という。もし、あのタイミングでヲシゲがHSを押していなかったら、最終ラウンドの存在に気付くタイミングがほんの少しずれていたら、ザトーの踏み込みがもう少し深ければ、小川がカウンターヒットを見逃していたら――あの状況でカウンターヒットを成立させられる猶予は0.1秒ほど。ほんの少しでも状況がずれていれば、あの事件は起こらなかった可能性が高い。
格闘ゲームは、1フレーム――つまり60分の1秒の差が勝敗を分かつ競技だ。ヲシゲが席を立ったことは紛れもないミスだが、その時点で勝敗が決まったとは言い切れない。その直後の展開にもフレーム単位の駆け引きが繰り広げられていたのだ。
EVO2018は8月3日から3日間開催される。きっと今年も多くの名勝負が見られるはずだ。
関連記事
- 世界最大級の格闘ゲーム大会「EVO」でまさかの珍プレー 勝利を確信した選手がガッツポーズ → まだ1R残っていたためボコボコにされ敗北
優勝者より有名になってむしろ良かったんじゃないか説まで浮上。 - 「子持ちのおじさんゲーマーにも夢を持ってほしい」 トッププロゲーマーを影で支え続ける“プロゲーマーの嫁”の内助の功
「西のウメハラ」とも呼ばれたトッププレイヤーの妻であり、マネジャーでもあるakikiさん。私生活やeスポーツシーンについて話を聞きました。 - 「プロゲーマーって引退したらどうするの?」 現役プロゲーマーにeスポーツの将来について聞いた
「プロゲーマーってモテるの?」など、いろいろな話を聞いてみました。【訂正】 - なぜ「ときど優勝」で格ゲーマーは泣いたのか 東大卒プロゲーマーの情熱と“友情、努力、勝利”
劇的なときどの優勝で幕を下ろしたEVO2017、その背景を振り返る。 - 日本初のオフラインRTAイベント「RTA in Japan」主催者インタビュー 遊び方を突き詰めていくプレイヤー達の「圧倒的熱量」
2016年末に3日間を通して行われたオフラインRTA(リアルタイムアタック)イベント「RTA in Japan」、その主催者にインタビュー。 - 格闘ゲーム大会での挑発は是か非か Killer Instinct世界大会で挑発行為の禁止がアナウンスされ議論に
挑発で心理的な効果も狙える?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
-
「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
-
「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
-
餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
-
毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
-
「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
-
放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
-
脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
-
父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
- 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
- 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
- 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
- コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
- 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」