「エンタメ業界は“在野の才能”を見つけ出せていない」――アニメ原作公募プロジェクト「Project ANIMA」宣伝Pに聞くエンタメ論(2/2 ページ)
「なろう」人気はなぜ?
――7月15日まで募集を受け付けていた「異世界・ファンタジー」のテーマは、先ほど話にも出た「なろう」のイメージが強いように思います。かなりネタは出尽くしているのではないか、という気もするのですが……。
「異世界ファンタジー出尽くし問題」ですよね(笑)。異世界・ファンタジーはラノベでは一大ジャンルですし、確かに「なろう」内ではいろんな人がいろんなものに転生していて、さまざまなネタが出そろっているように思います。
ただ、その全てがメディア化されているわけではないですし、アニメでヒット作……と限定すると、まだまだ突破の余地があるのではないでしょうか。また、第2弾のテーマは「異世界ファンタジー」ではなく、「異世界orファンタジーor異世界ファンタジー」なんですよ。異世界ではなく、いわゆる王道のハイファンタジー作品は最近意外に少ないので、エンタメの世界にもそろそろ揺り戻しが来るんじゃないかな。
――せっかくの機会なので、有田さんのエンタメ論についてどんどんお伺いしていきたいです。異世界ファンタジーが一大ジャンルにまで育ったのは、どうしてなんでしょうか?
社内でも「どうしてこんなに支持を得ているんだろう」と話し合ったテーマです! さんざん語ってたどり着いた1つのキーワードが、「ある種の没入感」でした。今いきなり「中世ヨーロッパで戦士たちが命を奪い合う」という話をしても、リアルに想像はしにくい。そこで「現代の冴えないサラリーマンが中世ヨーロッパに転生」とすることで、自分と重ね合わせたりなどの身近さを作り出す効果があるのではないでしょうか。
転生ものではありませんが、例えば『BEASTARS』は登場人物が全員動物というファンタジーではあるものの、現実の人種問題と置き換えて読むことができますよね。たくさんの人に受け入れられているファンタジーには、そういう導入のうまさがあるように思います。
――なるほど。ほかにエンタメのトレンドはあるのでしょうか。
起承転結がない……というか、「起・転転転転転・結!!!!」みたいなものがウケている肌感覚があります。おもに私がここ1〜2年ハマってる「HiGH & LOW(ハイロー)」と「KING OF PRISM(キンプリ)」のことなんですが……。映画「バーフバリ」なんかもそうですね。映像的快感のあるシーンを連続させて、最初からクライマックスで最後までクライマックスのまま一本作りきってしまう。「PV(プロモーションビデオ)的」とでもいうんでしょうか。
さらにポイントとなるのが「フックの多さ」ですね。ハイローにハマった時、いろいろな人に「ハイローを見てくれ!!!」と布教しまくっていたのですが、ハイローの感想を聞くと、これまでその人がどんなエンタメを摂取してきたのかが分かって面白かったです。「ジャンプとマガジンとチャンピオンのおいしいとこどりだね」と言う人もいれば、「韓国のノワール映画みたい」という人も、「格ゲーの実写化じゃん」という人もいた。私は90年代の「花とゆめ」「LaLa」や「ウィングス」を通ってきた人間なので、「これは『女性作家が描く、男ばかり出てくるアクション少女漫画』の最新バージョンだ……!」と思いました。それだけいろんな人に“刺さる”フックを作品が有しているんです。
ただ、フックが増えれば増えるほど、作品の世界観のコントロールは難しくなります。ハイローの場合はそこを音楽や美術や圧倒的な財力で維持していった。要素を盛り込む場合は、その分作品の“器”が壊れないようにする必要がありますね。
「どうだ」という気持ちで持ってきてほしい
――8月1日から第3弾の募集が始まりますが、「こういう作品を歓迎!」というものはありますか?
「どうだっ! 面白いだろう!?」という気持ちで持ってきていただきたいなと思います。持ち込み会でたくさんの方とお話しして気になったのが、「王道な方がいいですか?」「腐女子向けはダメですか?」「ファンタジーということは男性主人公じゃないとダメですか?」などと聞いてくる方が多いこと。意外に皆さん「傾向と対策」されるんだなぁと。全然ダメじゃないですし、「作品が一番面白くなるようにしてください!」とお伝えしています。
過去の名作と同じテーマを扱っていても、“超えて”いればいいんです。一次選考中も、白熱してくると「この作品は『ソード・アート・オンライン』より面白いのか?」「『オール・ユー・ニード・イズ・キル』より面白いのか?」というテンションでやっているので、「これなら過去の名作たちに勝てる!」と思うものをお願いしたいと思っています。「新人に、そこまで求めるの?」と思うかもしれませんが、新人だからこそ「今ある作品より面白いもの」に挑んでほしい。オリジナリティーは作家の腕の最大の見せ所ですから。
「自分はこういうアニメが好き!」からスタートして、作品をいかに面白くするかの「客観的視点」を入れ込み、「作品にとっていちばんいい」状態にするまで考え抜いたものを、自信を持って応募していただきたいです!
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