これはいい展示! 貴重すぎて普段は非公開、日本初の地下鉄「1000形の車内」へ潜入してみた(1/3 ページ)
「うへの」「此ノ戸」、懐かし楽しい! 「地下鉄博物館」の名物展示を体験。【写真39枚】
普段何げなく使っている、当たり前のものが「いつから」あったか、ふと知りたくなることはありませんか?
東京・葛西にある「地下鉄博物館」(東京都江戸川区)で、普段は立ち入れない日本初の地下鉄車両「東京地下道1000形(以下、1000形)の“車内”」が特別公開されるというのでワックワク気分で見てきました。
「鉄道の日」限定、貴重「1000形」の内部を一般公開
日本の地下鉄は、1927年(昭和2年)に上野−浅草駅間(現在の東京メトロ銀座線)で誕生しました。開業は1927年(昭和2年)12月。2017年に開業90年を迎えています(関連記事)。2018年10月現在、「東京メトロ銀座線」は全面リニューアルが行われており、日々変わっていく駅や設備を目の当たりにしながら、ふと現れる「昔」を懐かしんでいる人も多いことでしょう(関連記事)。
今回訪れた地下鉄博物館は、公益財団法人・メトロ文化財団が運営する地下鉄専門の博物館です。東京メトロ東西線葛西駅の“高架下”にあります(すごく行きやすいですよ!)。目玉展示は、日本初の地下鉄である銀座線に使われた車両「1000形」です。
1000形は前述した通り日本初の地下鉄となる歴史的な車両。地下鉄博物館が所有するこの個体(1001号車)は「国の重要文化財」に指定されています(関連リンク)。すごい!
その貴重さがゆえ、普段は「外から見る」だけで車内までは入れないのですが、去る2018年10月13〜14日の「鉄道の日記念」で内部が特別に公開されたのでした。日本初の地下鉄の「車内」、果たしてどんな気持ちになれるのか。早速内部へ潜入してみましょう。
超きれい。……す、すばらしい保存状態です。中のひんやりした空気感、90年前の空気がそのまま……(そんなわけない)。現代の東京メトロ銀座線に比べると車内がちょっと狭いなと感じますが、いやいやこれ約100年前の車両ですからね。通路の幅は大人2人が横並びで立てるくらいでした。
車内の明かりは間接照明が使われていました。暗い地下で光を見てもまぶしいと感じにくくするための対処です。この淡い光がいい味を出しています。
また、木目の風合いがある壁なども「木の感じがレトロっぽくていいね〜」などと思いませんでしたか? 実は違います。これ「木目調」です(!!)。鋼板に「木目の焼き付け印刷」を施して表現していたのだそうです。これ、すごくないですか? なぜわざわざ……?
当時の鉄道車両は木材車体がまだ一般的だったところ、1000形は骨格や外板だけでなく、屋根板や内装まで鋼鉄製の「全鋼製車体」を採用した先鋭的な車体でした。高度な耐火性を得るためです。地下鉄のトンネル内では乗客の避難が地上より困難。「本当に乗っても大丈夫か」はじめて乗る乗客にも不安がありました。だから「安全」のために当初から徹底して不燃設計がなされ、そのことも強くアピールしていたのです。
火災対策への高い意識は車両の材質だけではありません。車両の先頭には緊急出入り口が設置されています。これも現代の地下鉄と同じです。地上を走る鉄道ならば側面ドアから外へ出られますが、地下鉄はすぐ横が壁。大勢の人が速やかに、安全に脱出できません。地下鉄は誕生時から既に前後に非常ドアを設けた貫通型になっていたのですね。
非常出入り口のとなりが電車の運転席となっています。ちょうど電話ボックスと同じくらいの大きさです。
運転席の後ろには「此ノ戸」「他ノ戸」「閉」「開」と、グッと来るレトロ感のありありなデザインの文字が書かれた装置が付いていました。
これは車掌が操作するドア開閉スイッチです。棒が2本、開/閉のどちらかに飛び出ており、それを押すとドアの開閉を操作できます。「此ノ戸」は装置の真横のドア、「他ノ戸」はそれ以外のドア用。太い棒スイッチをゴシュッと確実に押すことで機能する仕組みは現代の車両と大きくは変わらず、当時の車両から受け継がれてきているのです。
ちなみに、ドアの開閉状態を確認できる「車側灯」もありました。「駆け込み乗車は〜危険なので〜おやめくださ〜い!」なんていう注意の掛け声も当時からあったのでしょうかね。
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