「美容垢」の光と影――“あるある”な炎上と、手厳しいわたしたち(1/2 ページ)
今夜もわたしは、美容垢やYouTuberたちをチェックする。
「美容垢」と呼ばれるTwitterアカウントがある。コスメやダイエットの最新情報やレビューをアップする、美容に特化したアカウントのことだ。中には自分の目や口元など一部を顔出しして、コスメの使用感を見せてくれる美容垢もある。
美容垢を見るのはとても楽しい。「年明け限定のDiorのサンクがめっちゃかわいいけど、予約は不可らしい」とか「SUQQUの惚紅の上からNARSのMadridを重ねるとキレイ」とか、実用的なお役立ち情報をたくさん教えてくれるし、きれいに重ねられたアイシャドウのグラデーションやまつげのCカールは、美術館で見る絵画のようにわたしの心を整えてくれる。
わたしは昔からかわいくてきれいなアイドルや2.5次元俳優のオタクなのだけれど、同じようにかわいくてきれいなコスメやメイクの画像を見るのも好き。今年の10月に劇団雌猫の一員として『だから私はメイクする』という女性の美意識に関する書籍を出してからは、ただ情報を集めるだけ、鑑賞するだけではなく、美容垢にまつわる人たちの美意識についても気になるようになってきた。
美容垢の盛り上がりと炎上
わたしが美容垢の存在を知ったのは、たしか2016年の終わりか2017年の初め頃。その頃に比べて、美容垢の数はものすごく増えたように思う。そしてそれに伴って、“炎上”も増えた。
例えば、デパートのコスメカウンターに並べられたコスメを手に取り写真を撮って、あたかも自分で購入したかのようにツイートしたものの、「そこに写ってるの、伊勢丹の床ですよね?」と“床バレ”して炎上したアカウント。例えば、自分が勤めている会社のスキンケア商品を絶賛するレビューをあげて「ステマじゃん!」と炎上したアカウント。例えば、「丸の内OLでいろんな男性からモテモテなんです」という日常ツイートをするも、別アカウントが特定されて実は丸の内OLではなく高校生だったということが発覚したアカウント……。
炎上の理由はさまざまだし、中には「これ、アカウント主は全然悪くないのでは?」というものもたくさんある。どこかからアカウント主の顔写真を発掘してきて、「彼氏に『泉里香に似てる』って褒められたってツイートしてたけど、全然似てないじゃん!」なんて凸られている美容垢を見たこともあるけれど、彼氏の目には愛する彼女が泉里香さんのように見えていたんだろう。幸せなノロケじゃんか。そんなに出る杭は打たないといけないのだろうか? と、悲しくなってしまう。
そういうトラブルに巻き込まれたくないからか、最近ではわざわざbio欄に「美容垢ではないです。ただコスメが好きなだけです」と注意書きをするアカウントも増えてきた。#美容垢で検索しても本当にほしい情報にはなかなかたどりつけなくなっている。
こういったSNSの炎上は、何も美容垢に限ったことではない。2016年に「ねほりんぱほりん」(NHK)で特集された「偽装キラキラアカウント」も同じように偽装がバレたりアンチがわいたりしていたし、それこそアイドルオタクの中でもファンサ自慢や過剰な考察ツイートが原因で叩かれる……というのは“あるある”だ。
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