全人類がプリキュアになった日 「HUGっと!プリキュア」が示した「こうでなければならない」からの脱却サラリーマン、プリキュアを語る(2/3 ページ)

» 2019年01月24日 18時00分 公開
[kasumiねとらぼ]

「こうあるべき」からの脱却

 「HUGっと!プリキュア」という作品では、「こうあるべき」「こうしないといけない」からの脱却が提起されていました。

 「女の子は、こうあるべき」。
 「男の子は、こうあるべき」。
 「お姉さんは、こうあるべき」。
 「社会人は、こうあるべき」。
 「育児は、こうあるべき」。
 「大人は夢を見ちゃいけない」。
 「子どもは、親の言う事をきかないといけない」。
 「自然分娩こそが正しいお産」。

プリキュア HUGっと!プリキュア 映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア スター☆トゥインクルプリキュア スタプリ 「帝王切開は正しいお産」を提示した第27話

 「HUGっと!プリキュア」で描かれた世界観は、そういったしがらみからの脱却を目指すものであり「個人が自由に選択できる世の中になると良いよね」という提起をしていたのではないのかな、と自分は思っています。

 同時にそんな「個人の自由」は決して良いことばかりではなく、つらく、残酷な未来が待っている可能性もあることを示唆したのもお見事な着地だと思います。

 野乃はなは言います。「生きるって苦しい。思い通りにならない。めちょっくなこといっぱいある」(※めちょっく=めちゃショックの略)。

 つらい現実が待っているかもしれない。それでも未来へ進みますか? 立ち止まりますか? そんな問いに、プリキュアは「仲間と一緒に、無限大の未来へと進む」道を選んだのです。


プリキュアは「友達がいない人」をどう救うのか?

 ただこの解決方法では、全ての人が救えるわけではありません。今作のプリキュアたちは「仲間と一緒に歩いていくこと」で、未来への一歩を進めました。

 今作に限らずプリキュアという作品では、ずっと「友達の大切さ」を描いてきています。

プリキュア HUGっと!プリキュア 映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア スター☆トゥインクルプリキュア スタプリ 友達がいるから、頑張れる

 それは当然ですよね。子どもたちへのメッセージとして「友達と仲良くしよう」は最優先されることです。

 では「友達を作ることができない、コミュニケーションが苦手な子どもたち」をどう救っていくのか? 「友達と一緒ならば未来へ進める」は「友達がいない人」を救えないのではないか?

 (※2014年「ハピネスチャージプリキュア!」ではその一端が描かれましたが、最終的には「仲間と一緒に」に収束していますよね)。

プリキュア HUGっと!プリキュア 映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア スター☆トゥインクルプリキュア スタプリ 仲間を大切にするプリキュアは孤独な人間をどうやって救うのか?

 もちろん「友達がいないのならば、勇気を出して作れば良い」と言うのは簡単ですけどね。

 それは次回作以降で、きっと提示されてくるのだと思います。プリキュアという作品は15年かけて、少しずつ子どもたちにさまざまな価値観を提示し、アップデートを続けてきたのです。野乃はなのように、一歩一歩、確実に前へ進んでいっているのは良いことだと僕は思うのです。


子ども向けアニメの果たす役割

 「女の子は誰だってプリキュアになれる」から「男の子もプリキュアになれる」になり、ついに「全人類がプリキュアになる」というところまで来ました。

 2000年代に入ってから日本における「ジェンダー観」は急速にアップデートされてきています。そんなジェンダー観の変容に対し、子どものころに見るアニメーションの果たす役割はとても大きいものだと自分は思います。

 多くの子どもたちは「プリキュアシリーズ」を見て、幼稚園でのお友達との会話がはじまったりして「子どもの社会」は大きく広がっていきます。

 プリキュアは子どもたちのためのアニメーションです。

 「なんでもできる、なんでもなれる」「あなたの未来は無限大」「つらいこともあるかもだけど、未来へと進もう」「プリキュアは諦めない」を子どもたちに提示し続けてきた「HUGっと!プリキュア」。

 その「なんでもできる」をうわべだけのきれいごとにしないために、性差から年齢差、ルッキズムや、家父長制から出産まで、多岐にわたる描写が必要だったのだと思います。

 難しい描写から逃げずに、やや大人向きと思えるすさまじく濃い内容を、直接的な表現でひたすら描いてきた「HUGっと!プリキュア」。

 そこで語られた言葉や表現は、まだ小さな子どもたちに完全には届いていないのかもしれません(だって大人でも咀嚼(そしゃく)するの大変ですもの。いや、でもそれは子どもをばかにしすぎでしょうか。子どもは大人以上にきちんと理解しているかもしれませんね)。

 そしていつの日か、子どもたちが大人になっていく過程で困難にぶつかったとき「あのとき、プリキュアはあんなことを言っていたな」って思い出してくれるのじゃないかと、僕はそんな未来に期待しています。

 プリキュアで育った子どもが、この先の未来を作っていくのです。

 「なんでもなれる、なんでもできる。輝く未来を抱きしめて!」は伊達(だて)ではないのです。

 さて、2018年「HUGっと!プリキュア」では全人類がプリキュアになりました。今や、人間にとどまらず妖精も、異世界人も、アンドロイドさえも、プリキュアになっています。

 そして2019年の新シリーズ「スター☆トゥインクルプリキュア」ではついに「宇宙」に進出です!

 宇宙人プリキュアも登場し、ますます盛り上がっていくプリキュア。もう、どうなっちゃうのか想像もつきません。

 とても、とても、楽しみですよね。

プリキュア HUGっと!プリキュア 映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア スター☆トゥインクルプリキュア スタプリ 2019年新シリーズ「スター☆トゥインクルプリキュア」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた