同人誌の“適正価格”ってあるの? 同人活動は「もうけちゃダメ」なの?(2/2 ページ)

» 2019年02月23日 20時00分 公開
[Amatiねとらぼ]
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同人誌の“相場感”は存在するのか?

 さて、ここからは壁でも企業でもない、普通のサークル参加者にとっての「同人誌の相場感」について。本を出そうと思った人なら、誰でも一度は「ページ数 部数 価格」とかで検索したことがありますよね? これにもまた、さまざまな意見があります。

  • ページ数あたり○円が相場!(マンガなら…小説なら…カラーなら…)
  • 全部売れて印刷代トントン程度なら良いと思う
  • 出展費用も回収して良い
  • 作品を書く労力までコスト換算するなら、それは趣味の活動ではない

 しかし、結論で言えば、相場感なんて存在しません。なぜなら、イベント出展はほとんどの参加者にとって赤字……つまり「消費活動」だから。一般参加者が予算の限り本を買うのと同様に、サークル参加者も予算の許す限りで本を作っているのです。

 印刷代を回収しなくても活動を続けられる人は、原価割れや無料で配布していいでしょう。

 交通費や出展費用を回収しなくても活動を続けられる人は、印刷代トントン程度でいいのだと思います。

 もし、「自分の妄想を書き連ねたこれで、ひとさまにお金をいただくの……!?」と自問自答してしまうなら、ざっくりでも「いくらまでの赤字なら次のイベントにも出られそうか」という計算をしてみてはいかがでしょうか。2万円くらい? それとも5万円くらいでしょうか? 人によっては20万円だって安いと感じるかもしれません。この判断は、年齢や職業、住んでいる場所によっても変わってくるはず。同人誌の価格は本そのものではなく、作り手の事情で決まるものなのです。

同人誌は「モノ」ではなく「コト」

 そして、現在は「商業コンテンツこそ無料」の時代です。

 商業的に成功した有名作品が無料で閲覧できるようになっている理由は、慈善精神ではありません。人気が出てアニメやパチンコ化、グッズ展開などのライセンスビジネスが可能になり、個人客に単価いくらでモノを売る必要がなくなったのです。

 消費のトレンドは、所有する「モノ」から体験や経験を共有する「コト」に移っています。従って商業コンテンツの無料化はさらに進んでいくでしょう。そんな中で同人誌即売会は、「作家さんから手売りで本を譲ってもらう」という体験、つまり「コト」に価値のあるイベントなのです。

 同人誌即売会は、クリエイター個人に直接お金を渡して「あなたの作品を支持します」と対面で応援できる貴重な機会です。その「コト」にどれだけ予算を割けるかは、全て参加者個人個人の事情によって異なります。

 繰り返しますが、ほとんどのサークルはもうけてなんかいません。実際、コミックマーケット準備会の調査(2011年)によれば、コミケ出展だけではなく、他のイベントや委託販売等も含めての”年間収支”で6割超は赤字という結果が出ています。

 ほとんどの参加者がそのことを知っています。誰かが同人誌でもうけているように見えて不快に思ってしまう人がいるとしたら、問題はその人自身のほうにあるはずです。

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