妹が居て温かな家庭があって胸があって可愛くて性格も良いのに、強欲な! 「かぐや様は告らせたい」8話(1/2 ページ)
藤原書記の出番が減るとシリアス度が跳ね上がります。
恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディー。とっても愛しくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。
白銀妹への熱烈なラブ
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。
しっかり登場するのは初めての、御行の妹・白銀圭(しろがね・けい)。中等部の生徒です。髪の毛が真っ白で透き通るような美少女。かぐやは目つき悪い人フェチなところがあるので、妹である彼女の顔にもすっかり夢中。
かぐや「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ!!」
割と真実だと思います。意中の相手の家族や友人知人に「いい人だよねー」と捉えられたら、道は拓きやすい。特に身内であれば、家族ぐるみの交流の可能性すら生まれる。かぐやも最初はそう考えていました。
かぐやお得意の、妄想シミュレーション。その結果イメージとして浮かんだのは、御行との親密な関係構築だけではなく、圭との姉妹関係「良いですよこれ」でした。
想像の中の圭は「私の考えた最強の妹」みたいな状態。圭に理想を重ねたらぴったりだった、という感じ。
彼女がこういう妄想に走ったのには理由があります。コマにも書かれているように、もともと長年妹が欲しかったから。圭は眼力の強い、視線のはっきりした女の子。まっすぐ自分を見て愛してくれる人を欲していた、かぐやの心にスイッチが入るのも無理はない。
「好きな人の家族」に出会ってドキドキし、「自分もその一員」になる妄想をするのは、よくある話だと思う。
ただ、彼女のその妄想は、一般的な人の想像とは少々異なっていました。まずかぐやは、「家族」というものにほとんど触れて生きてこなかった。家族愛に飢えているし、家族愛を知らない。御行と二人で親しくなる妄想も散々してきたけれども、今回の「家族」妄想はうるっとくるほど。ギャグっぽいコマだけど、多分本心。御行の家は貧乏なんだけれども、そのへんをちゃんと考えることができていないあたり、かぐやの育ってきた環境もわかります。
藤原書記は以前から圭と仲が良かったらしく(彼女の妹が圭と同じ学年だから)、キャッキャと手をつないではしゃぐ関係。
それ! かぐやが心の底から欲しくてもだえ苦しんでいたやつ! 今までの人生でやりたくてもできなかったやつ!!
かぐや「妹が居て温かな家庭があって胸があって可愛くて性格も良い……その上まだ妹を増やそうだなんて……強欲」
恨み炸裂。この文言、藤原書記への逆恨みにも見えますが、実は全部藤原書記の褒め言葉なのが面白い。性格良いと思ってたんだ。自分には欠けていて藤原書記が持っている物への純粋な嫉妬。
寂しいんです。
大丈夫かぐや様。藤原書記、変だけど優しいから。
天才に追いつくために
かぐやは、この作品内では「天才」として描かれています。基本的に何でもできる。物覚えがよく、適応力が高い。努力をすることで、色んなことでパーフェクトをとっている。
できすぎるというのは厄介なもので、完璧なことを人に疎まれがち。なので彼女は常に6割しか出さないという処世術を身に着けているそうな。
けれども彼女、本気になっても唯一勝てない相手がいる。
会長の白銀御行。学年首位の彼には、どうやっても勉強で勝てない。本気を出した上での、初の敗北。
ここが彼女の心理を知る上で重要な部分。好きな相手が自分の上に立っていることを、誇りに思うとか、さすがと感じるとかしない。倒すべき相手として見て、彼女はひたすら牙をむきます。
でも勝てない! ひたすらに悔しい。なんだかんだでタフなかぐやなのに、ここまで精神的に追い詰められてしまう。
普段6割しか出さないのは、相手が自分とは並ばない、というのを悟っているから。悔しがれるのは、相手が自分と同じラインにいることを認めているから。
御行は張り合ってもいい相手だと認めているから、彼女は悔しいと感じている。かぐやの人生で、ここまで本気を出せる相手って、多分他にいない(藤原書記ミラクルを除く)。
もっとも御行の方は、本気なんてもんじゃないです。彼女に認められるために、自分の限界を越えて勉強をしています。
「天才と張り合うという事がどういう事か どれだけの犠牲を払えばいいのかを 勉学は彼にとって唯一の武器である」
御行は努力家だけど、天才ではない。彼女が歩む道に並ぶには、がむしゃらに頑張り続けるしかない。
かぐやが歯を食いしばって涙をながすほど悔しがる相手になるためには、御行には相応の苦労が必要。真剣に勉強で殴り合い、感情を燃やし、自分のあらゆるものをつぎこんで、お互いボロボロになる。この戦い自体が、各々の心の成長と、相手への意識を育む栄養になっています。
ちなみに藤原書記は192人中101位という、なんとも言いようのない平凡な順位でした。
気高いということ
会計の石上優の赤点騒ぎの際、かぐやの性格が別の角度から浮かび上がります。
不登校だったことがたたって勉強ができない石上。ほぼ監禁状態でかぐやの指導を受けます。
石上は、人が自分と一緒にいるのを避けます。自分が人嫌いだからというのもあるけれども、関わった人が悪く言われかねないから。
なぜ石上が皆に嫌われているのか、なぜ生徒会会計にいるのか。ここは致命的なネタバレに当たる部分なので、今回は伏せておきます(原作では全て描かれています!)。
「噂」というのは厄介なもの。特に中高生の頃は、いつまでたっても消えないことがあるから怖い。
今回陰口している子たちは、確かに石上が傷つく行動を取っていますが、「かぐやが被害に巻き込まれないように」という心配からのもの。悪意ではありません。
かぐやは噂話をする少女たちに、自分を思いやってくれたことに感謝をちゃんと述べつつ、毅然とした態度を取ります。
かぐや「私は周囲の評判で人を判断しません 石上くんは私が 私の目で関係を持つに足ると判断した人物です」
先ほどの、会長に対しては全力で勉学で勝負していたように、彼女はプライドを持ち、自らの価値観を信じている人物です。頑固とか冷酷にも見えますが、御行は彼女を「気高い」と称しました。
言葉では嘘をつくけど、信念では決して自分に嘘をつかない。そこに「気づく前」の状態でおびえているのが石上、「気づいて目で追ってしまう」のが御行。二通りの主人公視点で比較すると、かぐやの人物像が多角的に見えてきます。
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