「負けるビジョンは見えない」 パキスタンは格闘ゲームの魔界? 鉄拳のプロに“パキスタン最強説”について聞く
中東で行われた招待制大会は韓国の圧勝でした。
パキスタンは格闘ゲームの魔界なのか――そんなウワサがネットで話題になっています。きっかけとなったのは2月17日から2月19日まで開催されていた格闘ゲームの祭典「EVO JAPAN 2019」の「鉄拳7」部門でパキスタンの「Arslan Ash」選手が優勝したことでした。
鉄拳界では、プレイヤーの層の厚さや実績から「最強国は韓国」との認識が広まっています。しかし、EVO JAPANでAsh選手が優勝した後「パキスタンには日本や韓国に負けないくらい強いプレイヤーがいる」(ファミ通AppVS esportsのTwitterより)などと発言したことから、「パキスタンは修羅の国なのではないか」「戸愚呂弟が『B級妖怪だった』と同じくらいの衝撃」と話題に。その後、パキスタンの鉄拳事情を報じたwithnewsの記事「格ゲー業界騒然!パキスタン人が異様に強い理由、現地で確かめてみた」が掲載されたことで、再度大きな注目を集めることに。
これまで目立った活躍をしていなかった(さまざまな事情により「できなかっただけ」の可能性もありますが……)パキスタンが本当に最強なのか――その疑問に対する1つの答えとなる大会が、実は3月末に行われていました。サウジアラビアで行われた招待制の大会「TrueGaming Invitational」で韓国勢・中東勢・日本勢の猛者プレイヤーが激突したのです。
“魔界統一トーナメント”と称されたこの大会では中東勢の活躍が期待されていましたが、結果は韓国勢が上位を独占。内容的に見ても、ダブルエリミネーションルール(1度負けても敗者復活側から勝ち上がれるルール)が採用されている中で韓国勢は他国の選手に負けておらず、セットもほとんど落としていないなど、「圧勝」と呼ぶにふさわしいものでした。
1人でパキスタンから日本に乗り込み、優勝をかっさらうというドラマチックな展開もあり、格闘ゲーム界の新たな強豪として注目されるパキスタン。ネットを席巻した鉄拳パキスタン勢の強さはどれほどのものなのか、プロゲーマーのpekos選手 (MVP/DHG所属)に見解を聞いてみました。
パキスタン以外にも埋もれている強豪はいる
pekos選手にAsh選手の印象を聞くと、「プレイスタイルで言えば防御型。韓国勢は特に防御がしっかりしているプレイヤーが多いですが、それでも守り勝っているのが印象に残りました。焦りも見られず終始冷静なプレイヤーですね」と語ります。また、「守りに重点を置いているので強さが見えづらい面もあります。ただ、僕は一美(Ash選手のメインキャラクター)戦が得意なので、長期戦なら分からないですが、もし対戦しても負けるビジョンは見えないですね」という強気な発言も。
鉄拳界におけるパキスタンの立ち位置は“突如現れた強豪国”。今後の躍進が期待されるところですが、pekos選手は「“強くなる環境づくり”という意味では現状やり尽くされているかな、という印象です。パキスタンという国全体が今の立ち位置以上に強くなれるかどうかについては……期待したい部分もありますし、疑問もあります」と語ります。
パキスタン勢の課題としてpekos選手が挙げたのは「知識の格差をどう埋めるか」という問題。選手層の薄い国の場合、必然的に多様なプレイスタイルの選手と対戦経験を積むことが難しく、初めて見るセットプレイや対戦経験の足りないキャラクターへの対応が遅れがちになるためです。pekos選手は「今年の2月に中東の強豪選手と戦ったときも、対策不足なのかな? と思うポイントがありました」とも語っています。
現在の鉄拳の情勢については「韓国がいまだに最強。それ以下が団子状態となっているところにパキスタンが加わったイメージです」とpekos選手。「選手層が厚く成長しやすい環境が整っており、eスポーツの存在が国全体で認められているのも韓国の強み。韓国では専業プロゲーマーがほとんどですが、日本では兼業プロゲーマーもまだまだ多いです」と語ります。
また、「ヨーロッパなどは3D格闘ゲームが盛んなので、実際に足を運ぶと無名だけど強いプレイヤーがまだまだいると感じます。実績がないために世界大会に出てこられない選手もたくさんいます。世界にはまだまだ強いプレイヤーがたくさんいるんです」とも。もしかすると、“魔界”はパキスタンだけでなく、世界各地に存在するのかもしれません。
なお、Ash選手は5月2日から開催される国内最大規模の格闘ゲーム大会「KSB」に出場予定(関連記事)。EVO JAPANの王者に立ち向かう日本勢にも注目したいところです。
※Twitterでは、Ash選手が優勝後のコメントで「パキスタンにはもっと強い選手が7人おり、上位6人は別格だ」と発言したとされているものの、そうした発言を行った記録が見つからなかったため、記事中の表現は“「パキスタンには日本や韓国に負けないくらい強いプレイヤーがいる」などと発言した”としています。
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圧倒的な防御力を見せつけました。
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