「とりあえず目的をなくそう」 コトリコ流、面白おかしく暮しながら“大量の知識をインプットする”方法 (1/2)
やりたいことをやる。
4月24日、柏書房から『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』という無茶なタイトルの書籍が発売されました。
著者は山下泰平さん。ネット上ではコトリコさん(@kotoriko)と言ったほうが通りが良いかもしれません。趣味で手あたり次第「明治娯楽物語」を読みあさるうちに、何十万文字も文章を書ける程度には詳しくなっていた――という山下さんに、「楽に無駄な知識をインプットする方法」について書いてもらいました。
※記事最後に書籍の試し読みあり
山下泰平(やました・たいへい)/kotoriko(コトリコ)
1977年生まれ、宮崎県出身。明治の娯楽物語や文化を調べて遊んでいる。大学時代に京都で古本屋を巡るうち、馬鹿みたいな顔で手近にあるどうでもいい書籍を読み続ける技術を身に付ける。明治大正の娯楽物語から健康法まで何でも読み続け、講談速記本をテキスト化したものをインターネットで公開するうち、2011〜13年にスタジオジブリの月刊誌「熱風」に「忘れられた物語―講談速記本の発見」を連載。2015年12月に「朝日新聞デジタル」に「物語の中の真田一族」(上中下)を寄稿。2017年2月にブログ記事「舞姫の主人公をボコボコにする最高の小説の世界が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介する」がバズる。いまだに手近にあるどうでもいい書物を読み続けている。インターネットでは<kotoriko>名義でも活動。
大量の知識をインプットする
明治娯楽物語に関する本を出した。というわけでこの分野に関して私はそれなりに詳しいわけだが、明治娯楽物語に詳しくなるぞッ! 俺は一生を明治娯楽物語の研究に捧げるんだッ! と決意をしたわけではなく、面白おかしく暮していたら、知らないうちに知識が増えていたという雰囲気だ。特に苦労などはしていない。というわけで、楽に無駄な知識をインプットする方法について解説をしていく。
まずインプットする目的であるが、インプットするためである。ここを間違えてはならない。仕事や将来のためだとか、そういう目的を持つのは止めてしまい、面白いからインプットするのだと思い込む。そんなことするメリットがあるのかっていうとないのだが、面白いのだから十分であろう。この方法は目的を極限まで減らすことがキモになっている。とりあえず目的をなくそう。
次にインプットする対象だが、面白いものでなくてはならない。なぜなら面白くないものはつまらないからである。加えて自分が一定の知識を持っているものを対象にする。どのくらいの知識量かというと、アマゾンなどで好みのものを探せる程度で十分だ。音楽を聴こうと思い、検索をして好みのものを選ぶ。ほとんどの人が何気なくやっている行為だが、私は音楽をほとんど聴かないため、好みの音楽を探すことができない。なにも知らないため、検索するワードすら思い付かない。好きなものが選べるというのはすごいことで、その時点で楽しむためのスキルは揃っている。
最後に対象の知識を増やすためのソースを選ぶ。インプットの速度を上げるための方法は多くあるが、ほとんどの場合、ソースの重要性について語られることはない。優れたソースというのは圧倒的な存在で、小手先の技術などやすやすと凌駕してしまう。それでは優れたソースの条件はというと、次の3点となる。
- 無料に近い
- 消費し尽せないほどの量
- スマホでも楽しめるほどアクセスが容易
無料に近いため、負担がなく長く続けられる。圧倒的な量があるから、次々に消費できる。スマホを使って、いつでもどこでも消費できる。
書籍であれば国立国会図書館デジタルコレクションなどの各種デジタルアーカイブ、音楽や映像資料は詳しくないので知らないが、聴き放題やらYouTubeやら各種サービスがあるはずだ。とにかく圧倒的な量があり使いやすく、利用料金の安いサービスを探し出す。
次にソースに自分の好みを合せる。ここで重要となるのが、普遍化することによって好きさをボヤかすという技術である。私は文芸が好みであるのだが、これをガンガン普遍化させていく。究極にまで普遍化させると、文字で人が動いていることが表現されているものが文芸であるという結論に至る。人が動いていることが表現されている文章というものは多い。だから細かな内容にこだわらなければ、国立国会図書館デジタルアーカイブで延々と読むことができる。
ここで邪魔になるのが目標や目的で、この分野を勉強したいだとか、将来的に役立てたいだなんてことは考えない。文字で人が動いていることが表現されてりゃなんでもいいだろうというわけで、やがては明治大正のハウツー本や宗教書なども読むようになっていく。徐々に好みの幅が広くなり、ジャンルに意味すら見出せなくなってしまう。
ここまで酷くなくてもいいが、とにかく音楽なら速いのが好きとか、絵ならボヤっとしたのが好きだとか、そういう雑な好みにしてしまい、無限にあるコンテンツを限界まで消費していく。これを続けながら面白おかしく暮していたら、知らないうちに知識が増えていく。
毎日急がしく幸せに暮しているのであれば、別にこんなことはしなくてもいいとは思うのだが、好みを雑にして広げてしまうという技法はわりと使える。飲食店で注文と異なる食べ物がやって来たとして、焼いてあるのは同じだからまあいいかと思える。食ったら意外に美味かったなんてこともあるだろう。これは趣味や仕事でも起きるようなことであり、よく似たもんだし手近にあるものでいいじゃんという態度でいると、なんだかんだで得することが多いような気がしないでもない。
試し読み:「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
「袋いりません」「では全部シール貼ります」 レジで起きた予想外の気まずい時間を描いた漫画に「あるある」「あばばばってなる」
整形男子アレン、落差激しい歯抜け写真を公開 「歯が無い姿見ると、ホント精神参ってくる」
国交省公式Twitterが突然の乱心「ばばばばばばえおうぃおい〜(略)で通行止を実施しています」 原因はアナログデータの受信音?
「絵にしか見えないガンプラ」に頭がバグる! アニメ塗りのユニコーンガンダムがまるで合成写真
【なんて読む?】今日の難読漢字「若気る」
「歯茎を削る…正直こわかったです」 有村藍里、“口元ブサイク”改善の矯正手術を告白
「好きだったときの気持ちに戻る薬」を飲んでダメ彼と付き合い続ける彼女 その末路を描いた漫画が悲しい
「にゃーん!!」 めったに鳴かない猫に呼ばれ、急いで向かうと…… 猫ちゃんの思わぬ報告を描いた漫画が面白い
「ママ〜」→「えっ保奈美さん」 柴咲コウ、「35歳の少女」母役・鈴木保奈美の300万円獲得で“大人”に戻ってしまう
先週の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 嫌がらせ急ブレーキで追突 トラクターの進路を妨害した「あおり運転」ベンツ、ぶつけられたと運転手がブチギレ
- 猫「雪なんてへっちゃらニャー!」 雪の中を豪快に突き進む猫ちゃんに「ラッセル車みたい」「ワイルドかわいい」の声
- 「Lチキひとつ」 → 買った物をよくみると? コンビニで犯したありがちな間違いを描いた4コマに「あるある」「逆もある」
- 柴犬「きゃほほーーい!!」 初めての雪に“喜びが限界突破した”ワンコの駆け回る姿がかわいい
- 「ホント太るのって簡単!」「あっという間に70キロ」 内山信二の妻、夫に生活リズムを合わせた“ふとっちょ時代”公開
- ルーフから赤色灯がひょっこり 埼玉県警、スバル「WRX S4」覆面パトカー3台を追加導入!? Twitterにアップされた目撃情報が話題に
- 益若つばさ、YouTubeで12歳息子と共演 礼儀正しい振る舞いに「教育がちゃんとされてる」
- トップの座を奪われ……美大生が天才の編入生を刺し“殺す”漫画に「泣きそう」「同じ経験した」の声
- タイからバズーカ砲をかかかえたようなミニバイク「GUNNER50」が日本上陸 思わずキュンと来ちゃうやばいデザイン
先月の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 井上咲楽、“太眉”を人生初カットで別人に 「可愛いすぎます」「さらにファンになりました」と大反響
- 元「うたのおにいさん」今井ゆうぞうさんが脳内出血で急逝 生前最後のブログには“目の異常な充血”
- 2021年夏の祝日、東京五輪で変更 カレンダーの更新を
- 太眉卒業した井上咲楽、美しさ光るアップショットに大反響 「大人っぽーい」「すっかり美しい路線に」
- 「逃げ場のない恐怖」「爆発音で目が覚めた」 JAL904便がエンジントラブルで緊急着陸、乗客が撮影した映像が怖すぎる
- マックポテト「Mサイズのみ」味が変との声がネットであがる マクドナルドに話を聞いた
- 「これは天才」「来年のノーベル賞候補」 ホットサンドメーカーで焼く「ホットサンドケーキ」が悪魔的サクサク感で話題に
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- アロンアルフアは5秒で接着→「時間が余ったので猫動画をご覧ください」 15秒CMのペース配分がおかしい