対談取材時の作家と編集者の関係は「ポケモンとトレーナー」? 漫画家が恐れる“呪いをかけてくる”編集者とはコナリミサト×高野ひと深(1/2 ページ)

『凪のお暇』作者×『私の少年』作者。飲酒トークで本音を語ります。

» 2019年05月11日 11時00分 公開
[ひらりさねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 『凪のお暇』『私の少年』。ともに30歳前後の女性を主人公としながらも、まったく違う魅力を持った作品の著者コナリミサトさんと高野ひと深さんは、実は10年来のご友人。お酒が好きだという二人に、コナリさんの仕事場で盃をかわしながらの「飲酒トーク」をしてもらいました! 第3回では、同席している二人の担当編集さんにも質問。漫画家と編集者の相性について、語り合いました。


私の少年私の少年 『凪のお暇』『私の少年』

対談取材は「ポケモン」になった気がしてくる

――21時近くになりました。ビールにワインに日本酒も飲んで、さすがに酔っぱらってきました。

コナリ: 今日は私、担当編集の二人にも話してほしいんですよ。対談取材って、いつも作家・編集のペアが2組居合わせるわけですけど、基本的に作家しかしゃべらなくて、編集さんは後ろに控えてるじゃないですか。なんか自分が、編集さんのポケモンになったみたいな気分になるんですよ。

高野: わかる!!!

コナリ: 「いけ! コナリ!」って感じで、こう、面白いことを言わなければ……というプレッシャーを勝手に感じてしまう。ねとらぼさんのインタビュー記事では、編集さんがよくしゃべっているし、今日はみんな飲酒してるし、二人にももっと話してほしい。私たちもポケモントレーナーみたくなりたいです。

編集・菅原(コナリ担当): えー(笑)。

編集・三村(高野担当): いやいや……。


alt 飲酒中のコナリさん(左)、高野さん(右)

コナリ: お互いの作家さんのいいところとか、打ち合わせで気をつけていることとか、そういう話を聞きたいです。

菅原三村: (笑)。

コナリ: 「今、揺れてるな」って感じることありますもん。他の作家さんに気を取られてるな〜って。

高野: その気持ちがさっき話題に出た「なんで安田先生とそんなに仲いいんですか!?」につながってるんじゃない?(笑)

――揺れについてはわかりませんが、取材を依頼するほうからすると、三村さんも菅原さんもとにかく素早くレスポンスをくださるので、ありがたいなと思いました。

高野: 三村さんは、確かにめちゃくちゃレスポンスが早いです。

コナリ: それって、返信を早くしないと気持ち悪いんですか?

編集・三村: そうですね。自分が気持ち悪いのもあるんですけど、作家さんに気を使わせたくない。高野さんは、特に気を使う方ですし。ぼく、担当する前から高野さんに感想メールをお送りしていたのですが、そちらへの返信の際に、高野さんのほうから「返信不要」って書いてくださるくらいで。

――ああ、メールの往復をどっちで終えるか問題、ありますよね。そういえば漫画家さんと編集さんって、電話でのやりとりが多いイメージなのですが。

高野: 私、電話が苦手なので、メール中心でお願いしてます。

コナリ: 私もメール派です。

高野: 漫画家同士の飲み会で、「いかに電話が嫌いか」って話は結構出るよね。「電話が来るときは言いくるめられるときだ」とまで言ってる人もいるくらいで。私も、なんとなく嫌なお知らせがきそうで苦手なのはある。

編集・三村: こちらとしてはもちろん作家さんの希望にあわせたいんですけど、作家さんによっては、ずっと家から出ずに作業していて、アシスタントもいないという方もいるんですよね。だから、うっとうしいと言われることもあるけれど、様子をうかがう意味もこめて、電話での雑談をかわすよう心がけてます。


alt 電話の返事をメールで

テンプレートに当てはめないでほしい作家ごころ

コナリ: きっと信頼関係次第ですよね。私は、菅原さんに関しては、やっと電話でも平気になりました。あっ、菅原さんのいいところもっと話さないと!

――(笑)。菅原さんとコナリさんは知り合ってからどれくらいなんでしょう。

編集・菅原: 2年くらいですよね。

――以前のインタビューで、デザイン事務所主催のキャンプで知り合ったという話がありましたよね。第一印象は覚えてますか?

コナリ: 「目が大きいな……」って思いました。

編集・菅原: (笑)。

――コナリさんから見て、菅原さんの編集スタイルのここがいい! というところはありますか?

コナリ: うーん。たくさんの方に読んでもらえる手応えを感じる作品を描けるようになってから担当いただいたのが、菅原さんだけなんですよね。だから、今までの人と比べられない部分もあるかな……。あ、でも「大切にしていること」がわかるのでやりやすいなと思います。凪のお母さんとのこととか、家族にかかわることへの意見に、菅原さんのポリシーを感じるんです。でも、ネームに指摘を入れるときも、有無を言わせないような形じゃないのがいい。「なんかいやです」的なチェックが入って、それを私に考えさせてくれる。

高野: あまりに具体的なアイデアだとそのまま反映せざるをえないから、ふわっと言われるほうが逆にありがたい……ってときあるよね。

コナリ: そうそう。「どうしてですか?」とやりとりすることで、さらに解釈が深まる

――三村さんと菅原さんは、そもそも何名くらい作家さんを担当しているんですか?

編集・三村: あんまり直接の担当は持ってなくて、4人くらいですね。

編集・菅原: 私は、8〜9人くらいの連載を担当してます。

コナリ: 菅原さんは編集長(※Eleganceイブ)なのにすごいんですよ!

――作家さんとはどれくらい対面で会われるんですか?

編集・三村: 人によりますよね、週刊連載の方だと多いかな。会ったほうがいいのか会わないほうがいいのか、密な関係のほうが面白くなるのかとか、本当に作家さんそれぞれ違うので、「こうだからこう」とは言えない。「違った!」って思って、改善することもあります。ネームが出るまではわからないんです。

コナリ: 作家からすると「テンプレで当てはめられる」のがすごいいやなんですよ。三村さんの今の回答を聞いて、すごく安心しました。

高野: わかるわかる!

コナリ: ひと深ちゃん、何か三村さんに聞きたいことないの?

高野: ……私との仕事、やりづらくないですか?

コナリ菅原: (笑)。

編集・三村: 高野さん、それすごく気にしますよね! この前も、二人で飲んだあとに「今日どうでした?」って聞いてきて。

――「答え合わせ」だ。

高野: 誰に対しても「気持ちよく返せなかったかもな〜」って思っちゃうんです。


ビューティーアドバイザーにすら気を使う高野ひと深

コナリ: デパートもコスメカウンターでも気を使っちゃうんでしょ?

――えっ。

高野: そうそう。私、コスメカウンターに行くと必ず、ビューティーアドバイザーさんを褒めるんですよ。「その発色ステキですね〜。それ、どのアイテムですか?」とか。

――それはむしろ、店員さん側がお客さんにやるやつですよね(笑)。

高野: 相手に気持ちよくなってほしいんです。気持ちよくなってもらえたら接客がもっと良くなるかもなって。だから、暇なビューティーアドバイザーさんが好き。新宿なら断然高島屋。

コナリ: 私も勧められて行ったよ! 親切だよね。

高野: ひどいことされないよね。

――何をされたか気になりますが(笑)、三村さんと高野さんの話に戻りましょうか。「やりづらい」と感じたことは実際ありますか?

編集・三村: 全然ないですよ。むしろこっちが申し訳ないくらいちゃんとされています。

高野: 私、ものすごく心配性なんで、締切はかなりきっちり守ってるんです。学校の夏休みの宿題すら、7月のうちに出していたくらいで。

――真面目すぎる。逆に高野さんが、過去に接してきた編集さんを振り返ったときに、新人漫画家さんにアドバイスしたいことはありますか?

高野: うーん。仕事しやすいのはやっぱり、作家に呪いを与えるような言葉を使わない編集さんですよね。

――呪いを与えてくる編集者がいると。

高野: います、呪いタイプ。20代の頃、ネームの内容に対して「女として枯れてるね」と言われたり、女だというだけで「顔出したら?」と求められたり、メガネをして編集部に行ったら「なんでメガネしてきたの?」って言われたり。

編集・菅原: 呪いというかハラスメントですね。

コナリ: あとでこっそり名前を教えてほしいよ。ひと深ちゃんのかわり私が呪詛唱えとく。呪い返しだよ。

高野: そういう経験を経ているので、三村さんは、全然そんなこと言わないってだけで、安心します。自分の所有物にしようとか、コントロールしようとかしてくる人、周りの話を聞いていても存在しているんですよ。新人さんには気をつけてほしいですよね。


ハラスメント

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」