的確な描写に「弓道警察」も納得? 「スター☆トゥインクルプリキュア」の弓道描写がスゴかったサラリーマン、プリキュアを語る(2/3 ページ)

» 2019年05月23日 18時00分 公開
[kasumiねとらぼ]

香久矢まどか、弓道大会へ

 この第16話「目指せ優勝☆まどかの一矢!」では、香久矢まどか(キュアセレーネ)の物語が描かれました。自分がプリキュアであることを、宇宙人の調査をしている政府高官の父親に隠していることに負い目を感じているまどか。そんなまどかが父のためにも弓道大会で優勝したいと大会に臨みます。「迷惑を掛けている父のために、優勝したい」のですよね。まどかさん。父親を尊敬していることが伺えます。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ 香久矢まどか(右)と父、冬貴(左)。冬貴は政府高官です

 今話で最大のテーマとなったのが「自分を信じること」の意味です。年下のライバルである「那須ゆみか」は「友達を作らず、勝つために自分一人で頑張ってきた」女の子。まどかに「友達と仲良しごっこをしているから、弱くなった」と言い放つ芯の強い娘です。

 そんな一人で頑張るゆみかに対し、まどかは「友達と過ごす自分」が正しいのか逡巡(しゅんじゅん)してしまいます。それはゆみかの「他人を受け入れず一人で戦う」「信じるのは自分自身にのみ」という考えこそが、まどかが尊敬する父親と全く同じことを体現していたからにほかなりません。そう、今回の相手は「尊敬する父親」と同じ存在だったのです。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ ライバルの那須ゆみか。香久矢まどかよりも年下の中学1年生(YouTubeから)

「自分を信じること」の本当の意味

 まどかは尊敬する父の教えである「弓道は自分と向き合い自分を鍛える武道」そして「最後に頼れるのもまた自分だけ」という教えを信じ、ずっと守ってきました。

 そんな中行われたライバルゆみかとの優勝決定戦。どちらかが矢を外すまで戦いは続きます。緊張感と矢を放ち続ける疲労で極限状態の2人。2人とも「頼れるのは自分だけ」という信念は同じなのです。ただ、ゆみかが「自分を信じる」=「全てを捨て、一人で背負い込む」のに対し、まどかは「自分を信じる」=「友達からの応援を受けた自分を信じる」としたのです。

 「自分を信じること」の解釈に差があったこと、それが勝敗を分けることとなりました。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ まどかを応援する星奈ひかる、天宮えれな、羽衣ララの3人

 まどかは、父から教えられた「最後に頼れるものは自分だけ」という考えを、極限状態の中「自分のイマジネーション」で再解釈し、「友達の存在こそが、今の自分の一部であり、そんな自分を信じる」ことに昇華させ、見事勝利をおさめたのです。それは尊敬する父の教えを守りつつも、それを自分なりに解釈し、新しい道を歩みだしたまどかの第一歩だったのです。

 そしてラストシーンでは厳格なまどかの父も「友達の応援のおかげで勝てた」ことを認めているようでした。それはすなわち、娘の成長を父親が認めたことにもつながります。このまどかと冬貴の父娘の関係性はプリキュアシリーズでも珍しい緊張感があります。番組開始からずっと丁寧に関係性を描いているこの2人。この先、まどかのプリキュア人生に関わるようなもっと「ものすごいドラマ」が待ち構えているような気がしてなりません。

一人で頑張ることを否定しない

 そして今回のお話で良かったのは、決して「一人で頑張ること」を否定しなかった、ということです。

 プリキュアに限らず子ども向けアニメーションでは「友達を大切に」「友達と仲良く」「友達といれば強くなる」を必然的に描きます。もちろん「友達が大切」は素晴らしいことですし、プリキュアを見ている子どもがこれから生きていく社会では「友達」は必要な概念なのかもしれません。ただ裏を返せばそれは「一人で頑張ること」「友達が作れない子どもたち」を否定することにつながります。それでは「友達を作ることが苦手な子どもたち」をプリキュアは救えないことになってしまいます。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ 友達は大切だが、一人でいることも否定しない

 だからこそ、今回の「スター☆トゥインクルプリキュア」では、決して「一人で頑張ること」も否定しなかったのです。

 実際、ライバルのゆみかはまどかと互角の勝負をしました。2人とも一人で頑張りました。最後の最後、極限状態に置かれたときに、「一人で頑張ることの意味」が異なっただけにすぎなかったのです。

 決して「友達がいない人は弱い」「友達を作ろう!」というような描写にしなかったこと、そういう優しい描写が多々みられるのも「スター☆トゥインクルプリキュア」の良さだと思います。

いろんな家族像を肯定する世界

 今回は「友達」そして「家族」がまどかの最後の力となりました。「スター☆トゥインクルプリキュア」では、例年にも増して多様な家族が登場します。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ 多様な家族が描かれる「スター☆トゥインクルプリキュア」

 アニメ雑誌『アニメディア』(学研プラス)では、「スター☆トゥインクルプリキュア」の「家族観」について、東映アニメプロデューサーの柳川あかりさんがこんなことを言っています。

 企画当初は「多様性」をテーマにしていたこともあります。今は「多様性がある世界で生きてくためには、“イマジネーション”が必要だ」というところに落ち着いているのですが、当初のテーマであった多様性を家族構成にも活かしたくて、なるべく似通わないようにしました。だから、えれなのお父さんは外国人であり、ひかるのお父さんは年中どこかに行ってしまっていて、なかなか帰ってこない。いろんな家族像を肯定できればと思っています。
――お父さんが外国人というのも、これまであまりいなかったパターンですよね。
宇宙人がいれば、外国人であっても同じ地球人であることが際立つと思いました。
(『アニメディア』(学研プラス) 2019年5月号 P107)


 いろいろな家族像を肯定したい。雨宮えれなのお父さんはメキシコ人だけど、異星人キャラがいるので「外国人」はすなわち「地球人」という概念になる、ということのようです。前作「HUGっと!プリキュア」では専業主夫から父親不在の家庭、「アンドロイドとその開発者」までさまざまな「家族の形態」が描かれてきましたが、今作でもさまざまなスタイルの「家族」を描いていくようです。

 もちろんプリキュアというアニメーションのメインターゲットは子ども、ひいては「家族」であることから、どんな「家族観」も肯定していくことは当然ではあるのですが、「一様な家族観」に縛られずに生きていくことを、プリキュアを見ている子どもたちとその保護者にあらためて伝えていくことは、本当に真摯(しんし)な姿勢であると思います。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ 学校以外にも居場所がある

 また、同インタビュー記事では「星名ひかる(キュアスター)」が天文台という「学校外のコミュニティー」を持っていることを積極的に描写し、小さな子どもたちに「学校以外にも、世界が広がっている」ことを伝えたかった旨も語られています。プリキュアを見ているような小さな子どもたちは「親が全て」「幼稚園、学校の社会が全て」と視野が狭くなってしまいがちなところを、少しでも「世界は広いこと」「あなたの存在を認めてくれるコミュニティーは1つじゃない」ことをも訴えかけているのです。

プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア 弓道 香久矢まどか キュアセレーネ 星奈ひかる(右)には遼じい(左)という理解者がいる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/18/news145.jpg “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  5. /nl/articles/2412/17/news197.jpg 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  6. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  7. /nl/articles/2412/18/news059.jpg 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  10. /nl/articles/2412/18/news056.jpg 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」