「15時間後に締め切りが迫った漫画家の修羅場」描いた漫画 リアルさに震え、友情の奥深さに引き込まれる(1/2 ページ)

夢をかなえた漫画家と、諦めた友達の関係がぐっとくる。

» 2019年07月09日 19時30分 公開
[ねとらぼ]
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 15時間後に締め切りが迫った漫画家の修羅場を描いた漫画が、リアルな緊迫感やグッとくる友人関係の描写で注目を集めています。作者は漫画家の四位晴果(@haruka_shii)さん。

 締め切りは15時間後、未完成のページは12枚。学生時代からの友人で漫画家の安西から、佐渡は助けを求められます。アシスタントは他の作家と掛け持ちしており頼めない状況。ギリギリな状況に引きつつも、佐渡は原稿を手伝うことに。

締切まであと15時間

 かつて安西同様に漫画家志望だった佐渡は、すぐにカンを取り戻していきます。そんな佐渡の姿を見て昔を思い出し、つい「もう向こう見ずじゃ頑張れない」とこぼす安西。

 若いころは未来に期待し、努力すれば必ず報われると信じていた。漫画家になって10年、打ち切りばかりで代表作もなく、貯金も恋人もなく老後の保証もない……そんな現実に「どう満足しろっつーんだよ!!」と周囲のモノに当たり散らす安西。それでも、原稿だけはきれいに死守しているところにプロの性が見えます。

夢をかなえてもその先が常にバラ色とは限らない

 「お前は辞めたくせに……」と、漫画を辞めた佐渡に、安西は恨むような言葉を向けます。佐渡はそれを受け止め、「自分は特別」だという勘違いで10年突っ走れた安西をすごいと言いながらも、「俺がお前になれたら、後百年は勘違いして生きてやるぜ」と叱咤するのです。

 作業に戻った2人は、担当編集の話で盛り上がりながら原稿を進めていきます。そして気がつけばいつの間にか朝に。佐渡の姿はなく、安西は「睡眠不足のあまりリアルな幻覚を見た同業者」の話を思い出します。3日間眠っていない安西。原稿を手伝ってくれた佐渡は幻だったのか――?

 夢をかなえた先で苦しむ者と、夢を諦めた者。本音をさらけ出したり、叱咤したりできる安西と佐渡の関係性は胸に刺さるものがあります。シリアスなテーマでありながら、ギャグもありつつ緩急のある展開で、読後感が重くならないバランスも絶妙です。また「漫画家が描く漫画家の話」だけあって締め切り前の緊迫感がリアル。ちなみに作中に出てくる「3日間ほとんど寝ていなくて、眼の前にOLの更衣室が現れる幻覚を見た話」は作者の実体験なのだそうです。道理でリアルなわけだ……。

 読者からは「シリアスとギャグの落差が癖になって面白かった」「リアルな現場感あってとても面白かった」「涙でてきそうになりました」「青春時代からの友人との悲喜交々な空気感がとても心地好い」などの感想が寄せられています。

 この漫画は四位さんが数年前に読み切りとして描いたもの。作中に登場する2人は、四位さんの別の作品『片恋スクリーム』にも少し登場しているそうです。

15時間後に〆切が迫った漫画家の修羅場

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