“メシ”を通して危険な相手を取材する 「ハイパーハードボイルドグルメリポート」と「ウシジマくん」が描く“ヤバいやつらの世界”(3/4 ページ)

» 2019年07月15日 12時00分 公開
[しげるねとらぼ]

「ハイパー」の取材で見つけた、人間の美しさ

――マンネリという点でいえば、「ハイパー」も毎回食べ物の話なので、「またかよ」って思うこともあったのではと思うんですが。

上出: メニューに関しては、似通ってくるところはありますね。ある国ではどこでも同じようなものしか食べてないみたいな。でも番組の主題が飯自体じゃないんで、うまそうであればなんでもいいですね。

真鍋: けっこうすごい環境で作ったものを食べてますけど、抵抗はないんですか?

上出: もともとはすごく抵抗があったんですよ。超潔癖なんで。薬剤師一家でクリーンに育てられて、絶対変なものを食べちゃダメっていう暮らしをしてたんですけど。食えるかどうかに関しては完全にアドレナリンですね。今回もケニアに行ってきて、ナイロビにケニア最大のゴミ山があって、そこで暮らしている青年を見つけたんですよ。そこらじゅう燃えててみんな気管支がおかしくなったり、鉛中毒で体壊したりしてるんですけど。彼らは粉ミルクが入ってた缶を鍋にして、そこに拾ったものとかを入れて煮込んで食ってて、今回はそういうのを食べてます。でも全然、最高にうまいです。


ハイパーハードボイルド 闇金ウシジマくん ケニアのゴミ山 (C)テレビ東京

真鍋: 害ってないんですか?

上出: ちょっとしか食べてないんで。結局脂とか塩分とか、体にいい悪いって量の問題じゃないですか。少し食べるくらいだったらまず大丈夫。でも今回のケニアの青年も「俺たちはタフだ、タフじゃないとここでは生活していけない」って言うんですよ。かっこいいなと。みんな自分の命とか肉体に意識のフォーカスが向いている。彼らはケガしたら死ぬリスクが爆上がりする状態で暮らしています。そういうのをテレビで出したいと思ってますね。僕らと全然違う世界で生きている人たちの、どろっとしてる中での一瞬の美しさだったり、かっこよさみたいなもの、これはウシジマくんにもあると思います。

真鍋: ありがとうございます。

上出: ただケニアから帰って来てから、しばらくは咳が止まらなかったですね(笑)。ゴミ山にいたのは3日くらいだったと思いますが。


ハイパーハードボイルド 闇金ウシジマくん

「取材」でコンプレックスを解消する

――上出さんのご実家が薬剤師というのはびっくりしたんですけど、どのタイミングで吹っ切れたんでしょうか?

上出: 温室育ちがコンプレックスだったんですよ。愛情いっぱいで育った自分がかっこ悪く感じたというぜいたくな悩みです。それで学生時代に軽くグレました。ひどい育ちの中で必然的にグレる奴と、僕みたいに温室育ちで「心配してくれよ」ってグレる奴がいると思うんですよ。

――それはそうですね。

上出: それで不良っぽいこともいろいろやったんですけど、なんで自分はこんなことしてたんだろうっていう思いから大学では少年犯罪とかの研究をしたりして、真っ黒だって言われてる奴は本当に黒いのかなっていう気持ちが今の番組につながってたりします。世の中は白黒はっきりしないだろうというか。吹っ切れたっていうことでいうと、コンプレックスを解消したくていろんなトライをしたんです。中国の山の中に2カ月行ってみたり、ボクシングをやってみたり、アラスカにこもったりとか。潔癖な自分を変えたかったし、弱いのが許せなかった。

――今そのコンプレックスは解消されましたか?

上出: けっこう解消されました。汚い自分でいられるというか、汚い自分が許せる。

――取材の効能というか、取材でそういう環境に飛び込んだから自分の中で意識が変わったんでしょうか?

上出: それもあると思います。だからどんどん番組の内容がひどくなってます(笑)。昔はちょっとやだなと思いながらゴミ山行ったりしてましたけど、もう今は全然平気なんで。

真鍋: 俺も福島に取材に行った時、農家で牛飼ってるとことかだとご飯に蝿がついてたりするんですよ。最初はうわっと思ったんだけど、でも2日目は普通に食ってましたね。

上出: 慣れですよね。多分大丈夫なんですよ、なんだかんだで。僕らなんかパッと行ってパッと帰ってくるんだから、大体のことは大丈夫です。

――取材時に、「これはもう勝ったな」って思うのはどんなときですか?

真鍋: 沖縄のエピソード(※)は上手に料理できたなって思ってます。

※『闇金ウシジマくん』36〜39巻収録の逃亡者くん編。

上出: それは取材してる際に「これはいけるぞ」っていう感触があったんですか?

真鍋: 楽しかったんですよ、自分が。めんどくさいことも多いんですけど、それも含めて掘れば掘るほど面白いっていう。

上出: そこは完全に僕も一緒だと思います。取材してるときに楽しいなとか面白いなっていうことがあったらもうそれで勝ち。あと、僕は映してる人がそのまま主人公になっていくんで、その人のことを好きになれたら勝ちですね。リベリアの娼婦の人とか、もう完全に好きになってました。アンジェリーナ・ジョリーにしか見えなかったですもん。

真鍋: あれはアンジェリーナ・ジョリーですよ!

上出: ジョリーですよね!


ハイパーハードボイルド 闇金ウシジマくん (C)テレビ東京

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた