「善悪はグラデーションで描く」 スター☆トゥインクルプリキュアが切り開く“新しいプリキュア観”:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
善悪は「グラデーション」
「スター☆トゥインクルプリキュア」の新プリキュア「キュアコスモ」は、かつて自身の目的のためにバケニャーンというネコ型宇宙人に変身し、敵組織「ノットレイダー」の幹部アイワーンに近づき情報を集めていました。いわばプリキュア側のキャラが自分の目的のために「敵をだます」形となっていました(バケニャーンになっていたのはキュアコスモになる前でしたけどね)。
視聴者の子どもたちから見て、感情移入する「正しい側」が「うそをつく」という行為をしていたのです。
第27話「海の星!人魚になってスーイスイ☆」では、追い詰められた敵幹部アイワーンがキュアコスモに言い放ちます。「自分が何かされたら人をだましたりしていいんだ!」。
正義のためには他人を傷つけても良いのか?
「自分の母星を奪われたからからといって、誰かをだましても良いのか?」。すなわち「正義のためには他人を傷つけても良いのか?」というテーゼをプリキュアという子ども向けアニメーションでぶつけてきたのです。
よく似た構造は第8話「宇宙へGO☆ケンネル星はワンダフル!」でも見られました。
惑星ケンネルにスターカラーペンを取りに来たプリキュアに対し、現地の宇宙人が「プリキュアとてペンを奪いに来る侵略者」として扱う描写がありました。ここでも「宇宙の平和のためには、現地の伝統を軽んじて良いのか?」というテーゼが突き付けられました。
そもそもキュアセレーネ(香久矢まどか)は、フワを守るためとはいえ尊敬する厳格な父に「うそをついて」プリキュア活動をしています。
「正義のためにはうそをついても良いのか?」「宇宙の平和のためには犠牲を払っても良いのか?」。「スター☆トゥインクルプリキュア」では善悪を「白と黒」といった二項対立ではなく無限大のグラデーションとして描いています。
こういった「絶対的な正しさ」を描かないのも、「スター☆トゥインクルプリキュア」前半の特徴だったと思います。
敵の多様性をも描く
「スター☆トゥインクルプリキュア」の後半戦では「敵側の多様性」も描いていくようです。雑誌『Febri』(一迅社)のインタビューでシリーズ構成の村山功氏は次のように語っています。
「魔法つかい」のときはプリキュア側のテーマとして「多様性」を扱っていて、敵はあくまで災害的なモノとして描いたんです。でも「スタプリ」で、敵側の多様性も描くということならいけるかも、と。
――『Febri』VOL.56(P34)一迅社
プリキュア側にも、ノットレイダー側にも、それぞれの事情があり対立している。とはいえ、今までのプリキュアシリーズでも敵を壊滅することは少なく、最終的には「敵をも救ってきた」ことの方が多かったと記憶しています。
しかし、それはあくまで敵を「プリキュア側の思想に寄せる」ことにより解決してきた側面が強かったと思われます。きっと今作では「敵の思想を塗り替えてプリキュア側に寄せる」のではなく「敵勢力との相互理解による解決」が描かれていくのだと思います。
善悪の二項対立を否定し、“絶対正義”も“絶対悪”も存在しない世界を描いていく「スター☆トゥインクルプリキュア」。この先、子どもたちにどんな世界を見せてくれるのでしょうか? 後半にも超期待したいと思います。
自分としてはカッパードさんにもアイワーンちゃんにも、絶対幸せになってもらいたいのです。
あ! 「スター☆トゥインクルプリキュア」新エンディング「教えて...!トゥインクル☆」。本当にカッコイイのですよ!!
80年代と現代の融合が最新のCGとポップな曲と意味深な歌詞で描かれてるのです! 公式から動画が配信されています。損はさせないから! 一度聞いてみて!!
「ニンゲンたちはどこからやってくるの??」。子どもたちに答えられますか?
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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