嗜虐心をくすぐるケガと鼻血の同級生 『可愛そうにね、元気くん』八千緑七子の美しき不憫
なぜ人は「かわいそう」なものに惹かれるんだろう。
Twitterで話題になり、週を追うごとに感想がネットにアップされている『可愛そうにね、元気くん』(古宮海)。読む度に何かを言いたくて仕方なくなるパワーがある作品です。取りあえず2ページ見てくれ。
暴力シーンは、作中に出てくるマンガのコマです。
マンガを描いているのは少年・廣田元気(ひろた げんき)くん。彼はクラスメイトの女子・八千緑七子(やちみどり ななこ)さんを、上のコマのように、痛めつけるというレベルを超えた暴力でぐちゃぐちゃにする話を描いています。
現実の同級生をここまでひどい目にあわせる妄想力もすごいのですが、何より陵辱作品として緻密に描きあげるほどの没頭っぷりには恐れ入る。
理性では「やっちゃだめなこと」だと分かっているんだけど、犯罪ではないんですよねこれ。
これは「可愛そうにね、元気くん」のあとがきではありません。廣田が描いた作中同人誌のあとがきです。後ろめたさと無邪気さが混じっていて、同人経験ある人なら悶絶(もんぜつ)しそうなワンカット。
彼は八千緑さんをモチーフに描いた陵辱マンガを作品として完成させ、同人誌を制作してイベントに参加し、ネットの陵辱マンガ好きから高い評価を受けています。ペンネームは暴懲愛之助(ぼこり あいのすけ)、「懲りることなく暴力で愛する人の美しさを愛する」という意味らしい。こじらせている感じが溢れ出ています。
友達やクラスメイトって、究極の「ナマモノ(タレントやアイドルなど現実に存在する人間を二次創作にすること)」です。一般的にはタブーとされる場合が多いジャンルで、特に18禁は陰でやりとりされるタイプのものです。
ナマモノへの加虐は、妄想するだけなら、まあやればできる。でも作品にまでしてしまったら「すごい」と「ヤバい」という感想になってしまう。やったことある人はそうそういないので、理解するのがかなり難しい。むしろ全て創作なら飲み込みやすいのですが。
作中では作品を知っているごくわずかな人は彼を変態だと言います。本人も重々自覚しています。でもこれも性癖のカタチ。なぜここまでボコボコにするのか。廣田くんの脳内でひどい目に合わされっぱなしの、被虐ヒロイン・八千緑さんの描写を軸に探ってみます。
「かわいそう」は「可愛い」
八千緑七子。いつもどんくさく、ケガが多い保健室の常連。家が老舗和菓子屋で目立ってしまうため、街の人からは「出来の悪い子」「ダメ長女」として有名に。クラスメイトからはのろいところをバカにされっぱなし。
この世界ちとみんな思考が、八千緑さんにだけ暴力的で薄情。ただしそれが当たり前に感じてしまうくらいに、八千緑さんの嗜虐心をそそる容姿は、完璧です。
はかない、というよりは、あわれ。鼻血や擦り傷などのケガで、何度も血を見せている、というのはビジュアルとして鮮烈です。口からでる言葉は「すいません」「ゴメンなさい」。常におびえているように見えてしまいます。そんな弱々しい八千緑さんに対して、廣田くんが恋愛的好意を持って感じるのは「可愛い」という感情。
幼い頃見た、敵に打ちのめされる女児アニメのヒロインの姿が、廣田くんの性の目覚めになりました。苦悶する姿と性的な反応は、かなり近い。どちらも「うそ偽りのない、露出した感覚・感情」です。
テレビのドッキリ企画でアイドルがびっくりしたり、ホラーゲーム実況でVTuberが叫ぶ様子がファンに喜ばれるのは、素の「きゃー!」という声が聞きたいから。かわいそうな状態を見たいから。
と言ってもファンは別にいじめたいわけじゃない。さらに言えば、くしゃみやあくびやお腹の音など、人間の力でどうこうできないものが聞こえて本人が恥ずかしがると、見ている側で喜びの声があがること多々。
「かわいそう」なものは「可愛い」と感じるからこその流れです。現在は「かわいそう」は「可哀そう」「可哀想」と表記することが一般的。もともとは「不憫」なのも「愛らしい(可愛い)」のも「かわいそう」の語で表現していたようで、今も「可愛そう」表記は残っています。
廣田「俺は作ることのできる笑顔より 偽ることのできない苦悶の表情に興奮する人間なのだ…」
八千緑さんは、彼の理想の「かわいそう」=「可愛い」姿でした。彼女は、ケガがよく似合う薄幸な美貌の持ち主として、この作品ではキレイに描かれています。境遇が残酷であればあるほど、彼女のイメージは美に近づきます。
苦悶は偽ることのできない本性
絵柄が「本編」と「妄想」と「同人誌内」であえて変えられていないので、読んでいて境界線が曖昧になります。例えば八千緑さんがクラスメイトから辱められるシーンが作中に出てきます。廣田くんの現実と妄想がごっちゃになった結果生まれた光景です。どこまでが現実の八千緑さんの境遇なのか、あえてわかりづらくされています。どこかまでは、八千緑さんは実際ひどいめにあっているはず。
人が愛想笑いをした時、マジョリティの感覚だと「かわいそうに」「無理しないで」「大丈夫?」という心配が先立つと思います。でも八千緑さんが愛想笑いした時、彼は「嘘のない歪んだ表情の方がマシだ」と考えました。優しさゆえです。
廣田くんの思いは、考え方によっては欺瞞のない誠実な思考にも見えます。彼は虚勢を張ることはほとんどしていません。少なくとも冷淡で残酷な言葉をしれっと言ってしまうなクラスメイトや学校の先生や街の人達よりは、自覚している分は誠実。
彼は「真人間」という言葉を使います。自分のような「異常」じゃない思考の人間のことです。でも廣田くん、大分まともな方です。そもそもマンガとして発散していたわけで、実際に暴力行為を行ったことは一度もありません。
正直、彼の残虐絵のクオリティがあまりにも高すぎて、この趣味を辞めなければいけない、と決意するのはもったいない気がしてならないんだよなあ。作品にするのって、立派な理性のダムです。その後に「公開するかしないか」「隠すか隠さないか」の線引きが問われ、さらに悩み考えることになります。
このラインの問題は、特に創作をしている人には刺さってくる部分。表現には理由と責任が伴うもの。そこを見極めて、廣田くんには堂々と描いた、八千緑さんの陵辱マンガを、見せてほしい。一度見てしまった美って、そうそう捨てられないと思うんだ。
もう1人のヒロイン
もう1人のヒロイン、鷺沢守(さぎさわ まもる)さんが話に絡んできてから、一気に流れが混沌としはじめます。真面目で優しくて明るくて美人、剣道部に入っているクラスのアイドル。わりと天然でドジ。ズレたところも含めて、誰もが認める完璧美少女です。陰のオーラ漂う八千緑さんや廣田くんと対極の存在に見えます。
でも彼女は、この作品きっての爆弾持ち。いわば、踏み越えてしまった人。廣田くんの価値観を大きく揺さぶる存在になっていきます。
10月18日発売の2巻では、八千緑さんの弟が本格的に登場。こじれた人間だらけになっていきます。取りあえず鷺沢さんがいる限り、安心なラブコメ状態にはまずならない作品だと思うので、ハラハラしながら廣田くんの悶絶一人相撲を追っていこう。
(たまごまご)
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