白石和彌監督が描いた“壊れかけの家族”とは――「ひとよ」の光と影に見る“母と子どもの心の揺れ”(1/2 ページ)
白石監督「(家族って)面倒くさい(笑)」。
「凶悪」や「孤狼の血」など骨太な作品を多く手掛けてきた白石和彌監督が手掛けた映画「ひとよ」が11月8日に公開されます。
劇作家の桑原裕子さんが作/演出を手掛けた劇団「KAKUTA」の15周年記念作品を俳優の佐藤健さん、鈴木亮平さん、松岡茉優さん、田中裕子さんら豪華キャストで映画化した同作。タクシー会社を営む稲村家の母・こはるが、子どもたちを守るために愛する夫を殺めてしまった“一夜”をきっかけに、壊れかけてしまう家族が描かれます。
これまで扱わなかった“家族”をテーマに取り上げた白石監督。描きたかった“家族”とは何だったのか迫りました。
“壊れかけた何か”の中にそれぞれの思いを投入した
――監督が“いつかは撮らねばならない”としていた家族をテーマとした「ひとよ」ですが、監督ご自身は家族をどのように捉えていますか?
白石和彌監督(以下、白石監督): 面倒くさい(笑)。勝手に生まれてきてしまったし、人間だから全部が全部うまくいくとは限らない。じゃあ、縁を切ればいいじゃないか、というとそうもいかない。親っていうものは、たいがいの場合は、ですが、子どもを愛しているから余計に面倒ですよね。
――親も子どももお互いを選べる訳ではないから普通の人間関係より難しいですよね。ただ、家族を扱った作品はたくさんありますが、その中でも「ひとよ」を題材にした理由は?
白石監督: 桑原さんの世界に撃ち抜かれたプロデューサーから、声をかけていただいたことが始まりです。お話をいただいて、桑原さんがやろうとしている熱量が伝わりましたし、“壊れかけた何か”の中に僕や脚本の高橋泉くん(高ははしごだか)の思いを投入しながらいい作品ができるだろうなという予感がありました。
劇中の“影”にこだわる理由
――壊れかけた何かの中で生きる家族を、ただ複雑に描くだけではなく、優しい光で包み込んでいたように思います。
白石監督: 桑原さんと対談した際にお話したことですが、親は子どもに何かを期待しているところがあると思うけれど、その期待に応えられる子どもってそうそういないですよね。だとしたら人間はそんなに成長するものでもないし、むしろ失敗するものなので、そこを受け入れられたらきっとお互いを許すことができるのではないかと思ったので、“ほんの1歩に満たない何か”を描けたら、希望とまではいかないかもしれないですが、少し先に光が見える映画になるのかなと考えながら作っていました。
――母が帰ってきて15年ぶりに再会したシーンのボーダーの光や雄二とこはるが対峙(たいじ)したシーンなど、劇中の光と影の使い方も印象的でした。
白石監督: おっしゃる通りで、意識的なものです。母が帰ってきたシーンの光は最初、ボーダーではなかったんですが、もうちょっとエッジの効いた光にして線を見せてほしいと照明部やカメラマンにオーダーしました。恐らく、「15年後に帰ってきます」と母親が言い残しているので、子どもたちは当然、母親が帰ってきた時のシミュレーションを思い描いていたと思うんですよね。でも、いざとなると思っていた通りにできないわけで……。そういった心の二面性だったりを表現したかったんです。
今作に限らず、できるだけ陰影を意識した作品作りはいつも心がけています。光というよりは影をどう落とし込むか。全部が見えるより、見えないところをできるだけ作ってほしいというオーダーはよくします。
――見えない“影”の部分にこだわる理由は?
白石監督: 見ているようで見えていないことって人間多いじゃないですか。本当は見えているけれど、意識的に見ないようにしていることとか。映画の中では割と細かい部分ですし、あまり感じ取る人は多くないと思いますが、そういうところにこだわって作品を作っていたら、誰かは僕の意図に気づいてくれるんじゃないかなと期待しているんですよね。
――光と影のバランスもそうですが、現在から15年前への場面展開がスムーズで、それだけ15年前の出来事が子どもたちの生活に根付いている感じがして大変リアルでした。
白石監督: 15年前のあの夜が現在とつながっているのを何かで表現したいなと思っていました。ただ、僕自身、回想シーンがそんなに好きではなくて、普段はなるべく脚本からなくそうと努めているんです。今回は15年前の話があってやらざるを得ないところがあったので、そのような場面展開にしています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
息子が「パパ」と言って指さしたのは……? 親子でバスに乗ったときのエピソードを描いた漫画がジワジワ面白い
「かなり目が開いてきた」 ダレノガレ明美、保護した“片目”にダメージ負った子猫の奇跡的回復伝える
PCで「→」マークを簡単に入力できる方法がタメになると話題に 「知らなかった」「1発で変換された」
9メートルの木から降りられなくなった猫ちゃん 男性の勇気ある行動で救出され、ほっとした表情に
Windowsの「ごみ箱」を作業フォルダにしてる人がいる? 意外な使い方がネットで話題に
ゲーム規制条例、東京都は追随せず 小池都知事「科学的根拠に基づかない制限は行わない」
お水を飲みたいカラスさんがとった行動とは……? 人間に“ある方法”でお願いするカラスが賢くてかわいい
「あたしにも投資…してよ」 ゲームの推しに廃課金する先輩を好きになった女の子 自分にも課金させようとする漫画が尊い
ダレノガレ明美、片目が見えない子猫保護から1カ月 「340gしかなかったのが1kgに」とすくすく成長した姿に反響
「お前を消す方法」でおなじみの“Excelイルカ”、最新版でも予想外の場所で生存が確認される 「なつかしい」「再雇用枠か」
先週の総合アクセスTOP10
- 鳥取砂丘から古い「ファンタグレープ」の空き缶が出土 → 情報を募った結果とても貴重なものと判明 ファンタ公式も反応
- 「モンストのせいで彼氏と別れました」→ 運営からの回答が“神対応”と反響 思いやりに満ちた言葉に「強く生きようと思う」と前向きに
- 「この抜き型、何ですか……?」 家で見つけた“謎のディズニーグッズ”にさまざまな推察、そして意外な正体が判明
- 人間に助けを求めてきた母犬、外を探すと…… びしょ濡れになったうまれたての子犬たちを保護
- 幼なじみと5年ぶりに再会したら…… 陸上選手から人間ではない何かに変わっていく姿を見てしまう漫画が切ない
- ブルボンの“公式擬人化”ついにラスト「ホワイトロリータ」公開 イメージ通り過ぎて満点のデザイン
- 「幸せな風景すぎて涙出ました」 じいちゃんの台車に乗って散歩するワンコのほのぼのとした関係に癒やされる
- 「遺伝ってすごい」「足長っ!」 仲村トオルの“美人娘”ミオがデビュー、両親譲りのスタイルに驚きの声
- 猫「飼い主、大丈夫か……?」 毎日の“お風呂の見守り”を欠かさない3匹の猫ちゃんたちがかわいい
- 天才科学者2人が最強最高のロボを作成するが…… 高性能過ぎて2人の秘密がバラされちゃう漫画に頬が緩む
先月の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 安達祐実、グレー髪への“勘違い指摘”に「白髪は悲しくないですよ」と切り返し 加齢の考え方が称賛を呼ぶ
- 「これは妙案」「明日の朝はこれ」 “レジ袋1枚”でできるフロントガラス解氷テクに目からウロコ
- 嫌がらせ急ブレーキで追突 トラクターの進路を妨害した「あおり運転」ベンツ、ぶつけられたと運転手がブチギレ
- “東大王”鈴木光が『CanCam』デビュー “美しすぎる東大生”の新たな一面
- 柴犬たちが追いかけっこしていたら…… ワンコの“突然の裏切り”に「声出して笑った」「4コマみたい」の声
- 元「うたのおにいさん」今井ゆうぞうさんが脳内出血で急逝 生前最後のブログには“目の異常な充血”
- 「虚無僧」「言質」「古刹」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- 「えっ!? おきゃくさまっ!」 スターバックスでやけに長いレシートに遭遇 店員さんのテンションがすごかったエッセイ漫画