瀬下寛之総監督×声優・島崎信長に聞くアニメ「Levius」 ポリゴン最新作で口をそろえる「過保護」というキーワード(2/2 ページ)

» 2019年11月30日 17時05分 公開
[西尾泰三ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

僕が作るアニメは肉感をもっと表現していく方向に進化させたい――

―― 過保護アニメ(笑)。CG以外の部分、という文脈で続けてお聞きしますが、例えば私はシドニアを「平成の宇宙戦艦ヤマト」くらいに捉えていて、絵作りはもちろんですが、気分を高揚させるOPやカメラワーク映えする音響などが高いレベルで融合していると思うんです。一方で、レビウスは、戦闘シーンの高揚感はもちろんありますが、OPもEDもややポップな曲調で、これまでの作品とは何か違うものを作り上げようとしているのかなという印象も受けました。

瀬下 「宇宙戦艦ヤマト」は光栄過ぎますね(笑)。まあ、CG屋がCGうまいのはむしろ当たり前で、“CGスタジオはCG以外を大事にしよう”というスローガンでやっているので、そうした連携はとても大事にしています。今作の主題歌やエンディングについて言えば、僕は、ストーリーの核となることを素直に表現してくれている楽曲だと感じました。短時間のミーティングで、こんなにも作品を理解してくれているのが本当にすごいです。

 そして音響監督の岩浪(美和)さん、音楽の菅野祐悟さんは、「亜人」「BLAME!」でご一緒した最高のチームであり、今作の音響も音楽も、とにかく素晴らしい仕上がりです。ストーリーで伝えたいテーマにあらゆる要素が寄り添ってくれているんです。

―― 今作の3DCGの特徴、あるいは瀬下さんが進化させたい方向を言語化するとどういったものですか?

瀬下 3DCGの特徴……というのは難しい質問ですね。今作に絞っていえば、肉体が持つ質量感といいますか、3DCGならではの造形がもたらす肉感や量感かもしれません。例えばザックスがどれくらいの体重か分かる感じというか。シドニアのころと比較すると、肉体の持っている質量感は格段に上がっていると思います。この辺りは片塰(満則)造形監督の貢献が大きいです。進化させたい方向もいろいろありますが、このテーマは僕にとってはとても重要です。肉感をもっと高めて、省略された絵にもかかわらず生々しく実体を感じるようにしていきたいです。

―― 別のインタビューでは、場面(シーン)設計と配置演出(ステージング)の比重が高いスタイルだとお話されていました。いわゆる格闘ものの今作において、没入感を高めるためにどんなチャレンジがありましたか?

瀬下 これまでの作品と同様に没入感や現実感を高める方法はいろいろ使っていますが、残念ながら映画「スパイダーマン:スパイダーバース」くらい大胆な空間演出というところまでは到達してません。

 今回は何をやったかについてあえて1つ挙げると、配置演出上は“過保護な距離感”を意識しました。特にザックスの動きを見てほしいですが、彼以外にも主要キャラたちがとにかくレビウスのことが大事なんだと分かる立ち位置です。

 例えば、小さな子どもを親が叱っている場面で、親が立ったまま子どもを見下ろすのと、子どもの目線にしゃがんでいるのでは、それだけで印象が変わりますよね。もちろん、そこには表情やライティングや音楽、いろいろな感情表現の絡み合いがあるのですが、まずは最も基本となる立ち位置や距離感がもたらす愛情の伝わり方が今作のこだわりといえます。レビウスに対するザックスの寄り添い方がいつも絶妙で、監督の井手くんがいい仕事をしてくれています。

Levius レビウス Netflix 瀬下寛之 島崎信長 ポリゴン・ピクチュアズ セルルック “過保護な距離感”は特にザックスの動きによく現れているという

ザックスから離れられなくなってほしい――

―― なるほど。CGに対する考え方をもう少しお聞きしますが、瀬下監督は過去にスクウェアUSAの映画「ファイナルファンタジー」(2001年)でアートディレクターを務め、今でもスクウェア・エニックスで「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」や「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」を手掛ける野末武志さんと一緒に働いていた時期もありますよね。そこから、瀬下さんがセルルック、野末さんがいわゆるフォトリアルなCG表現をそれぞれ志向されていて興味深く感じます。

瀬下 野末くんはスクウェア(現スクウェア・エニックスの前身企業)時代の後輩です。彼は今でもフォトリアルなCG表現を頑張っていて素晴らしい成果を出していますが、正直言って僕はフォトリアルを一度は諦めました。とにかくCGで長編ストーリーを作りたいということに焦っていましたし、フォトリアル系CG映像の宿命というか、その時間とお金の掛かり具合に対して人生の残時間との折り合いがつかなくなったんです。

 今、僕が求めている世界は、「スパイダーバース」のような限りなくカリカチュアされているのにもかかわらず十分な肉感=実体感=存在感があるもの。自分の物語世界では、体格のよい警官が車に乗るとサスペンションがしっかりと沈んだままでいたいですね。

Levius レビウス Netflix 瀬下寛之 島崎信長 ポリゴン・ピクチュアズ セルルック 圧倒的に愛されるザックス

―― お話を聞いていると、今作で注視すべきポイントもおのずと定まってくる印象ですが、監督イチオシのシーンはありますか?

瀬下 戦闘の盛り上がりは毎回用意していて、レビウスの戦いっぷりのかっこよさも魅力ですが、やはりザックスですかね。ザックスの優しさがクセになって離れられなくなってほしい(笑)。ザックスがいるところ、その作品世界に「ただいま」と帰りたくなるようなものを目指したつもりです。そんな心の高揚を共有できたら幸せです。

島崎 あったけぇ……。テンプレというかシンボリックにはやってないので、心にくるんだなと。非日常である戦闘ももちろんですが、彼らの日常が大事に感じられる作品ですよね。

Levius レビウス Netflix 瀬下寛之 島崎信長 ポリゴン・ピクチュアズ セルルック ねとらぼは瀬下さんの作品をこれからも注目し続けます!

(c)中田春彌/集英社 ポリゴン・ピクチュアズ


プレゼントキャンペーンのお知らせ

ねとらぼエンタの公式Twitterをフォローし、本記事を告知するツイートをRTしてくださった方の中から抽選で1人に島崎信長さんのチェキをプレゼントするキャンペーンを実施します。リプライで本記事や作品への感想もお待ちしています!


Twitterキャンペーン応募方法

(1)ねとらぼエンタ公式Twitterアカウント(@itm_nlabenta)をフォロー

(2)本記事の告知ツイートをRTで応募完了


応募期間

11月30日〜12月8日正午まで

注意事項

・当選者には編集部からDMでご連絡します。DMが解放されていない場合には当選無効となりますのでご注意ください

・いただいた個人情報はプレゼントの発送のみに使用し、送付後は速やかに処分します

・ご応募完了時点で、アイティメディアのプライバシーポリシーへご同意いただいたものと致します。応募前に必ずご確認ください


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/07/news109.jpg 「ロッチ」中岡、顔にたっぷり肉を蓄えた激変ショットに驚きの声 「これ…ヤバいって」「すごい変身っぷり」
  2. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  3. /nl/articles/2405/06/news040.jpg 「東京チカラめし」約2年ぶりに東京で“復活” まさかの出店場所に驚き「脳がフリーズしそうに」
  4. /nl/articles/2405/03/news025.jpg 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  5. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  6. /nl/articles/2405/07/news114.jpg 大谷翔平がエスコート 真美子さん「ドジャース奥様会」に再び登場で頭ひとつ抜き出る
  7. /nl/articles/2405/08/news030.jpg 「新紙幣出てきたんだけど」 レジで“千円札”見た若者がポツリ→まさかの正体にショック広がる 「そうだよねえぇ」
  8. /nl/articles/2405/07/news043.jpg 16歳お姉ちゃんと0歳弟、赤ちゃんが泣くとすぐに抱っこして…… 愛をそそぐ姿に「愛しさ溢れてて号泣」「いいね1万回押したい」
  9. /nl/articles/2405/05/news018.jpg 地元民向け“バリカタ仕様”の袋麺だと思ったら……思わぬ落とし穴に「トラップ仕掛けられてる」「自分も引っかかった」
  10. /nl/articles/2405/06/news001.jpg 川をせき止めるほどのゴミ→ボランティアがを徹底的に掃除したら…… 見違える変化に驚き
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評