神戸の北神急行が「千葉の小湊鐵道」を応援──なぜ? 「一刻も早い復旧を」600キロ離れた鉄道マンたちがつなげた、熱すぎる絆(1/3 ページ)

「30年かけてやっと鉄道マンになってきたんやなあ……」中心人物の北神急行青木さんに裏話も聞きました!

» 2019年11月29日 11時00分 公開
[鶴原早恵子ねとらぼ]

 兵庫県の新神戸駅から谷上駅を結ぶ約7.5キロの短い路線「北神急行(ほくしんきゅうこう)電鉄」。線路のほとんどはトンネルの中という独特の路線です。この北神急行の車両に2019年12月2日まで、「千葉県の小湊鐵道(こみなとてつどう)」を応援するヘッドマークが掲出されています。

北神急行ヘッドマーク 神戸の北神急行に掲出された「小湊鐵道応援」のヘッドマーク

 なぜ、神戸を走る電車に、千葉県の電車を応援するヘッドマークなのでしょうか? その理由は、2019年9月に千葉県を中心に大きな被害を出した台風15号(令和元年台風15号)にありました。

「高圧電線用のケーブルはありませんか?」被災した小湊鐵道からSOS

 台風15号(関連記事)は2019年9月9日、観測史上最強クラスの勢力で関東地方に上陸。特に千葉県の被害がひどく、房総半島南部から北東部までの広範囲に渡って電気、水道、ガス、電話・通信などのライフラインから、鉄道、航空、道路の公共交通まで大きな被害をもたらしました。

 9月12日、北神急行 営業・事業企画推進課長の青木さんのもとに小湊鐵道 運輸課トロッコ推進室長の荒井さんから1本の電話がかかってきました。

 「高圧電線用のケーブルは、余っていませんか──」

 9日未明に上陸した台風15号によって、房総半島を走る小湊鐵道も特に大きな被害を受けました。一部区間で信号や踏切用の高圧電線ケーブルが寸断されました。復旧しようにも、小湊鐵道社内にも、近隣の鉄道会社にも在庫はなし。これから発注しても納期に時間がかかり、営業復旧のめどすら立たない状態に陥ってしまいました。

 実は北神急行の青木さんは、2017年に小湊鐵道に「乗り」に行ったことがありました。そのときに意気投合して名刺交換をしたのが、当時運転士として乗務していた荒井さんでした。

 そんな鉄道マン同士の縁を頼っての問い合わせでした。しかしあいにく北神急行にもケーブルの在庫はありません。そこで青木さんは親会社の阪急電鉄を紹介し、さらに阪急電鉄が取引先の住電商事を紹介し……人と人、鉄道マン同士の輪がつながっていき、9月24日に無事小湊鐵道にケーブルが納品されることになりました。

 この一連の経緯は、小湊鐵道の公式Facebookページで詳しく紹介されています。

「何度でも立ち上がる!」北神急行に掲出した小湊鐵道ヘッドマークに込めた思い

 このあと、さらなる支援ができないかと北神急行が検討した結果、決定したのが北神急行と小湊鐵道のヘッドマークの交換です。

 北神急行は、乗り物イラストレーターの井上広大さん(@koudaitrainbus)さんによる小湊鐵道イラストをヘッドマークにし、小湊鐵道は北神急行のマスコットキャラクター「北神弓子(きたがみきゅうこ)」のイラストをヘッドマークを掲出することにしました。

 ところがこの決定直後にやってきたのが台風19号(令和元年台風19号)。台風19号も「2019年最強の勢力」(関連記事)などという名目で東海から関東、東北にかけて直撃したのは記憶に新しく、さらに台風15号、19号の爪痕が残る中、10月26日にも台風21号で記録的な大雨に見舞われました。小湊鐵道は約1カ月半ほどの間に相次いで3回も被災しました。

 2019年11月現在、小湊鐵道の里見〜上総中野駅間はいまだ代行輸送区間となっています。復旧は12月中旬の予定です。

 「何度でも立ち上がる!!」。神戸で掲げられたこのヘッドマークには、そんな千葉・小湊鐵道のさまざまな熱い気持ちが込められています。

北神急行ヘッドマーク 「何度でも立ち上がる!」という言葉が力強い

 今回、どんな思いで支援を行ったのか、中心人物である北神急行電鉄の青木さんに話を聞きました。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」