デジタル課税〜米中のデジタル・ネットワークの間で日本の進むべき道は
日本も考えなくてはいけない時期に来ている。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月29日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。デジタル課税について解説した。
ヨーロッパ委員会がデジタル課税導入を改めて検討
インターネットを通じ国境を超えてビジネスを展開する巨大IT企業への課税、いわゆるデジタル課税の在り方が国際的な議論となっている。GoogleやAmazonといったグローバルなデジタル企業に対して、莫大な利益を手にしながらそれに見合った税金を納めていないのではないかといった批判も噴出するなか、IT企業への課税をどう強化するかをめぐって、各国で激しいせめぎ合いを繰り広げている。そんななか、EUヨーロッパ委員会で経済を担当するモスコビシ委員は、巨大なIT企業の税逃れを防ぐデジタル課税に対して国際的な同意が得られない場合、ヨーロッパ委員会としてEU独自のデジタル課税の導入を改めて検討する考えを示した。
飯田)大阪で行われたG20でも、データ利用や課税についても話し合われて、経済協力開発機構(OECD)のなかでルールを決めようという話が出ているようです。
宮家)ヨーロッパはIT、コンピューター、テレコム、全部で出遅れています。このことが今回の流れの根本にあります。IT企業は多国籍企業であり、非居住者だから免税になっている場合が多いわけですが、実はこれは昔からある問題です。しかし、今回のもっと大きな問題は、GAFAと呼ばれる企業はすべてアメリカのものだということ。GAFAに自国内のネットワークを牛耳られてしまい、情報の流れが見られてしまうということ、そしてデータが全部持って行かれてしまうということです。これはどう考えても、いままでの普通の多国籍企業ではなくて、国家安全保障にかかわるより大きな問題です。それは日本も同じです。ヨーロッパはそれに気が付いていて、しかしなかなか手が打てないから、こういうかたちで課税を考えると言っているのです。ある意味でこれは当然のことですよね。
日本も欧州と共にアメリカに妥協的な態度を取らせるべき
宮家)さらに言わせてもらうと、国際的な同意が得られない場合は、ヨーロッパ委員会として独自にでもやる、つまり「アメリカが協力しないのだったら、勝手にやるぞ」という喧嘩ですよね。日本もヨーロッパと似たような状況にあって、GAFAは中国のネットワークよりはいいかもしれないけれど、言ってしまえば、ネットワークをつくっている人間は、その気になれば何でも見られるのですよ。中国のネットワークに入って中国に見られるのがよいのか、それともアメリカのGAFAに見られるのがよいのか、どちらがよいのかということです。どちらも嫌ですけれど、という話ですよ。だからヨーロッパの気持ちはわかるし、日本も同じことを考えなくてはいけない時期に来ているはずです。実際にその動きは出ていると思いますけれども、ヨーロッパだけにやらせるよりは、日本も一緒になってアメリカに対し、もう少し妥協的な態度を取らせるように働きかけるのが本来筋です。
このまま行くと、アメリカと中国の間にある日本やヨーロッパが草刈り場になる
宮家)もう1つの流れとして私がデジタルブロック経済と呼んでいる問題があります。中国にはいわゆるデジタルの万里の長城というか、カーテンがあるわけです。このまま行けば、そことアメリカを中心とするデジタルの世界が、おそらく両極化して行く。そして、米中の間にある日本やヨーロッパが草刈り場になります。そういう流れのなかで、我々がどのようにしてGAFAをけん制しながら中国の攻勢に耐え、我々の独自のデータやネットワーク、情報を守るかということが求められているのだと思います。
飯田)今年(2019年)6月にG20大阪サミットがありましたが、そこで「大阪トラック」というものが立ち上がりました。あれはまさに、データを自由に流通させるけれども、一定のルールを課しましょうという話です。
宮家)日本はそれでイニシアティブを取っているのですよね。ですからヨーロッパでデジタル課税の話が動いて来て、日本はどのように呼応するのか、もしくは別の道を行くのか。これを考えるいい機会ではないですかね。日本だって、まったく受け身で全部やられるわけには行かないので、日本独自のものを持らなくてはいけないと思います。
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