いびつなエネルギーが生み出した“秘め事映画” 斎藤工と永野が語る、怪作「MANRIKI」が持つ“究極のリアル”

一度心をつかまれたら最後。

» 2019年12月13日 12時55分 公開
[宮澤諒ねとらぼ]

 お笑い芸人の永野さん、俳優の斎藤工さん、ミュージシャンで俳優の金子ノブアキさん、映像監督の清水康彦さんらによる映像制作プロジェクト「チーム万力」が手掛ける映画「MANRIKI」が、11月29日から劇場公開されています。

斎藤工 永野 映画 MANRIKI 万力 清水康彦 金子ノブアキ SWAY

 永野さん原作・脚本となる同作は、斎藤さん演じる猟奇的な整顔師が、小顔を求める女性たちに万力による小顔矯正を施していくブラックコメディー。韓国の第23回プチョン国際ファンタスティック映画祭では、2018年の大ヒット作「カメラを止めるな!」に続いて、ヨーロッパ国際ファンタスティック映画祭連盟アジア賞を受賞しています。

 着想からおよそ3年。さまざまな苦難を乗り越えて公開へと至った同作について、企画・プロデュースも兼任した永野さんと斎藤さんにお話を聞きました。

斎藤工 永野 映画 MANRIKI 万力 清水康彦 金子ノブアキ SWAY

―― 上映まで2週間を切りましたが(11月18日に取材)、いまの気持ちは?

永野 ついに来たかという感じです。すごく甘い考えで、「斎藤くんのプロデュースだったら簡単に公開までいけるだろう」と思っていたんですけど、なかなか企画が通らなくて。でもそれが功を奏して、小顔矯正の話から自分の闇というか、自分自身の内面に向き合った話になりました。達成感はありますが、いまはそれよりも「ここからだ、ついに(お客さんが)見るんだ」という思いです。

斎藤 かかるべくしてかかった時間だったので、初日が来るというのは不思議な気持ちです。ただ、どこか見せたくないものになってきたというか……。

―― 見せたくないもの?

斎藤 どうぞと見せるというよりは、こっそり公開したい気持ちもあるんです。この作品は、ピンポイントに“刺さる人にしか刺さらない”ような映画なんです。

 いま日本の多くの映画がチェーン展開というか、まず観客が喜ぶだろう要素を集めて作っているものが多いですよね。時代的なものもあると思うんですけど、スポンサー至上主義、コンプライアンスが過度なこの時代の中で、秘め事のような作品。僕は“秘め事映画”を作ったと思っています。そういう意味では、アンテナが働いちゃった人へ向けた作品かなと。

―― 頭で考えるより、まずは体感してほしい?

永野 体感してほしいですね。そういうものだと思うんです、映画って。皆が良かったって言ってたら、答え合わせのように映画を見たりするじゃないですか。確認作業みたいになっちゃう。

斎藤工 永野 映画 MANRIKI 万力 清水康彦 金子ノブアキ SWAY

―― 先ほど海外の映画祭の話も出ましたが、プチョンでは大変ウケが良かったそうですね。笑い声も上がっていたとか。

永野 海外だと僕に対するイメージがないじゃないですか。もちろん斎藤くんたちは知られていますけど、僕なんて韓国では全然なので。映画を評価してくれたから「世界へ!」というわけではなくて、日本ではイメージが付いちゃっている2人だからこそ、世界に期待を、というのはあります。

斎藤 僕は、この作品がどういう作品なのかというのは、海外のオーディエンスに託しています。そこから何か反逆心みたいなものをガソリンにして作っていったところがあります。

 映画って面白いのが、完パケ(※コンテンツとして仕上がること)たら、そのあともお客さんのリアクションで育っていくんです。MANRIKIもその時期に入っていて。特に海外から見られる日本という目線を意識して作った作品なので、プチョンでのリアクションがものすごく良かったのはうれしかったんですけど、これからこの映画のウイルスがどれだけ感染を広げていくのかというのは、確かめたいですね。

―― お2人は企画・プロデュースも担当されていますが、映画の公開に当たっては、制作会社や配給会社との間でかなり難航したと聞きました。

永野 話し合いも全然進まなかったし、上映できるのかなって思っていました。自分も監督も「これ、だめだな」とか言ってたんですけど、斎藤くんは進まないことが面白いと考えてくれていたらしくて。

斎藤 不採用通知みたいなものをたくさん受けてきました。映画会社からも受けましたし、一緒に作っていこうとした人の中にも、船に乗ろうとして残念ながら降りていった人もたくさんいます。個人的な感情なのかもしれないですけど、彼らが後悔するような代物を作ってやろうという気持ちがずっとありました。このMANRIKIが宿すものを信じ切って、最後まで走り抜けて出来上がったものなので、手からMANRIKIを逃していった人たちへのレクイエムだと僕は思っています。

永野 あはは(笑)。

斎藤 そのいびつなエネルギーみたいなものこそが、この作品を生んだと思っています。だから、全てが必要だったんです。僕らを突き放した人たちや会社も、実はMANRIKIのガソリンになっている。超エコ映画なんです。

永野 企画を持っていった段階でめちゃくちゃ言われたんですよ。「学生の発想だよ。プロでしょ? プロってこういうものじゃないから」とか。でも僕はそうは思っていなくて。お客さんを平等に満足させるのがプロって考える人もいるかもしれない。そういう人から見たら青臭いのかもしれないですけど、実際できちゃったので。そういう意味では、確かにレクイエムです。

斎藤 いじめられたわけではないですけどね(笑)。健全、クリーン、清廉潔白みたいなものが時代として求められている――っていうハラスメントなんじゃないかって思いましたね。

斎藤工 永野 映画 MANRIKI 万力 清水康彦 金子ノブアキ SWAY

―― 最後に、映画が気になっている人たちへメッセージをお願いします。

永野 映画にも出ている「虹の黄昏」の野沢ダイブ禁止くんが、撮影途中の映像を見て「この映画はクズの束ですね」「でも、クズの束だけど、俺もいままで通りやっていていいんだ。気持ち良いです」って言ってくれたんです。だから、いま何か嫌な気持ちを抱いて生きている人も、優しい言葉を掛けられるより、こうやって黒いのを見せられたら、その先に希望が見えてくるんじゃないかなって。そういう人に届けたいし、見てもらいたいですね。

斎藤 いま大ヒットしている「ジョーカー」も大好きなんですけど、こう感じてほしいっていう、キャラクターに対する心の導きがどの作品にもあるじゃないですか。でも、その目線みたいなものが、この作品には無い。それって究極のリアルだと思うんです。そういう感情の導きみたいなものが一切ないというリアリティーを追求した作品としては、近年では唯一無二の作品に到達できたんじゃないかと思います。

 「こう思ってください」というものがない虚無な時間って、人間生きていて一番長い時間だと思うんですよ。それをごまかすために、仕事だったり、何かをしてみたりする。そういう味付けをしない心の模様、見た人の“本当の姿”というものが、このMANRIKIのスクリーンに見えてくると思います。だから、MANRIKIはあなたの物語です、と言いたいです。

プレゼントキャンペーン(※こちらは終了しています)

ねとらぼエンタの公式Twitterをフォローし、プレゼント企画を告知するツイートをRTしてくださった方の中から抽選で2名に、斎藤さんと永野さんのサイン入りチェキやサイン入り名刺&シールが当たるプレゼントキャンペーンを実施中。

斎藤工 永野 映画 MANRIKI 万力 清水康彦 金子ノブアキ SWAY

Twitterキャンペーン応募方法

(1)ねとらぼエンタ公式Twitterアカウント(@itm_nlabenta)をフォロー

(2)告知ツイートをRTで応募完了

注意事項

  • 締切期限は12月20日正午
  • 当選者には編集部よりDMにてご連絡いたします。DMが解放されていない場合には当選無効となりますのでご注意ください
  • いただいた個人情報はプレゼントの発送のみに使用し、送付後は速やかに処分します
  • ご応募完了時点で、アイティメディアのプライバシーポリシーへご同意いただいたものと致します。応募前に必ずご確認ください


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/17/news105.jpg 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  2. /nl/articles/2410/17/news048.jpg 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
  3. /nl/articles/2410/15/news079.jpg 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
  4. /nl/articles/2410/17/news023.jpg 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
  5. /nl/articles/2410/17/news022.jpg 「嘘だろおい……」 ペットのイグアナが産卵→食べてみた “衝撃の食リポ”が1700万表示 「驚愕してる」「勇気に脱帽」
  6. /nl/articles/2410/17/news032.jpg 目からウロコの“クリップ活用法”5選! まねしたくなるアイデアに「え、天才」「こんなに便利になるとは……」
  7. /nl/articles/2410/17/news040.jpg 「なんじゃこれ!」 JA全農が教える「さつまいものメープルバター」がおいしそう 簡単レシピで「とってもおいしい!」「これヤヴァイ」
  8. /nl/articles/2410/17/news056.jpg “本物のシンデレラ”にガラスの靴を見せるはずが…… まさかの珍事が428万再生「おもろい」「7回くらいリピートした」
  9. /nl/articles/2410/16/news017.jpg 目を付けていた“川のスポット”にワナを仕掛けたら…… 大量にとれた”生き物”に「俺も捕まえてみたいです!」「おめでとう!!!!」
  10. /nl/articles/2410/16/news020.jpg 「で、で、で…でっっっっっか!」 日本最大級のクモ「オオジョロウグモ」を手と比べてみると…… 大迫力のビッグサイズに「軍曹さんより大きいですね」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  2. 東京駅で“あるはずのない落とし物”が見つかり話題に 深まる謎に「未使用なのか」「すげぇ」「意味が分からない」
  3. 「太ももの筋肉が段違い」 “すさまじい完成度”の春麗のコスプレに「ご本人ですか?」と21万いいねの反響
  4. 「数やば」 ハードオフで目撃した“まさかの光景”が124万表示 「初めてみた」「いってみたい」
  5. 授業参観のたびに「かっこいい」と言われた父が10年後…… 「時間止まってる?」驚愕の姿が1100万再生 大バズリしたモデルに話を聞いた
  6. フリーアナウンサー、13歳娘が“超難関国家資格”に合格したことを報告 「ひー! すごすぎます」「おめでとうございます」
  7. 人気日本人TikToker、タイ滞在中に交通事故で意識不明の重体 「サトミを信じてる」家族と友人が詳細や現状を報告
  8. 「諦めてて草」 マクドナルドが「大切なお知らせ」投稿→“あまりの内容”に騒然…… そして予想外の展開に
  9. 元“顔ぽっちゃり”のグラドル、ダイエットは「1番の整形」! 衝撃の“別人級ビフォーアフター”で遂げた「ミラクル変身」
  10. 天皇皇后両陛下、“195センチのタレント”とのショットに注目 そのインパクトに「遠近感バグった」「デカすぎて……」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声