コミカライズを自ら提案、Kindleで配信。月に84万円売れました──ナカシマ723さんに聞く「だから今、やるしかないんです」(2/4 ページ)
――「パクツイBOTスレイヤー」が注目を集めて、さらに「壁ドン」イラストの無断転載で、まとめサイトを訴えて勝ってしまった(関連記事:イラスト無断転載、まとめサイトに30万円の賠償命じる判決 「VIPPER速報」「ガールズVIPまとめ」など訴えた注目裁判が決着)。その賠償金を元手にして、「勇者のクズ」の連載をはじめたそうですが、もともと「これで勝って、描きたいマンガを描こう」ということだったのでしょうか。
いや、アカウントを凍結することはできるだろうけれども。お金を取れると思ってやっていたわけではないです。ただ無断転載について調べていったら、Twitterのアカウントだけではなく、まとめサイトにも転載されていたんですね。
Twitterとは違って、まとめブログの場合は、イラストを掲載したページから広告収入を得ている。こうしたケースでは、商業利用ではないという言い訳はできないだろう。訴えたら勝てるんじゃないかって思って、やってみたという感じだったんです。
――では、まとめサイトの件がなくとも、「勇者のクズ」の連載は実現したいと考えていたということですか。
そうです。連載は、お金ができたらやろうとは考えていたことで、もともとは「こつこつ貯金するしかないだろう」と思っていました。
――自分のオリジナルストーリーを描いてみたい、とは考えていなかったのでしょうか?
やってみたい連載は考えてたんですけど、考えてたころに、「勇者のクズ」の原作に会ってしまって。「これは、今やらないとできないものだ」と感じたんですよ。
――出会ってしまいましたか。
はい、出会ってしまいました。
「勇者のクズ」とは、もともとロケット商会さんがネット上に公開していた小説(カクヨムの公開ページ)。『お金持ちのヤクザが「魔王」と化し、彼らを殺す商売が「勇者」として合法化した現代社会。ビールとピザと、友達とのカードゲームを愛するチンピラ勇者・ヤシロは、三人の勇者志願の女子高生と出会う』ところから始まる物語。ごく少ない人たちの間で「めちゃくちゃ面白い」と共有されていた段階から、ナカシマさんは読んでいた。
同作は2016年、KADOKAWAが主催する「第1回カクヨムWeb小説コンテスト」で「現代アクション部門」の大賞を受賞。カドカワBOOKSとして書籍化されることになる。
――ナカシマさんは「勇者のクズ」のどこに、ぐっと来たのでしょうか?
それは、マンガを読んでほしい。マンガでしか表現できないから、やってるところがあるので……。つまり、なんか言葉にするのは恥ずかしいのですけど……。
やっぱり主人公のヤシロがかっこいいんですよね。かわいいんですよ、こいつが。描いてみたいと思ったのは、やっぱり主人公のかっこよさですね。
広まって、賞に応募してという過程を見ていて、「今、ここで飛びつかなかったら、他の人がコミカライズするとか、そういうこともありうる」と思って。「今、ここで自分がやりたいっていわないと、できないだろう」っていうのは感じていたので。
それで、受賞した翌日ぐらいだったかな。その時点でロケット商会さんとはTwitterで相互フォローにはなっていたので、DMで「コミカライズをやりたい」と連絡したんです。
受賞が発表されたのが6月。ナカシマさんは7月の上旬には、もうネームを出版社に持ち込んでいたそうです。
小説の編集者と打ち合わせを行い、マンガ版も実現に向けて動く話が進んだ。しかし原作小説は1巻が出た後、続巻未定となり、コミカライズ企画もまた進行が止まってしまう。作家、編集者。個人がどれだけ続けたいと思ってもこうしたことがあるのは商業出版の宿命ではある。
しかしここで思い出していただきたいのは、ナカシマさんが、SNSを使ってフリーランスとして仕事を始めたり、作家に直接自分からコミカライズを提案したりしてきた人であること。自分の道は、自分でつくる人なのだ。
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