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» 2019年12月27日 11時00分 公開

「まず自分がスライムを倒せることを確認」 漫画家ナカシマ723さん これから個人で始めたい人へのアドバイス(1/4 ページ)

コミカライズ権を自ら取得し、単行本も自費出版し……でも「特別、私だけがお金を積んだからできたことっていうことは全然ない」という漫画家、ナカシマ723さん。これから個人で活動を始めたい人へのアドバイスも。

[堀田純司,ねとらぼ]

クリエイターとおかね 第2回 後編

 個人で作家と契約し、コミカライズ版の権利を獲得。インディーズマンガとして「勇者のクズ」を公開し、きちんとマネタイズを実現している漫画家、ナカシマ723さんのお金の事情インタビュー。後編です。

フォト 勇者のクズ」1巻より

――Kindleインディーズマンガの分配金を投入して、紙の単行本を刷った。最終的に紙でマネタイズすることが、目的だったのでしょうか。

 いや、そこは違います。紙の単行本はそもそも利益にならないと思ってました。計算して、もう、それはすぐにわかりました。

 4700部刷って、1冊単価が167円。税込みで合計78万4900円かかります。それが全部売れたら何百万円かのお金になるんですけど、インディーズマンガの単行本が4000部、5000部も売れる状況は、かなり甘い見通しだろうって思っていました。

 むしろ消化率が半分に満たなかった場合はいろんなコストを含めて、とんとんぐらい。逆に言えば紙の本は半分売れて、ようやくとんとんになる。

 今はAmazonや同人誌書店を合わせて紙の単行本は千数百冊、売れています。これは大体、見通し通りという感じです。今のところ紙だけであれば、印刷費、物流費を引いて、純利益は9035円ですから、もし紙だけでやっていたら、全然もうかってないです。

 紙だけだと原稿料が全く出ていないですね。とてもマンガを描くどころじゃないです。それでも成立しているのは「Kindleインディーズマンガ」で無料で読んでいただいているおかげなので、今後もぜひダウンロードしていただきたいです。

――小さな出版社だと、取次が扱ってくれないから、自分で書店を回って置いてもらったりしますよね。地方については営業代行の会社に任せたり。営業や告知活動次第では、マンガ好きの書店員さんが置いてくれたりするかもしれません。

 それは検討してみたんですけど、たとえば新宿の書店さんが、大きく平積みにしてくれたとしても、そこに行ける人は限られますよね。「店頭でも推されています」みたいな情報をSNSで出すことによって、「売れてる」という雰囲気を演出して、宣伝につなげることはできたかもしれないですけど。そこまでして一般書店に流通させる手段を考えるメリットがあるかっていうと、私にはなかったと思います。

 Webで連載しているマンガを、私のTwitterやニコニコ静画の宣伝を見てくれる人の外に広げることは、まあ、難しいでしょう。むしろ、「そこで、できるだけ確実に買ってもらえるようにものを作っていこう」と考えていました。

――よく言われることですが、データと違って物理実体を持ってしまう紙は「最大のリスク」ということですね。物流費もかかりますし。

 そうですね。ただやってみて「意外と紙の本を求めてる方も多いんだな」とは感じました。もともと無料の電子版を公開しているという事情もあるでしょうけど、Kindle Unlimitedを別にすれば、電子書籍版の単行本よりも、紙の本を買ってくれた人のほうが多いんですよ。

 たとえば高校生以下の人たちであればクレジットカードは持っていなかったりしますよね。Amazonギフト券を買えば購入できますけど、そこまでの手段にたどり着く人は少ない。

 それに若い人だとスマートフォンしか持っていなかったりする。そういう人がわざわざ電子版のデータを買って、スマートフォンの画面で読みたいかというとそうでもない。無料本だったら、むしろスマホでちょっと読むのに適していますけど。

 だから電子版のデータを、高校生以下に売っていくことは難しい。そうした人たちのために紙の本を用意できたことは、すごくよかったと思っています。ただ、紙の本自体が利益が見込めるものかというと、特に個人レベルでは、それは非常に厳しいと感じますね。

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