ビーカーを日用品として使うという発想 ビーカーを愛しすぎた人たちがまとめた同人誌が新たな扉を開きそう:司書みさきの同人誌レビューノート
ビーカーで飲むコーヒーはロマン。
この冬は記録的に暖かと言われますが、それでも温かい飲み物を手にすると、ほっと息をつくことができます。ゆっくり入れたお茶の匂い、鼻をくすぐるコーヒーの香り……それを口元に運ぶとき、どんな器に入っているでしょう? おうちのマグカップでしょうか。お店のおしゃれなカップでしょうか。今回の同人誌では、そんなとき、いや、生活のさまざまな場面でビーカーが大活躍です。
今回紹介する同人誌
『ビーカーの同人誌』vol.0 A5 34ページ 表紙・本文カラー
作者:こじか。、atsum311、ぴするしん
『ビーカーの同人誌』vol.1 A5 42ページ 表紙・本文カラー
作者:こじか。、atsum311、ぴするしん、kinonota
ビーカーを理科室から連れ出そう! コーヒータイムも遠征も、Let'sビー活
ガラスに目盛りが付いたシンプルな実験器具、ビーカー。ビーカーと出会ってお付き合いしてきた「ビーカー歴」が10年を超えるビーカー好きな方々が作られたこちらのご本、まずはビーカーの使い方としての例はコーヒーの飲み方から。ビーカーでコーヒーを飲むこのスタイル、創作物で見たことありつつも、これまでにやったことはなかった憧れのスタイル。持ち方や飲み口など気を付けるべきポイントが示してあります。これで安心してビーカーで飲み物を味わうことができますね。
こんな風に、こちらのご本ではビーカーを理科室や実験室で使うだけでなく、家庭や外出先でもビーカーとの活動を楽しむ、“ビー活”へのさまざまな視点がまとめられています。各メーカー比較、ビーカーを愛する方々のイチ押しビーカーや、ビーカーを連れてお散歩に出る「びぃ散歩」、そのお出かけ先での美しい姿を写真に収める撮影術など、新鮮なビーカーとのお付き合いが展開されています。
意外性と役目のベストマッチで生活に潤いを
そんな多彩な企画の中で、私の心にひと際ぐっときたのが「カビコロニー作り〜生産者の声をそえて〜」のページです。見開き2ページのそこには、ビーカーでのコーヒータイム後、うっかり飲み残しを放置してしまったばかりにカビが生えてしまった……その経過観察ページが設けられていました。ぽつんと小さな白い斑点がやがて星々がきらめく宇宙のように広がり、最終的にカビでフッカフカに埋め尽くされるまでがコンパクトにレポートされています。
おお……こういうこと、ビーカーじゃなくても起こってしまいますね……。でもこのレポートを拝見して気が付いたのは、ビーカーが家庭にあることで、発生してしまった悲劇を観察するのにうってつけに環境になることです。そうすればほら、見て見ぬふりをしたい放置した洗い物が、毎日チェックしたくなる観察対象に! ものを食べるときに入れ物なんてなんでもありなんです。けれど、そこにビーカーという「役目」のあるものを持ってくることで双方を生かしたベストマッチタイムが生まれたのを目撃しました。
ビーカーを食器として使用すること、外に持ち出すことそのものが、すでにちょっとした非日常を感じる、わくわくとしたアクションです。そこに本来の持ち味が生かされることで、ますます楽しさが倍増です。
使って、つながる。比べるから分かるビーカーへの思い
このご本はビーカー好きな方々が集って作られています。ビーカーが好きな点では一致しつつも、ガラスの厚みや、ガラスに印刷されたメモ用スペースについて、びぃ散歩に赴く先は山か海か? などなどに各人のこだわりがちらりちらりとのぞきます。今どきの同人誌は、一人で作ることも多いのですが、こうして同好の士が集い、おのおのの譲れない点を表現していくことで、1冊の同人誌のなかで比べる楽しさが生まれるのも良いですね!
いつか憧れたビーカーとのお付き合い、このご本をきっかけにビー活がはじまるかも?
サークル情報
サークル名:PlanariaDream
Twitter:@kzk_326
Webサイト:https://9cm.hateblo.jp
入手できる場所:BOOTH
メールアドレス:kozika11☆gmail.com(☆→@)
今週の余談
和田慎二先生のマンガ『スケバン刑事』で、ビーカーでラーメンを食べるシーンが確かあったような気がしていて……。読み返してみなきゃです。そして、ビーカーでコーヒーを飲むシーンも、いろんな作品で集めてみたくなります。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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