イギリスのEU離脱〜欧州の1つの時代の終わり
大陸欧州の安定の問題。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月31日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。イギリスの2月1日のEU離脱を受け、ヨーロッパの今後について解説した。
イギリスが日本時間2月1日にEU離脱
EUヨーロッパ連合加盟国は30日、イギリスのEU離脱協定の書面手続きによって正式に採択した。これでイギリスとEUの双方で、協定発効のための批准手続きが完了している。イギリスはEU本部があるブリュッセルが2月1日の午前0時を迎えた時点、日本時間にして2月1日午前8時で離脱をすることとなる。1952年にEUの前身組織、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体が発足して以来、一貫して拡大を続けていた組織から加盟国が減るのは初めてだ。
飯田)ブリュッセル時間で2月1日午前0時、イギリスでは時差があるため、31日午後11時に離脱ということになるようです。
宮家)朝日新聞には「色あせる欧州統合の夢」と書いてあります。たしかにそういう見方もあるとは思うのだけれども、私は少し別の見方をしてみようと思います。イギリスは大陸国家ではなく海洋国家ですから、そもそも欧州大陸とは違うのです。そこがまず違う。だからこそ、EUには遅れて入って来たのです。EUの基本は「大陸欧州をどのように安定させるか」なのですから。
フランスだけではドイツを抑えられない
宮家)歴史的に考えると、大陸欧州ではドイツがいい意味でも悪い意味でも、いちばん強い。ドイツが強くなり過ぎて、勝手なことをやると周りの国々は困る、これはもうフランスに頑張ってもらうしかない。フランスを巻き込んで、ついでにフランスだけでは頼りないからイギリスも巻き込んで、ドイツをけん制し、安定化させる。これに失敗した結果が第1次世界大戦です。そして次にドイツがまた強くなったから、今度はイギリスとフランスとアメリカも巻き込んで、やっと戦争が終わった。これが第二次世界大戦です。そうしたら今度は東西冷戦が始まった。ソ連が強くなってアメリカと対等になったので、仕方ない、ヨーロッパ諸国は団結するしかないとなった。こうしてEUを作り頑張ったのだけれど、いまやロシアが弱くなってしまった。そしてアメリカも頼りにならない。そうすると、また欧州各国国内のエゴが戻って来てしまった。イギリスはイギリスで、大陸とは違うのだから離れるとなった。こうなると結局、EUの本質というものはフランスとドイツの連携なのだけれども、それが揺らいでいくのではないか。歴史的に考えてみれば、フランスだけではドイツは抑えられないのです。
欧州の1つの時代の終わり
宮家)そのことがよく書いてあるのが、本日31日付日経新聞の11面です。EUの前大統領はポーランドの人ですが、やはりドイツがものすごく気になっている。イギリスはイギリスでEUのごちゃごちゃした規制はもういいから、自分で勝手に金融なっは自由にやるのだということが書いてあるのだけれど、その下には別の記事で「ドイツの製造業に停滞感」とも書いてあります。中国の経済が下向きになれば、当然ドイツの経済もおかしくなる。これが非常に嫌なのですよね。ドイツがどこまで頑張るか、ドイツが頑張って、それをフランスが支えて、初めてEUがあるわけでしょう。イギリスが離れて行くということは、単に欧州統合が色あせるということ以上に、欧州の1つの時代が終わった、というか一種のたそがれを非常に強く感じます。やはりこれからは、ドイツの動きがいちばん大きい要素になって行くでしょう。
飯田)ドイツ経済ですか?
宮家)ええ。メルケルさんがいるうちはいいです。10年〜20年先の話かもしれませんが、気になることが多いです。
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